2015年 ベトナムの労働事情

2015年10月15日 講演録

ベトナム労働総同盟(VGCL)
ブイ ティ- ビック
組織局長
ダン ヴァン カイン
産業関係局労働安全衛生担当部長

 

II ベトナムの労働事情

1.ベトナムの労働組合組織の概要

 はじめに、ベトナムの人口や労働組合活動のベースとなる労働人口について触れておく。ベトナムの人口は9100万人(2014年データ)に及んでおり、そのうち労働(年齢)人口は4780万人となっている。
 労働者を束ねる組織として、ナショナルセンターであるベトナム労働総同盟(VGCL)は、1929年に設立されて以降、11回の大会を経て今日に至っている。なお、この大会は5年に1回行われることになっており、最近の大会は2013年7月に行われている。
 ベトナムの労働組合組織はこのナショナルセンターを頂点に、4つのレベルに分かれている。第1のレベル、つまり一番上位にあるのが、中央レベルのベトナム労働総同盟(VGCL)である。その下(第2レベル)には、各省、市におかれたベトナム労働組合。さらにその下(第3レベル)には分野別の労働組合があり、一番下(第4レベル)には、企業別の労働組合がある。ベトナムでは小さい企業から大きい企業に至るまで、労働組合組織がしっかりと存在している。
 組合員総数は874 万人、そのうち国営部門が415万人、非国営部門が460万人となっている。また、企業内労働組合数は全体で12万組合、そのうち国営部門が8万組合、非国営部門が4万組合となっている。

2.労働組合が抱える課題と解決目標

 ベトナムの労働組合が抱える課題について4点を取り上げたい。
 まずは、非国営企業における組合員の加入と組織化の促進についてである。2点目は、労働組合の力量向上をいかに図るかである。いいかえれば、労働組合の役員が労働者を代表して団体交渉に参加し、あるいは団体交渉を指導し、集団労働協約の実施に力を発揮できるのか、その能力向上をいかに図るのかである。3点目は、これからのベトナム政府は国際的に多くの協定を結ぶことになるが、例えば、自由貿易協定(FTA)などの経済協定の締結によって、労働市場にも大きな変化が起こると考えられる。こうした状況に対し、いかに労働者の雇用安定を図るのか、いかに賃金の確保を図るのか、あるいは職場や仕事環境をどのように企業側に守らせることができるのか、などである。4点目は、労働者のスキルや能力をどのように向上させていくかということである。
 以上のような課題に対して解決を目指し、VGCLは2013年から次のような目標を設定した。1つ目は、2018年までに1000万人まで組合員を増やすこと。2つ目は、30人以上の労働者を雇用している企業に対しては、その90%の企業に労働組合を設立すること。3つ目は、国営企業の100%、また非国営企業および外資系企業においても65%以上が集団労働協約の締結と、締結した協約がきちんと実施されるよう働きかけるということである。
 また、この目標達成のために、4つの大きなアクションプログラムを作った。1つ目は、2013年から2018年の組織拡大プログラム。2つ目は、労働組合幹部役員の能力の向上。3つ目は、集団労働協約の交渉能力、またその交渉の質の向上、締結の推進。4つ目は、労働者の能力、職業スキルの向上である。

I ベトナムにおける労使紛争の状況と解決に向けた対策

1.労使紛争に伴うストライキの発生状況(2009年~2014年)

