2014年 タイの労働事情

2014年10月15日 講演録

タイ全国民間産業労働者会議(NCPE)
タワチャイ・ポンチャルーン

副会長

タイ労働組合会議(TTUC)
プラチュアップ・ピクン

事務局長

タイ労働会議(LCT)
アヌチット・ゲオン

事務局長

 

1.労働者保護法違反から起きる労使紛争

 まず、海外の投資家がタイに投資する際の問題としては、投資家がタイの慣習や労働法を理解していないために生じることが多い。例えば、タイのコンサルタントが経費を削減するために法律に違反したとしても、タイの事情を知らないために問題を見過ごし、後で問題となることが多い。
 最高裁の判決では、「直接雇用契約を結んだ労働者と派遣労働者が同一の仕事であれば、賃金、福利厚生を差別してはならない」とされたが、実際にはそうなっていないため、紛争となる例が非常に多い。
 2つ目は、労働保護福祉局の安全衛生に関する告示で、労働安全衛生環境法として規定されているものを、そのとおりに実施していない企業が多く、労災事故の発生などの問題が生じている。
 3つ目は実際の労使紛争で現在、訴訟中となっている事件である。日系企業に勤めるある従業員(労働組合の委員長)は、フォークリフトの事故や爆発事故があったことから、職場環境の問題について労働福祉局に点検を要請したところ、突然、会社はその従業員を解雇した。点検の要請をした後、労働福祉保護局が調査に訪れたが、解雇による争議の最中であることから、現場を見ることが不都合であるとして調査は行なわれなかった。会社は何の行動も取らず、当局の係官も厳格な調査をすることもなく現場を去った。調査の要請をしただけで、会社が解雇したことは法律上問題があり、労働裁判所に提訴して闘っている。調査を要請した従業員は、解雇されたため、収入も閉ざされ生活にも困窮し、家族を養うため借金が膨らんでいる。
 しかし、このような悪い事例ばかりではなく、好事例もある。ある会社で、労使交渉の結果、生産性の向上と賃金のベースアップ、一時金(ボーナス)の支給、労働省が主催する「優秀事業所」コンテストへの出場を検討することが合意された。優秀事業所のコンテストでは、労使関係が良好な状態に保たれている企業が表彰される。このような企業が多くなれば、労使紛争の防止にもつながることになると同時に、会社の雰囲気、働き方も非常に良いものにつながるといえる。

2.交渉中に解雇されたことによる労使紛争

 ナショナルセンターであるタイ労働組合会議(TTUC)には53組合が所属し、組合員数は2万5000人となっている。TTUCは、所属する組合の紛争に関して、資金や必要な知識を与え組合の闘争を支えている。こうした活動の具体例として、日系企業の労使紛争について報告する。この会社は1996年に登記された。
 この会社で労働組合を設立したのは、勤続11年になる男性である。組合は、2010年5月、賃金、諸手当の増額を求め要求書を提出した。これが争議の始まりであった。交渉の途中、交渉がまだ不十分であり終わっていなかったが、労働組合側の代表7人のうち、5人が解雇された。残りの2人については、そのまま仕事を継続させた。タイの労働法では、会社都合で解雇する場合は、その労働者の勤続年数に応じた退職金を支払わなければならないことになっている。同時に、この要求書提出期間中(交渉期間)は、組合員を解雇できないことになっている。交渉が終結したかどうかが問題となるが、終結していなければ解雇はできない。以上のことから、労働組合は、サムットプラカーン県の労働裁判所(政労使で構成、個別労働紛争の解決にあたる)に、不当な解雇であり、職場への復帰を求める訴えを行なった。
 裁判の結果、4人の組合役員は退職金を受け取って会社を退職した。しかし、1人は現在も闘っている。会社は、賃金を毎月支払うが、会社の中には入れず、仕事はできないようにした。ただし、1日に2回、タイムカードを押しに会社に出勤しなければならない。それが今は、1日3回、タイムカードを押すように命令されている。賃金も全額ではなく、手当は払われていない。手当には、交通費、食費、シフト勤務手当、皆勤手当があるが、これらの手当はすべて払われていない。
 このケースでは、賃金は払われているが、精神状態はどのようなものか考えていただきたい。タイの法律では、こういうケースの場合は、ほかの会社で少しの時間でも仕事をすることはできない。

