2017年 ベトナムの労働事情

2017年9月8日 講演録

ベトナム労働総同盟(VGCL)
ダン ティ ヴァンラム氏(Ms. Dang Thi Van Lam)
国際部職員

グエン テェ ホン氏(Mr. Nguyen The Huong)
財務部職員 兼 プロジェクト管理委員会委員

グエン ヴァン 二氏(Mr. Nguyen Van Nhi)
情報通信部職員

 

【概要】

 国土はインドシナ半島の東部に位置し、南北に細長く1650㎞に及び、日本の約90%(約33万平方キロ)の広さがある。人口は9270万人(50.6%が女性)、労働力人口は4770万人となっている。(2016年データ)社会主義の国家体制だが、経済は順調な推移を示し、実質GDP成長率は6%台をキープし続け、物価も1%台と安定的である。失業率は2%台(2016年2.36%)にありこれも安定的である。ナショナルセンターは唯一ベトナム労働総同盟(VGCL)であり、全ての労働組合を束ねている。インフォーマル労働者の比率は高いものの(55.9%)、他国に比べ労働生産性は依然低い状態である。最低賃金は、労働者の生活に必要なレベルの70~80%でしかなく、所得格差は産業間のみならず、一企業内にも存在している。多くの企業における低賃金、不適切な労働環境、使用者の労働法令違反により、様々な労働争議が生じている。(2016年には過半数の工業地帯で302件のストライキが発生している)*( )内は報告者データによる。

1.新たな時代への対応めざし衣替えした労働関連法

 労働法典は雇用者の働く権利と利益を保護するとともに、使用者の権利と利益をも保護することを担っている。その法の下で、協調的な労使関係の確立ができる環境をもたらし、知識労働者であろうと肉体的労働者であろうと、その創造性や才能を花開かせることを助けてきた。しかし、グローバルな環境変化の流れは、労働環境にも大きな影響を及ぼしている。こうした背景を受け、新たな時代にふさわしい衣替えが必要との認識から、2013年5月1日に新たな労働法典が施行された。この新たな労働法典は、1980年代の古い視点から脱し、現代的な市場経済の現実に対応する先進的で近代的な内容となっている。
 具体的にみれば、労働法と労働組合法は、労働組合の交渉や組合設立に向けた能力向上を後押しし、労使間に社会的存在としての意義を認識させ、双方の良好で現実的な対話を促している。また、2016年7月1日には、労働安全衛生法を発効させた。これもまた、組合が組織化して力を養う機会を提供しているといえる。

2.増え続けるインフォーマル労働者問題

 ベトナムにおけるインフォーマル労働者は、景気の低迷に関わりなく総雇用に占める割合が一貫して増え続けるとみられる。この原因は、農業活動から移行してくる労働者を吸収する民間のフォーマルセクターの能力が不足しているからである。こうしたインフォーマル労働者の多くは、低い教育水準が故の低所得、不安定な労働条件、ほぼ資本がゼロで大部分が職業施設を持たない家内企業という脆弱性の中に甘んじねばならず、大きな問題として浮上している。

3.経済変化に伴って対応を迫らる労働組合

 グローバル経済が進展する中、ベトナムの経済も変容を迫られている。こうした局面に政府がとっている主要なイニシアチブの中で、ナショナルセンターを筆頭とする労働組合にもいくつかの課題が突き付けられている。その1つは、アセアン経済共同体の影響である。すなわち、アセアン地域における「モノ、サービス、投資、熟練労働者の自由な移動と資本のより自由な流れ」の影響である。いま1つは、「新世代」の自由貿易協定(FTA)の影響である。これらは間違いなく労使関係や労働組合に影響を及ぼすことになり、対応が迫られている。

4.ナショナルセンターの最重要課題は持続可能な組合づくり

 ナショナルセンター(VGCL)が直面する最重要課題は、自らをいかに力強い民主的かつ持続可能な組合に作り上げるかいうことである。もちろんこれまでも真に労働者の利益を守る存在となるために、組織率の強化や代表能力をつけることに尽力してきた。今日の変化する環境の中にあっても、その存在意義を際立たせるよう、これまでにも増して様々なことにチャレンジしていく。例えば、ボトムアップによる組織化の追求、非国営セクター及びFDI(外国企業による対内直接投資)セクターにおける団体協約を含む交渉への積極的な参加、一層の労使紛争の解決、組合員のための福祉政策の更なる増進などがそれである。