 労使紛争に伴って発生したストライキの状況は、2009年6月から2014年11月に至るまで全国で3104件となっている。この中には、自発的ストライキと、労働組合指導のもとで行われたストライキが含まれている。
 次に、企業の種類別に分けてみると、外資系企業において発生したストライキの件数は2337件で、全体の74.9%を占め圧倒的な多さとなっている。民間企業では775件24.8%、国営企業で発生した件数はわずか8件0.26%を占めるに過ぎない状況である。
 このように、ストライキの発生が一番多い外資系企業だが、国別でみると台湾企業での発生が直近6年間では一番多いという結果となっており、全体に占めるウエイトは24.5%となっている。台湾とほぼ肩を並べるのが韓国企業であり24.4%、日本企業は6.6%、その他の外資系企業(台湾、韓国、日本を除く)が19.5%となっている。
 分野別でみると、繊維系企業で発生したストライキの件数が全体の36.5%を占め、皮革系(靴・履物)企業が18%、木材加工企業が10.6%、電子系企業が6.99%となっている。その他の業種の企業で発生した件数は28%となっている。
 ベトナムの労働紛争・争議の目的は、[1]法律で決められた権利についての紛争、[2]労働者が受けるべき利益・恩恵についての紛争、の2つに分かれている。
 この目的別でみると、[1]の法律で決められた権利を侵害されて発生した集団ストライキは959件あり、全体の30.4%を占めており、[2]の労働者が受けるべき利益、恩恵についての集団労働紛争は1272件、40.77%を占めている。また、[1]権利と[2]利益の混じった理由についての集団労働紛争は26.67%、ほかの原因に関係する争議は1.83%となっている。
 さらに、規模からみると、ストライキは概ね1日あるいは2日間だけの実施で、参加人数の規模は600~700人ぐらいというのが一般的である。もっとも特別な場合もあり、35日間ずっと続けたストライキや、参加する人数が1万8000人にも及んだストライキもあった。

2.ストライキ発生の特徴と原因

(1)ストライキ発生の特徴

 ストライキ発生の特徴は、大体1月から2月の間に起きていることである。具体的には、政府が最低賃金を調整する決定を出した時期や、ベトナムの旧暦のお正月の前後に行われるという傾向がある。

(2)ストライキ発生の原因

 ストライキあるいは労働争議がなぜ発生するのかについては、概ね6つの原因に寄ることがわかった。
 1つ目には、賃金関係、2つ目には、社会保障の不足、3つ目には、労働時間と残業時間、4つ目には、会社の規則が労働者にとって適切ではなかったり、結ばれた労働協約がきちんと実施されなかったりすること、5つ目には、会社側が無茶な解雇や、仕事を休ませたりすること、6つ目には、一般的な仕事場の環境、仕事に関係する条件などについて原因となっている。
 以上はいずれも直接的な原因であるが、人的あるいは組織的な原因もある。争議の発生は、争議に関わった人、あるいは組織にも責任があるという見方からのものである。使用者、労働者、国レベルの行政が、それぞれ果たすべき責任を果たしていない。そして、いまだに労働に関わる法制整備が不十分である。

(3)人・組織に起因する原因

[1] 使用者側による原因
 使用者側に関する原因について具体的に説明する。
 例えば、使用者側は、社会保険や社会保障の支払い金額を減らすために、実際にはもっと多くの給料を払っているにもかかわらず、わざと給料を最低賃金より少しだけ高く設定するなど、書類上でより低く設定するような操作がみられる。あるいは、使用者が、給料をきちんと払っていなかったり、給料の支払いが遅れたりすることも争議の原因となっている。また、使用者は、わざと給料のスケールあるいは給料の支払いシートをつくっていなかったり、昇給の規定を設定しなかったりすることもある。さらに、ある企業では、昇給あるいは給料シートをきちんとつくっているものの、昇給の段階を多めに-例えば20段階から40段階まで非常に多めに設定し、昇給できる機会をわざと延ばしてしまうこともある。
 使用者側は、研修期間を延ばすことによって、社会保険に払わなければならない金額を減らしたり、労働契約を作っていなかったり、あるいは労働者から、社会保険あるいは社会保障の保険料を納めてもらっているにもかかわらず、使用者側から保険管理機関にその分を出しておらず、労働者が仕事をやめたときに自分が受けるべき給付金額をもらうことができない問題が発生したこともある。
 さらに、多国籍企業の場合は、言語や文化の違いが壁となり、使用者と労働者の間でちょっとした問題の発生にもうまく対応できなかったり、使用者が、わざと労働者に対して侮辱するような行為を行ったりすることもある。例えば、使用者側が労働組合の意見を参考にせず、勝手に労働規則を決めてしまったことである。この労働規則は法律に違反しており、労働者の要望にも反している部分が多く、その会社の労働者はストライキを起こし、仕事を勝手に休んでしまったというケースもある。
 この他にも、勤務時間に関する原因として、法律の規定以上に残業させたり、過労状態にさせたりするケースもある。また、使用者が、妥当な理由のないまま一方的に解雇するという問題もみられる。さらに、仕事場の環境の安全性や衛生を確保しておらず、労働者を危険な目に遭わせてしまうケースもある。