3.会社は労働大臣命令にも従わず、労使紛争続く

 タイには現在、14のナショナルセンターがあり、この数は多いといえるが、ナショナルセンター同士、共通する目的、あるいは共通する活動を進めているのも事実である。
 例えば、共通の課題、統一した目的としてILOの第87条号条約及び第98条号条約の批准を求め運動を推進している。
 次にタイの最低賃金が300バーツ(約1077円)に一挙に改定された影響について説明する。最低賃金の引き上げで人件費が高くなったことにより、製造原価が上昇した。しかし、原価は高くなっても、それを商品価格に転嫁することができないのも事実で、会社によっては、利益が減少し、損失を出している会社もある。この対策として、多くの会社は、従業員の数を減らす、あるいは手当、あるいは福利厚生等を削減している。
 また、タイに不法入国してきた労働者を雇用したり、事業所を閉鎖し事業から撤退したりするところもあった。さらに、会社によっては、派遣労働者を使うことによって解決を図ろうとしているところもある。
 次に、タイで起きている実際の労使紛争の例を紹介する。この会社は、冷凍食品を作っている企業(タイで日本人が起業)で、従業員数は800人ほどである。
 2012年、この会社の労働者は労働組合を設立し、2013年には賃金の引き上げ、有給休暇の日数増を求めて交渉を開始した。この要求に関し、労使は2013年の12月に5回の交渉を行なったものの、合意には至らなかった。交渉が難航した理由のひとつは、会社側のトップが交渉の席に着かなかったことにある。会社は、2013年12月29日に突然、労働組合員のみを対象に作業所を閉鎖し、職場に入れないようにした。12月29日、組合員は全員、失業者となったのである。
 こうした会社の仕打ちに対して、労働側は、会社の前での集会やデモを行なうとともに、県知事宛てに文書で支援を要請した。その後、労働側の集会は、労働省前でも行なうとともに労働保護福祉局長にも要請を行った。その結果、中央の労働省による調停が開始され、われわれLCTは、5000人が結集してこの争議を支援した。
 こうした運動の結果、チャルーム労働大臣は、関係者を集め解決のために努力をしてくれた。2014年3月5日、労働関係法第35条に基づき、その権限を行使すると宣言した。その内容はすべての従業員を元通り雇用し、仕事をさせるというもので、賃金についても以前と同様に支払うよう命じたものである。タイはこの時、非常事態宣言下にあり、5人以上の集会やデモは禁止されていた。こうした中で、労働大臣としての権限を全面的に使い会社に命令を出した。その日、私たち組合員は非常に幸せな1日であった。
 しかし、会社はその命令に従うような、従わないようなあいまいな態度をとった。従業員を会社に復帰させるのではなく、単に会社に出勤すればいいとしたうえで、さらに、会社はひどい仕打ちを行なった。従業員を2つに分け、一部は仕事に復帰させ、それ以外の労働組合員49人に対しては別の措置をとり、一部の人は、会社の中に入ることも許されなかった。賃金については、全員に支給されたが、そのほかの諸手当、福利厚生については一切支払われていない。会社側は、従業員の不足を補うために外国人(不法就労者を含む)の雇い入れも行なった。
 この会社の労使関係、あるいは労働者に対する仕打ちは非常にひどいものである。まず、従業員の人間性、尊厳を認めていない。同時に、組合リーダーに対する敬意、尊敬がひとつもない。この事態は今も続いている。タイの法律を遵守しないことに加え、法律自体も不十分であることから、タイの労使関係は非常に難しい関係、あるいは悪いものになっている。
 今回、私が日本へ来て、このセミナーのスピーチによって、少しでも良い方向に、少しでもお互いが理解できる方向になり、解決が図れることを望んでいる。
 
*1バーツ=3.59円(2014年11月25日現在)

2014年5月23日 講演録

Ⅰ. 労働事情(全般)

リンニッチャ・イッチチャロエンヌン
ITUCタイ協議会(ITUC-TC)
タイ労働組合会議(TTUC)書記

 

