2002年 ベトナムの労働事情

2002年6月5日 講演録

ベトナム労働総同盟(VGCL)
ゴタムソン

ベトナム労働総同盟組織担当

 

ベトナムの歴史と状況

 ベトナムはフランスの植民地になる前は、約1,000年に亘って北方の民族による支配下に置かれていました。その後、約100年におよぶフランスの植民地下に置かれてきたわけですが、労働組合の発展の過程もそのような歴史の流れに追随してきたわけです。
 労働組合運動は、ある地方炭鉱から始まりました。その炭鉱ではフランス人植民地主義者の社長による激しい搾取が行われました。
そのため、炭鉱の労働者は闘争のための組織をつくって、当初は賃上げ、労働時間の短縮、労働環境の改善を求める要求から、労働運動を始めました。
 やがて様々な労働組合が力を結集して、フランス人雇用主に対して改善要求を出すようになりました。その後、現在の労働総同盟のもととなる組織が1929年7月28日に設立されました。日本の戦時中の労働運動がそうであったように、私どもも銃を持ち、フランス人植民地主義者のさまざまな弾圧に対して、みずからの自由を守らねばなりませんでした。
この時期、実に多くの労働組合指導者を私たちは失ってしまいました。VGCLの最初の会長はノン・ドック・カインです。現在、VGCLは政府と協力し、組織を強化して国家建設のために寄与しています。

VGCLの状況

 VGCLは4つの縦軸に分かれています。まず、中央レベルでは17人の委員で構成される執行委員会があります。そして、労働に関するさまざまな政策を政府に要求するために、中央執行委員会の周辺には幾つかの、これを補佐する組織が設置されています。これは政府でいう専門官に相当する地位です。
 そして、次のレベルは2つに分かれており、1つは産別、そしてもう1つは地方レベルです。2番目のレベルはまた二つに分かれており、産別のほうは20、地方レベルは61の構成になっています。当然、地方レベルの61は各省、中央直轄都市に配置されています。
 そして3つ目のレベルに日本語で言う郡レベルの労働組合があります。これはいわゆる産別と地方レベル、2つ目のレベルと4つ目のレベルの中間に位置するレベルです。連合の組織に相似しているところが多々あると思います。
 4つ目のレベルは各企業、工業のレベルです。現在、組合員数は500万人です。以前のベトナムは、経済セクターというのは1つしかありませんでした。国営です。そして、現在の日本と同様に会社に入ればイコール組合員という性質は同じでした。そういう分けで国家公務員であればイコール組合員になったわけですが、現在のベトナムのように、他のセクターがたくさん出てくると、そのような形は維持できません。各セクターに所属する労働者は自発的に労働組合に加盟したいという申請書を書いて、それが労働組合の一定の教育を受け、その資格が十分にあると認められた場合についてのみ、組合員になることを許されるというような形態に変わりました。

VGCLの活動方針

 VGCLには3つの任務があります。1つ目の任務は、その基本精神として、組合員であるか否かを問わず、労働者である限り、労働組合として労働者の権利を擁護する任務です。憲法によって労働者を代表する唯一の組織は労働組合であると定められているので、いかなる団体も労働組合以外の団体は労働者を代表してはならないとなっています。したがって、雇用主との間でいろいろな紛争が生じた場合、組合員でなくとも、その労働者は労働組合に対して救済を求めることができます。
 2つ目の原則は管理です。労働組合は雇用主と企業の生産計画、企業の発展、その他もろもろの企業側の政策に参画することができるということです。そして、政府に対してはVGCLは政府との間に毎年首相、あるいは常任の副首相との協議の場を定期的に設けてあり、その協議の場で前年1年間の労働に関するさまざまな状況について意見を交換し、もし決められたことが達成されなかった場合でも総点検をした後、その次の政策に反映させるという場を設けています。
 3つ目の任務は、教育訓練です。これも非常に重要です。労働組合は労働者に対してみずからが所属する企業の義務と権利を理解させるために、法律の面でのさまざまな教育を行う責任があります。
 このような3つの任務に基づいて、これまでVGCLはさまざまな働きかけをした結果、失業問題ですとか、制度的な改善ですとか、女性労働者の問題、その他もろもろの問題についてさまざまな成果を上げることができました。女性労働者については次のような成果がありました。例えば女性に妊娠の兆候があったと認められた場合、出産の1カ月前から休業を認め、それにプラス3カ月間の産後休暇を延長できます。その間の給料は100%保障されますが、その給料の源泉は社会保険基金の中から支払われます。もし授乳が必要な場合については、規定の就業時間の1時間前に早退が認められています。乳児が病気にかかった場合には、休業が認められ、休んだ分についての賃金は差し引かれません。
 ここまでは国営セクターにおける規定です。これ以外のセクターについては労働組合は、国営セクター並みの制度に準ずるようにという働きかけをしています。年金制度は、個々の労働者は給与の5%を社会保険として毎月支払わなければなりませんが、雇用主は15%を負担し、個々の労働者の定年後の生活を保障しています。また、労災についても労災基金法の適用があり、これは事業主のみの支払いになります。現在、VGCLはさまざまな国の事情を研究していますが、その中に日本も含まれています。来る2003年はVGCLの大会の年です。この大会に際して、失業基金の創設を大会の決議に盛り込むように、準備をしています。
 次にVGCLの財政についてです。さまざまな出所があります。1つ目は政府が各企業に対して、企業がみずからの労働者に支払う給料全体の2%を拠出するようにというのがまず1つです。その次に組合員が納入する組合費であります。