[2]労働者側による原因
 労働者側による原因、背景についても説明しておく。
 現在ベトナムは、工業化・近代化が非常に急速に進み、各地に工業団地ができている。こうしたことから、農村部出身の多くの労働者が都会の工業団地で働くようになっている。しかし、こうした労働者は、教育レベルが低く、職業技術や仕事のマナーも身に着けておらず、法律の理解レベルも限定的であることから、近代化された都会の職場で働くスタイルに対応できず、会社が作った規則もきちんと守ることができないでいる。こうしたケースが争議の原因となっている。

[3]国家管理に帰する原因
 国家、国の管理機関側に帰する原因もある。国には違反があるかどうかを監督する機関があるが、そうした機関が自分の責任を果たして監督監査をしていないため、労働に関する違反が頻発するというケースである。

[4]労働組合の組織及び活動に関連する原因
 労働組合に関わる責任・原因もある。まず、労働組合の幹部役員や職員の能力あるいはスキルはまだ限られており、自分の役割を果たしていないのが現状である。また、労働組合は、労働者の気持ち、要望、考えていること等への理解がいまだ不十分であり、実際、企業の中で起きている労働法律違反、あるいは労働者の権利の侵害という状況を、しっかり把握することができていない。さらに、ほとんどの企業内労働組合の一番トップにある責任者は、労働組合の職務と同時に、その会社の会社員でもあり、使用者側から給料支給を受けている。それがために、平等に、あるいは公平に労働者側の権利を守ることができない面もみられる。加えて、労働組合の幹部役員に対する使用者側からの差別的行為、すなわち、わざと活動する条件を整えず、多くの制限を受けていることもある。

[5]法的規定の不十分さによる原因
 労使紛争に関わる法的規制を司る責任ある機関に関する原因について、説明したい。
 ベトナムの法律は、いまだ十分に労働者の権利を守ることができていない。具体的には、ストライキを起こすための手続について、その規定が適切な形になっていないことである。例えば、労働争議が起きた場合、あるいはストライキが発生した場合、政府側は労働調停評議会や労働仲裁評議会などで、労働者の権利が守られるよう解決のための機関・仕組みを構えてはいる。しかし、そうした機関・仕組みは、その役割や機能を十分発揮しておらず、存在効果が薄いものとなっている。また、ベトナムでは、最低賃金の規定は一応あるものの、最低生活レベルを確保する上で妥当なものとはいい難い。それは、現状の最低賃金水準では、生活費の70%しか賄うことができない実態にあるからである。

3.労使紛争の解決の現状

 ストライキ、あるいは労働紛争・争議に関してはさまざまな課題があるものの、現状での解決状況について触れておきたい。
 労働紛争あるいは労働争議のほとんどは、各省、市、県レベルでの労働組合が対応して解決に取り組んでいる。あるいは、企業別、工業団地別の労働組合もそのような争議に対して解決策を講じるために力を入れてきている。具体的には、このようなレベル別の労働組合が直接企業に出向き使用者側との話し合で解決策を講じるようにしている。一方、ビンズォン、ドンナイ、ホーチミン市のような、ストライキ、労働争議が多発しているようなところにおいては、労働組合だけでなく各関連機関と協力・連携の特別体制を構築し、管轄当局と域内の動向を追い、争議が発生した場合にはすぐに対応が図れるような取り組みをしている。
 こうした取り組みによる結果の現状は、労働者の要求の多くが使用者側に了承され、解決または実施受け入れ・合意がなされている。ただし一部には、解決できなかったり、あるいはすでに発生してしまったストライキで企業の売り上げ、企業の契約履行や信頼にマイナス影響を与えたり、という結果が残ったことも認識しておかなければならない。

