2010年 ベトナムの労働事情

2010年1月29日 講演録

VGCL(ベトナム労働総同盟)
グェン ヴァン タム(Mr. Nguyen Van Tam)

VGCL(ベトナム労働総同盟)組織局訓練部長

 

 VGCLは1929年7月に設立されたベトナム唯一のナショナルセンターであり、ベトナムのすべての労働者の団結、教育、組織を取りまとめる組織である。労働者の合法的な権利を擁護する組織である。またILOの構成メンバーでもある。
 ベトナムの労働組合は、4つのレベルで構成されている。まずはナショナルセンターであるVGCL。その下に63都市にある組合と地方組織、中央直轄の20ある産業別組合。その下に1,151の区・県、産業別組合の地方組織などがあり、その下に10万1,895ある企業別組合となる。
 現在、ベトナムの全労働者数は950万人で、全人口の11%を占めている。950万人のうち670万人が組合員である。その内訳は、非現業労働者が約230万人、国営部門労働者が170万人、そして国営外企業労働者は270万人となっている。そして、組合役員は約40万人、その中の約8,000人が専従役員である。
 2008年11月3日から11月5日まで開催されたVGCL第10回大会で、2013年まで以下の目標を掲げた。
1)公務員部門において100%が参加して公務員労組大会を開くこと。
2)集団的な労働協約を単組レベルにおいて70%以上締結することに向けて努力する。できれば産別の分野でも進めていくべく努力すること。
3)労働者のうち70%が職業訓練を受けるようにすること。
4)65%以上の社会保険の加入に努めること。
5)2013年までに組織率を高め、150万人の組織化を目指すこと。その中で70%の企業においては労働組合の結成を果たすこと。
6)100%の組合役員が組合の専門知識に関する教育を受けること。
7)中央執行委員会レベルで、女性役員の比率30%以上を目指すこと。単組レベルで女性労働者が50%以上を占める場合、委員長は女性を選出すること。
8)現業部門では80%、民間部門では40%が、堅固な労働組合を作ること。そのうちの10%はより堅固な労働組合を達成すること。
 ベトナムにおいても世界的な金融危機の影響があり、GFP成長率の目標の修正を余儀なくされた。2009年度は、これ以上の経済減退を抑制して、一定の成長率を維持することに努め、その結果、GDPは5.53%、工業建設部門においては5.52%増の目標を達成することができた。そうした努力の結果、7万6,000社もの企業が新たに設立されたたことにより、生産の回復基調が見られ、150万人分の雇用の場を確保することができた。工業団地や輸出加工区等における労働者向けの住宅建設プロジェクトが2009年度は264のプロジェクトが行われた。
 労働者の2009年度の平均賃金は、国営企業労働者は平均月250万ドン。民間(私営企業)では平均賃金が月150万ドン(1ドン=0.0048円:2010年3月1日現在のレート)、外資では170万ドンである。その中でも、いわゆる給与賃金が低いとされている革製品部門では138万ドン、縫製では143万ドンである。2008年度に比べて賃金水準はあまり変わっていない。
2009年度の労働争議発生件数は306件、前年度比で400件減となった。争議が発生すると、組合はすぐに迅速な対応を行い、雇用側あるいは関係機関と提携してこれを終息させている。
 この第10回大会で決議されたさまざまな内容について、われわれは積極的に実施し、多くの活動を展開してきた結果、一定の成果を収めることができた。それによって経済、社会の発展に寄与し、労働者及び労働組合の生活基盤、あるいは活動基盤をより強固にすることができたと自負している。

VGCL(ベトナム労働総同盟)
ヴ マイ ティエム(MR.VU MANH TIEM)

VGCL(ベトナム労働総同盟)情報宣伝部長

 