1.タイの社会・労働概況

 タイは、総人口6700万人の内、富裕層200万人(3%)、上位中間層900万人(14%)、下位中間層3000万人(47%)、低所得層が2300万人(36%)となっている。貧困率は1990年には40%を占めていたが、2010年には7.7%にまで下がった。
 産業別の就業者は、第一次産業が人口割合で40.7%、GDP割合で12%、第二次産業が13.2%(人口)、41%(GDP)、第三次産業が46.1%(人口)、46%(GDP)となっている。就業形態では、公務員、国営企業・民間企業従業員などのフォーマル労働者が1500万人(38%)、農業従事者、家事労働者(家内労働者も含まれていると思われる)、タクシーやバイクタクシー運転手、日雇い労働者などのインフォーマルセクター労働者が2400万人(62%)となっている。
 労働力人口は3978万人、就業者人口は3949万人。つまり、失業者はわずか29万人で、失業率は0.7%と非常に低い。

2.経済状況

 実質経済成長率(GDP)の推移を見ると、1998年の通貨危機、リーマンショックの翌年の2009年、大洪水がおきた2011年に大きく落ち込んでいる。しかし、いずれも翌年にはV字回復しているのが大きな特色である。2013年のインフレ率は2.3%であった。

3.社会保障制度

 社会保障制度は、大きく分けて、民間企業従業員(約960万人)を対象とした社会保険33条(保障内容:傷病、出産、傷害、死亡、児童手当、年金、失業の7項目)、インフォーマルセクター労働者や無職の人を対象とした社会保険40条(保障内容:傷病〔入院のみ〕、傷害、死亡〔+老齢一時金〕、既加入者140万人で現在加入推進中)、タイ国IDカード保持者全員(約4700万人)が対象の国民皆保険(保健所、国立病院など一律30バーツ〔約95円〕で受診可能)、さらに公務員とその配偶者、両親、子ども(約400万人)が対象の公務員医療保障制度がある。

4.最低賃金

 2012年4月1日に地域別最低賃金が一律40%引き上げられた。この時点でバンコク、近郊7県は300バーツ(約954円)となり、翌年2013年1月1日からは全国一律で最低賃金が1日300バーツ(約954円)となった。

5.労働組合

 タイではナショナルセンターと呼ばれる組織が13ある。組合数は1383(民間1338組合、国営45組合)、組合員数は約56万8000人(民間38万8000人、国営18万人)で、組織率は約3.58%となる。
 タイ労働運動の現在の課題としては、①ILO第87号(結社の自由及び団結権の保護に関する条約)・第98号条約(団結権及び団体交渉権条約)が未批准であること②組織率が低いこと③非正規雇用・不安定雇用の増大④建設的な労使関係を構築する必要性――などがあげられる。

Ⅱ.タイの政治状況

パッタマ・ワンソム
ITUCタイ協議会(ITUC-TC)
タイ労働組合会議(TTUC)書記

 

 2001年にタクシン政権が誕生したが、2006年4月に議会が解散となった。しかし、民主党がこの選挙をボイコットし、総選挙自体が違憲で無効であるとの判決が出た。2006年9月、軍によるクーデターが発生した。このクーデターでは死亡者はなく、無血クーデターと呼ばれた。2007年12月に総選挙が実施され、タクシン元首相派のサマック政権が発足し、軍事政権は2008年2月まで続き、その後民政移管された。
 2008年11月に反タクシン派(黄色)である民主市民連合(PAD)によりスワンナプーム国際空港が占拠され、空港が完全に使えない事態となった。空港占拠の1ヵ月後の12月に、また違憲判決が出され、その結果、当時のソムチャイ政権が倒された。その後、反タクシン派のアビシット政権が発足する。
 2010年4月に入ると、タクシン派(赤色)である反独裁民主戦線(UDD)グループによりバンコク市街地の至るところで占拠されるようになった。5月には軍によりUDDが強制排除され、90人以上の死傷者が出た。
 2011年7月の総選挙の結果、インラック政権(タクシン元首相の妹)が誕生した。2012年から憲法改正、国民和解、不敬罪を規定した刑法の改正をめぐる議論が起こり、2013年8月から『恩赦法』の審議が始まるとデモが激しくなった。11月に『恩赦法』が下院を通過し、上院で否決されたのをきっかけに、反政府デモがタイ全土に拡大した。11月25日には『治安維持法』がバンコク全域および周辺県に拡大して発令された。そして、今年に入って、バンコク封鎖(バンコクシャットダウン)が開始され、1月21日には非常事態宣言が発動された。2月2日に総選挙が実施されたが、375小選挙区のうち69選挙区で選挙が実施できなかった。3月3日にバンコクシャットダウンが終了。3月19日には非常事態宣言が解除され、3月21日に憲法裁判所は総選挙無効の判決を出した。さらに、5月7日には憲法裁判所によりインラック首相と9人の閣僚が失職させられ、ニワット氏が暫定首相に任命された。
 その後も政府派と反政府派の対立は激しくなり、5月20日、陸軍司令官がタイに戒厳令を発令し、陸軍司令官のプラユット・チャンオチャ大将が政府の治安対策本部を閉鎖して、軍による治安対策指令本部を設立した。そして5月22日、政府派、反政府派、関係のグループと話し合いの場が設けられたが、解決には至らず、最終的に午後4時半に軍によるクーデターがテレビ放送を通じて宣言された。
 クーデターは、革命とは違う意味で、政権が移行する間の一時的な状態であり、政治体系自体が変わる革命とは別である。
 クーデター宣言後、5人以上の集会やデモが禁止されたが、日常業務は続けるよう命令が出た。労働組合にとっては権利を剥奪されたことにはなるが、政府派と反政府派の対立で治安が悪化する状況において、組合活動以前に国民の安全が優先されるべきであると考えている。