4.労働争議の解決手段

 労働争議解決の手順には、個別労働紛争・争議解決と集団労働紛争・争議解決の2種類がある。そのうち、集団紛争の解決については、さらに労働者の権利に関する争議と、労働者の利益に関する争議に分かれている。
 まず、個別労働争議の解決手順について、何か争議が起きてしまった場合、裁判所に解決を求める前に、労働調停員を通じ調停手続きによる解決を図らなければならない。それによっても成功裏に解決できない場合、すなわち、調停不成立か、両当事者のどちらかが成立した調停書の合意事項を履行しないか、あるいは規定の調停期間を過ぎても労働調停員が調停を行わない場合、裁判に解決を求めるべく書類を申請することになる。
 次に、集団労働争議の解決手段について、個別紛争と同じく、まず労働調停委員を通じて解決を求め、これが不調に終わった場合には、次に示す2つの解決策を求めることになる。
 1つ目として、労働者の権利についての争議の場合には、まず、郡レベルでの人民委員会委員長に申請して解決を求める。しかし、それをもってしても解決できなければ、次は県レベルでの裁判所に解決を求めることになる。
 2つ目として、労働者の利益に関する場合には、基本的には労働仲裁評議会に解決を求める。労働仲裁評議会での解決が果たされなければ、裁判所での解決を求めることになる。

5.ベトナム労働総同盟(VGCL)の労働紛争への対応策

(1) 労働紛争に関わる法案策定への関与

 ベトナム政府も労働組合も、方針として、労使関係ができるだけ調和がとれた安定的な関係になることを目指している。双方(政府と労働組合)がこうした目標を持ちながら、労働に関する法律を充実し、また常に法律の実施を監督したりしている。
 こうした関係から、政策の公布に関しては、労働組合ならびに中央レベルでのVGCLが非常に大きな役割を果たしている。そうできるのは、ベトナムでは法律に則り、国あるいは国会が労働に関する法律を公布する前に、必ず労働組合、すなわち中央レベルでのVGCLの意見を参考にし、十分に考慮しなければならないことになっているからである。従って、労働に関する法律は、基本的に労働組合、つまり中央レベルでのVGCLの担当者が編集あるいは作成に関わることなる。具体的には、2012年のベトナムの労働法は、VGCLの担当者がドラフトを作成して、国家に提案し、採択したものである。加えて、直接労働に関係する法律だけではなく、社会保険、雇用に関する法律、あるいは労働者への教育機会に関する法律などについても、労働組合、労働総同盟のスタッフが関わっている。このように法案策定に関与することが、VGCLの労働紛争解決に向けた強力な対応策の1つとなっている。

(2) 労働に関する法律の遵守状況の監督・監査

 また、VGCLの各関連機関とともに連携しながら、労働に関する法律がきちんと実施されて、その規定が守られているのかの状況を監督し、監査している。何か違反が発見された場合には、常に管轄機関に報告し、処理されるよう促している。また、VGCLは国家給料委員会の委員でもあり、給料に関する法律の定めに直接関わっている。さらに、労働総同盟は企業別の労働組合及び下位レベルの労働組合に対し、常に次のような指導を行っている。それは、職場において常に使用者と労働者との対話を行うよう指導し、あるいは、労働者にはどんな権利があり、受けるべき恩恵とはどのようなものがあるのかの指導を行っている。このように常に労働者の気持ち、考え、要望を把握し、早目に対応策を出せるように、VGCLは企業別の労働組合に対し指導している。その結果として、今、労働組合があるほとんどの企業において、3カ月に1回、経営者側と労働者の間での対話が行われている。