 ベトナムは、若年労働者層が豊富で、18歳から30歳までの労働人口に占める割合は約60%である。しかしながら、若年労働者層の大部分が単純労働者あるいは未熟練労働者であり、200万人にもおよぶ。現在の課題は、労働者の教育や技能水準が低く、法的理解度合も高くないことがあげられる。現在、民間企業の中で労働組合が組織されている割合は40%で、今後これをもっと高めていく必要がある。雇用側も労働者に対する十分な制度、政策の実現に対する認知度が不十分である。現在、ベトナムは工業化、近代化に向かって進んでいるが、その路線に対応していくために、VGCLとして労働組合の役員や労働者に対して、自らが教育と技能水準、あるいは法的理解度を高めるように努力をすることを奨励している。その内容を具体化するために、2009年から2012年までの間に、国の予算で様々なプロジェクトを展開する計画が進行中である。そのためには、まずオルガナイザーを組織し、教育されたオルガナイザーが各地方、あるいは傘下の組織で、新たな組合役員の養成に努めるものである。
 また、VGCLとしての大きな役割は、国あるいは企業が進めている社会保険、雇用保険、賃金・賞与の諸制度の実施状況をしっかりチェックし、フォローすることである。現在、中心的に行っていることの一つとして、年内に労働法及び労働組合法を改正させるために、積極的にかかわり国会に対して色々な発言を行ってきている。
 ベトナム憲法第10条に”VGCLは、ベトナムの合法的な権利を擁護する唯一の組織である“とうたわれている。政府と労働組合は相互の機能と活動を互いに尊重する関係のもとで提携関係にある。また、労働組合は人事・財務や専門業務において、政府に対して独立的な活動を行っている。
 現在、ベトナムには縫製や革靴品、建設、石油開発などさまざまな分野で多国籍企業が進出している。ベトナムの特徴としては、労働力が安いということがある。しかし、労使関係の中で、長時間労働や社会保険の使用者側の負担保険料を未払いなど適切ではないことも多くある。2009年の社会保険の滞納額は、4兆3,000億ドン(1ドン=0.0048円:2010年3月1日現在レート)であった。
 最近では外資系企業での争議が他の分野に比べて大変複雑になっている。2009年の外資系企業でのリストラ件数は328件にのぼっている。その結果、多くの労働者が職を失い、故郷に戻らざるを得ない状況が起きている。

VGCL(ベトナム労働総同盟)
フェン タン スアン(Mr.Huynh Thanh Xuan)

VGCL(ベトナム労働総同盟)ビンデン省労働同盟会長

 

 ビンディン省はベトナム中部の海岸沿いにあり、人口は150万人、労働者数は21万人、企業数は2,800社、単組の数は約1,400組合、そして組合員が8万人である。多くの企業は労働協約を締結することにより、労使関係はかなり良い状態にある。ビンディン省での労働者の給料は、特段高いというわけではないが、一般的には生活は安定している。
 ビンディン省において直面している課題は、1)組合を設立する条件を満たしている企業での組織率の低さ。2)企業別レベルでの活動をするための条件、施設、あるいは活動経費の不十分さ。などがあげられる。
 ベトナムで労働組合を設立する用件は、3つの条件が必要となっている。1)法人であること。2)組合員が5名以上いること。3)企業が所属する産業の労働組合が許可すること。この条件を満たしている約35%の企業でしか労働組合が設立されていない。特に民間企業労働者の組織率は低く約40%である。現在これを70%にするべく努力している。
 組織率の低い理由としては、1)使用者側が組合を設立することによって、[1]社会保険を折半で払わなければならない。[2]労働者に対する国が定めるさまざまな政策を守らなければならない。などの義務が課されるため。2)組合を設立すると労働者に払った給与総額の2%(給与基金)を使用者側が支払わなければならないこと。3)労働組合を設立しなければならないという法律を守らなかった場合の罰則・制裁の強制力が強くない。4)組合の宣伝活動が許可されていないため、労働者そして使用者側は、労働組合の重要性、労働組合を設立するそれぞれの役割、責任についての理解が低い。などの理由があげられる。
 こういった課題に対して、1)企業レベルの組合の活動効果を高めるため、組合リーダーに対しての研修を強化すること。2)労働者の権利を守るために組合を設立すること。3)組合を設立する条件を満たしているにもかかわらず組合を設立していない企業への働きかけをすること。4)活動予算を確保するために、財政の支援、あるいは関係組織の支援、資金の提供、スポンサーを募ること。5)省として投資を誘致するための政策を行うこと。などを考えている。