Ⅲ.タイ労働組合会議(TTUC)の課題と活動

クラン・ジャントル
ITUCタイ協議会(ITUC-TC)
タイ労働組合会議(TTUC)執行委員、高分子労働組合委員長

 

1.労働者を取り巻く環境

 一番の問題は最低賃金問題であり、その他に外国人労働者、インフォーマルセクター労働者の問題が大きい。
 最低賃金を日額300バーツ(約954円)に引き上げた政府の政策により、労働者の生活レベルは上がるのではなく、むしろ厳しくなっている。その理由の1つは、政府がインフレをコントロールできず、生活に必要な消費財の価格が高騰していることにある。また、使用者側は、最低賃金が上がったことを理由に福利厚生費を削減するようになった。中小企業の中には、労務費の増加に耐えきれず廃業せざるをえないところも出てきている。その結果、失業者の中には、雇用の質が悪い臨時労働者やインフォーマルセクター労働者になったり、農業に戻ったりする人も多い。
 タイには中央と地方に最低賃金審議会があり、労働組合も参加している。しかし、タクシンの政党であるタイ貢献党が審議会に諮ることなく、一方的に300バーツ(約954円)を宣言してしまい、審議会は組織機構上には存在しているが、事実上機能していない。

2.労働組合の現状と課題

 労働組合つぶしのために、組合指導者や組合員の解雇、誹謗中傷が行なわれている。使用者側は法律の抜け穴を利用して労働組合をつぶそうとしている。労働組合は、闘争を維持するための資金力も乏しいため、引き下がらざるを得ないケースもある。

3.課題解決に向けた取り組み

 政府に対して、労働者が保護されるよう、法律の改正を働きかけることが重要である。労働組合も協力し合って、非正規労働者やインフォーマルセクター労働者の権利拡大につながる法律改正に結びつける必要がある。また、労使が向き合い、互いに協力し、共に問題を解決していこうとする姿勢が必要である。
 労働条件改善活動を毎年行なっているが、労働組合が闘うためには法律をよく知ることが重要である。どのような要求をする権利があるのかを理解していく必要がある。
 政府に対して、ILO第87号(結社の自由及び団結権の保護に関する条約)および第98号(団結権及び団体交渉権条約)条約の批准を要求していく。労使が協力、共存するために協議制度を推進するためにもこの条約の批准が必要である。

4.労働組合と政治の関係

 ナショナルセンターの中で、1つを除き政治には直接関わっておらず、政府支持あるいは反政府という見解も持たない。労働問題のみを重視した活動を行なっている。

Ⅳ.タイ労働会議(LCT)の課題と活動

バンジョブ・パンジャム
ITUCタイ協議会(ITUC-TC)
タイ労働会議(LCT)執行委員
イースタンポリマー労働組合委員長

 

1.労働者を取り巻く環境

 下請けや外注などのアウトソーシング労働者の増加により、労働者の権利、福利厚生が縮小し、労働組合が弱体化している。しかし、政府はこのような労働者の権利を拡大する法律改正に本腰を入れていない。さらに、労使紛争中に外国人労働者を雇用し、労働組合の交渉力を弱めることに利用している。また、賃金改定においても、労働者の技能が考慮されないことが多い。