(3) 法律に関する宣伝普及活動や教育・育成活動の重点実施

 VGCLは、各地に労働に関する相談コーナーを設け、労働者に対し適宜コンサルティングやアドバイスができるよう努めている。(この費用は100%無料)また、工業団地あるいは加工地区において労働者に関係する問題が多く発生していることから、VGCLは、工業団地における労働組合の役員数を増加し、また労働組合役員がその能力を常に磨けるよう必要な訓練の受講を指示するなど、教育機会を与えることを重点的に実施している。

2015年9月4日 講演録

ベトナム労働総同盟(VGCL)
ホアン・ティタイン
国際部長

 

1.ベトナムの労働情勢(全般)

 ベトナムの人口(2014年)は9600万人、農村が63.6%、都市部が36.4%となっている。農村人口が都市部人口に比べて約2倍であるため、地方から都市部への労働移動が多い。2015年7月の労働人口(15歳以上)は4780万人(男性53.6%、女性46.4%)。農林水産業が労働人口の約半分を占め、次いで工業・建設業が全体の約4分の1、残りをサービス業が占める。労働者の約8割が民間セクター(非国営)に従事し、その内、外資系企業の従事者(FDI)が33%を占める。また、インフォーマルセクターでの労働者の占める割合が高い(33.6%)。
 全国レベルの失業率は2.4%で、都市部の失業率(3.4%)は農村(2.0%)より高くなっている。定期的に継続した仕事がないなどの、不完全な失業状態の割合は2.5%となっている。
 2015年上半期のGDPは、2014年に比べ6.28%の成長見込みである。2015年6月の消費者物価指数は5月と比べ、0.35%高くなっている。
 2015年度の労働者の賃金は2014年度比で14.75%増加している。しかし、ベトナム労働総同盟(VGCL)の調査では、労働者の賃金は依然として低い水準にあり、月額300万ドン(約1万6200円)~400万ドン(約2万1600円)の低所得労働者が19.9%、400万ドン(約2万1600円)~500万ドン(約2万7000円)が32.4%、500万ドン(約2万7000円)以上が26.7%となっている。このような賃金は最低賃金の75%しか満たしていない。2016年度の最低賃金に関して、政府の賃金審議会の中で、これまで2回検討が行われたが、結論に至らず、9月3日開催された第3回目の会議で12.8%引き上げる成果を得た。

2.ベトナム労働総同盟(VGCL)について

 ベトナム労働総同盟(VGCL)は1929年に設立され、今年で86年目を迎える。大会は5年に1回の開催で、前回は2013年7月に開催された。組織は4つのレベルで構成されている。
 中央レベルがベトナム労働総同盟(VGCL)で、次に中央産別(20)と省・中央直轄都市の労働組合(63)があり、その次のレベルに企業組合上部労働組合組織と省産別、工業団地の労働組合組織があり、基盤となる組合は基礎の労働組合と呼ばれる企業組合レベルがある。例えば、1つの企業が、ある地方で操業すると、その企業の労働組合は産別と地方労働組合の2つから直接的な指導を受けることになる。
 現在の労働組合員数は約870万人で、組織率は約55.4%である。ベトナムでは国営員は90%以上が組合員と組織率は比較的高くなっている。組合員数は国営セクターと民間(非国営セクター)でほぼ同水準であるが、企業別労働組合の数を見ると、国営セクターが3分の2を占めている。

