2008年 タイの労働事情

2008年10月30日 講演録

国際労働組合総連合タイ協議会(ITUC-TC)

 

1.国の労働事情

 タイの人口は約6486万5千人(2004年)。首都府と75県に住む。
 労働力人口は約2500万人で、農業部門に45%(49%)、工業部門に10%。
 農業部門は砂糖、パラーゴム、水産品冷凍など農産物加工業も含まれる。工業部門は自動車産業など多種。
 農業部門には労働者保護法や労働法はない。工業部門では労働者の組織や経営者の組織を設立することができる。
 しかし、労働者は依然として政府からの保護を受けておらず、雇用・失業に対する保障の原則がない。政府は労働組合活動に介入しており、労働運動の安定につながらない。
労働組合 ITUC-TC(国際労働組合総連合タイ協議会)

2.直面している課題

  • 労働者に不利な雇用で職場における安定性がない。労働条件、福利厚生が不十分。
  • 労働者の権利を守る法律が不十分で、たとえば、職場の安全衛生に関する法律の厳格な適用がない。
  • 経済危機による低所得、企業の人員削減などで生活苦が広がっている。収入は低いが生活費は高い。
  • 海外企業の投資における自由貿易協定(FTA)の締結は、労働者にとってプラスにならない
  • 職業能力を向上させるための資金と時間が、労働者にはない。

3.その解決に向けどのように取り組もうとしているか

  • 労働組合の結成を進め、改革を政府に求める
  • 労働組合の一致団結で労働条件の改善、労働者の権利の擁護をはかる
  • 国民の生活保障として国民年金の実現、今年のメーデーで政府に要求提出
  • 職場安全衛生に関する法律改正を進めるため、2万名の署名活動の展開
  • 職場安全衛生推進研究所に関する法案(五者<経営者・労働者・学識経験者・政府・職場の安全衛生など専門的知識を持つ医者>構成からなる独立した組織としての研究所)策定の提言活動
  • 生活水準向上に向け最低賃金の引上げと全国一律の適用を政府に要求

4.ナショナルセンターと政府との関係について

 労働組合との関係を政府は重視しておらず、むしろコントロールが容易になるよう分裂と弱体化をはかるために、各レベルの労働組織に介入している。

5.多国籍企業の進出状況について

 さまざまな産業で長期的な投資が行われているが、政府は投資促進特別条件を策定し労働運動に介入している。たとえば、工業投資地区では労働組合を設立してはならない。

失業問題と労働法の整備

 労働時間を短縮しその短くなった労働時間を利用して職業訓練を行うこと、その機会を利用して自分の技術、能力、職能が上がれば仕事を探すこともできる。

労働者の権利を守るための法整備や福祉の充実

 タイの場合に民間企業では2つ以上の組合を作ることが可能でも、結成するときには労働省への届出が必要で、国営企業の場合は1つの組合しか作れず、政府が労働運動に介入してくることが報告された。最終的には、労働組合の複数主義を認めないと、ILO87号条約、結社の自由の原則に違反することになる。
 法の施行については、政・労・使の三者で話し合い、その後特別な委員会を通り法制局、内閣、国会での承認となる。特別委員会で認められない場合は三者協議に戻されることになる。

労使紛争の解決

 タイでは、紛争に関して労働組合がある場合は20%以上の賛成、組合がない場合は15%以上の賛成があれば経営者に要求を提出し、経営者は要求を受けて3日以内に話し合いに応じなければならない。話し合いに応じなかった場合は、組合は労働省の調停委員会に訴える。調停委員会は経営者および組合または労働者に、24時間以内に調停委員会に出向いて話し合いをするよう命じ、5日以内にその話し合いを終えて調停案を成立させる。
 5日間での話し合いがうまくいかず決裂した場合には、労使が認めた仲裁委員による仲裁委員会を立ち上げて仲裁案を出させるが,それをものめない時はストライキに入ることになる。ストに入る場合は経営者に24時間以上前に通告しなければならない。電話や公共交通に関するサービスの業種では、政府はストライキを禁止させることができる。