2.労働組合の現状と課題

 使用者側は、アウトソーシング労働者を労働組合との交渉の道具として利用している。しかし、公務員の法律に対する知識、理解が不十分なために適切な監督・指導に欠けている。こうしたことから、政府機関に対する国民の不信感が増大している。
 現在おきている問題は、不当解雇である。具体的には、異動辞令を出し、新しい業務に慣れない労働者に対して指示違反を指摘し、警告書を渡した後、解雇手当を出さずに解雇するということが行なわれている。また、高すぎる生産目標を設定して、能力不足を理由に解雇手当なしに解雇することもある。さらに、従業員送迎バスがなかったり、交通費の支給がなかったりする不便な地方支店への異動命令を出し、命令を拒むと解雇されることも起きている。

3.課題解決のための取り組み

 アウトソーシング労働者のための条件改善の要求を政府に提出し、アウトソーシングを大量に発生させる法律の抜け穴を是正させることが必要である。法律の改正に結びつけるためには、労働組合側も互いに連携・協力する必要がある。また、福利厚生の法律の対象に外国人労働者も含めることも重要な取り組みである。法律の理解促進をはかるため、組合指導者を対象としたセミナーや研修を行なう。
 労使関係においては、問題がおきた場合、労使が真剣に向き合って問題解決にあたる協力関係の構築も必要である。

4.その他

 2013年には、タイの日系企業で多くの労使紛争が発生した。その中で紛争が長期化した理由一つとして、労働争議が起きた時に日本人の経営者が交渉に加わらず、タイ人の人事担当者や工場長に任せきりにしていることが問題を長期化させ、深刻化させたりしていることが考えられる。
 タイでは、不法就労の外国人労働者問題が多くなっている。また、タイが近隣諸国の人身売買の中継基地となっているという現実もある。政府職員が不法と知りながら、意図的に外国人労働者を入国させる事例も見受けられ、法律を強化して取り締まる必要がある。

Ⅴ. 全国民間産業労働者会議(NCPE )の課題と活動

サシトーン・チャシーホ
ITUCタイ協議会(ITUC-TC)
全国民間産業労働者会議(NCPE)執行委員
ニッポーメカトロニクス労働組合 組合員

 

1.労働者を取り巻く環境

 雇用情勢は、業界、企業によって異なる。アウトソーシング労働者は全国の事業所で大きな問題となっている。しかし、顧客の望む商品を提供できている企業は、労働者の待遇も良いといえる。
 賃金は最低賃金を決めた法律に従わなければならないのであるが、一部に、アウトソーシング労働者は使用者との合意次第でこの法律が適用されないというところが残っている。

2.労働組合の現状と課題

 企業レベルの労働組合の多くは、共通の問題を抱えている。それは組合活動休暇の許可がとりにくいことである。これは、まだ労使関係が確立できておらず、使用者側の労働運動に対する理解が足りない事業所が多いためである。事業所によっては、お互いに協力して問題の解決に当たっているところもある。
 労働者の側からは、労働組合の活動、団結、コミュニティへの協力などに対する知識が十分でなく、重要視しない傾向が見られる。

3.課題解決のための取り組み

 まず、協力して共同活動を行なう組織力強化のため、新規組合員の獲得に努めている。そして、組合員向けに知識を提供する各種研修を実施している。また、地域の人たちや近隣のインフォーマルセクター労働者を訪問し、法律の知識を提供したり、さまざまな研修をしたりしている。労働組合が中心となって、地域のネットワークづくりに取り組んでいる。その一つとして、地域住民が副収入を得られるように編み物など手工芸の研修も行なっている。
 労使関係の問題解決のためには、一つずつ課題が異なるので、心を開いて誠実に交渉する必要がある。暴力を行使せずに、理由を説明した上での話し合いを重視していく。
 組合活動休暇の確保に関しては、事前に合意文書を作成し、具体的な組合休の取り方まで詳細を明記するよう提案している。

4.その他

 国レベルの問題解決にはナショナルセンターレベルの労働組合が努力しなければならない。特に、法律を作る過程で協議に参画してもらいたい。

*1バーツ=3.18円(2014年6月20日現在)