VGCL(ベトナム労働総同盟)
イー クット ニエ(Mr. Y Khut Nie)

VGCL(ベトナム労働総同盟)ダクラック省労働同盟副会長

 

 ダクラック省は、ベトナムのタイグエン中部にある高原地帯で44民族から成る人口は176万人である。労働人口は12万1,000人、このうち8万9,000人が組合員である。約75%が農業労働者である。現在、製造業とサービス業などの民間企業が現在著しく発展している。
 われわれが組合活動の中で直面している課題は、1)ダクラック省の面積が広く労働者が広い地域に分布しているため、まとめて情報宣伝を行うことや、困った時にすぐに手助けをするなどが容易ではない。2)労働者のための住む場所は、まだ多くの企業の中では適切に目が配られていない状況にあること。3)非正規労働者が多いこと。4)ダクラック省にある約4,000社の企業の多くが中小企業(従業員が6人~40人程度が中心)であり、このような組織の労働者への組織化の困難。などがあげられる。中小企業の組織率は約25%である。
 このような課題の対策として、1)組織率を上げるための組織拡大キャンペーンの実施。2)企業レベルの組合に対しての財源の強化。4)企業組合のリーダーへの教育等があげられる。
 ダクラック省における経済の発展、生産の安定、そして治安の安定という共通の目標のもとで組合と地方政権は平等、協調の関係にある。
 現在、ダクラック省においては100%外資の外国企業は1社しかない。その企業名はコーヒー輸出会社ダックマンで、労働者数が220人である。ここでの労使関係は会社設立以来大変良くて、労働者の仕事や収入も安定している。組合活動も良好である。

VGCL(ベトナム労働総同盟)
タ ティ トゥ フエン(Ms. Ta Thi Thu Huyen)

VGCL(ベトナム労働総同盟)ラオカイ省労働同盟会長

 

 ラオカイ省はベトナム西北に位置する山岳地方の省で、ベトナムの中でも貧困な6省のうちの1つである。現在、政府の支援を受けて経済、社会の発展を遂げており、中国と国境を接していることもあり、雲南省との協力関係も強めている。
 しかし、労働者の生活は未だ貧しい状況にあり、労働者の労働条件も依然として改善されていない。特に、民間企業においては経営者が労働法に違反することがある。経営側から社会保険料を払ってもらっている労働者の数は約60%に過ぎない。また、憲法や法律の中で定められたにもかかわらず、ラオカイ省での組織率は依然として低い状況にある。おそらく、組織の中で組合がある民間企業は約4割という数字は、ラオカイ省だけではなく、ほかの地方とも共通する数字ではないかと思う。労働者の能力、また、組合リーダーの能力も求められるレベルまでは達していない状況である。労働者の約40%の人が、まだ何らかの研修を受けておらず企業レベルで組合活動を行うための条件もまだまだ厳しい。
 先般行われたVGCL第10回大会の議決を受け、われわれもラオカイ省での課題を解決するためのいくつかの対策を考えている。
 1)労働者の意識を高めるための教育、宣伝活動を強化すること。この教育は法律の教育や、さまざまな業界の専門家との協力を得ながら、仕事に使える知識を強化すること。2)制度や法律、政策の施行状況のチェック、フォローの強化。行政管理にも参画し、団体協約が結べるように労働者を支援する。3)組合の社会的な活動を強化すること。4)労働そして生産の中における競争。5)民間企業の組織率を高めること。6)活動内容、活動の方法を改善して、その活動を企業ベースの組合に向けていくこと。7)労働者を支援するために融資を行う。
 組合リーダーに対しての教育を行うことによって、自分たちの役割を果たせるようにしていきたいと考えている。
 労働組合として地方の政権と協力・協調を行っていくための合意を交わすことができた。地方政権とだけではなく、地方にある関係部局とも合意の文書を交わしている。