3.ベトナム労働総同盟(VGCL)の直面する課題と解決への取組み

 ベトナム労働総同盟(VGCL)は、2013年から2018年の5か年目標として、組合員1000万人達成を掲げている。連合の組織拡大目標(2020年)と同様であるが、目標年度が2018年と早期達成努力が必要。具体的には、従業員30人以上の企業の組織率を90%以上とし、国営企業で100%、民間(非国営企業)と外資系企業の65%において労働協約を締結するという数値目標を掲げている。現時点で、国営企業に関しては、既に100%労働協約締結は済んでいるが、非国営企業はまだ40%しか達成できていない。これを65%に引き上げるには、相当の努力が必要である。このため、労働組合幹部の素質向上、労働協約締結のための交渉能力の向上をめざした訓練プログラムを実施する。同時に、組合員、労働者の全体的な能力・技能の向上のための訓練プログラムを実施する。
 民間(非国営)セクターが、1000万人組織化達成の主たる対象となる。企業別労働組合の上部組織が、組織化の直接的任務を担う。各企業に組織化委員会、あるいは組織化推進室などを設け、そこから「労働組合結成の要件である5人の組合員の獲得」から始めて組織化に取り組んでいる。以前は、上級レベルが下級レベルに働きかけをして労働組合を結成させたが、現在では逆に現場の労働者の意見を吸い上げる形で、労働者の自発的な行動によって労働組合を結成できるよう道筋をつけている。
 労使関係に関しては、可能な限り安定的な労使関係を構築することによって企業の発展に貢献し、それにより労働者の雇用機会、生活水準向上が獲得できると考えている。そのために、具体的には労働者に関する政策決定の過程に労働組合が参画すること、政府の政策実施過程を常にフォローしていくこと、国家賃金評議会の構成メンバーとして常に労働者の声を反映させること、経営者との対話の機会(法律では3カ月に1回)を随時設けること、労働協約締結を拡大すること、労働者の諸問題を迅速に労働組合が把握し、雇用主側と交渉し、解決となるように働きかけることなどである。ストライキはできるだけ回避するようにし、そのような事態に至らないように早期解決を図る。それと生活困難な労働者の生活支援にも取り組んでいる。
 法律では3カ月に1回の労使対話と、1年に1回の全従業員との対話がある。その違いは、前者が緊急に解決すべき問題を話し合う場で、合意事項は文書化され法的拘束力を持つ。後者は、労働協約の締結や改正のための年1回の大会を目的とし、経営者側は経営状況を報告し、経営目標を全従業員に周知させ、労働者の表彰を行う機会でもある。
 こうした諸活動が、過去5年間のストライキ件数の減少に寄与したと考える。しかし、2015年6月現在で、民間部門で既に74件のストが生じた。懸念している。前年は年間で96件であり、今年は半年で既に74件発生した。この件数はストライキ発生件数であり、労働法に定められた当局への届出件数ではない。ベトナムでストライキが起きるのは、韓国、台湾系の企業が多い。日系企業でもストライキがないわけではないが、非常にわずかである。ストライキの原因は、どの国でも類似している。まずは経営者側の不当労働行為が多いこと、賃金不払い、劣悪な労働条件などが主要因で、その他の原因がある。例えば労働組合幹部の経験不足、処理能力の不足、または、労働者側の法律等の知識不足などがある。さらに、ベトナムの文化と外国企業側の文化の相違、溝が埋められていないことも原因と思われる。
 今後の大きな課題は、民間(非国営)企業における労働組合の設立、組織率の拡大、組合幹部や労働者の技能・能力の向上である。
 また、ベトナム政府は環太平洋経済連携協定(TPP)、ベトナムEU間の貿易協定(TA)など、さまざまな自由貿易協定(FTA)の締結を進めている。これらの協定が、ベトナム人労働者の賃金や労働環境に多大な影響を及ぼすと考えられる。しかし、FTAの交渉は政府が進めており、その内容はほとんど非公開であり、把握できていない。ただ、交渉過程でILO第87号条約(結社の自由及び団結権保護)、第98号条約(団結権及び団体交渉権)が批准されることになると、VGCL以外のナショナルセンターの結成も可能になる。VGCLとしては、仮に別のナショナルセンターが誕生したとして、その活動目的が、健全な労使関係の構築や労働者のための活動であり、国家の安全を脅かすものでない限り心配はしていない。他のナショナルセンターと健全な競争を行って、労働者の権利擁護の活動を邁進する。FTAが締結されれば、雇用、知的財産権、薬価など一般の労働者にさまざまな影響をもたらすだろうと予測している。

*1ドン=0.0089円(2015年11月10日現在)