2003年 タイの労働事情

2003年9月10日 講演録

タイ労働会議(LCT)
ヴィシット ペップラディット

パットラーコム・タイ株式会社染色産業労働組合 書記長兼LCT財務局次長

 

国内の状況

 タイにおきまして新しい政権が発足して以来、タクシン首相の指導のもと、経済の回復の為に、様々な具体的な施策を打ち出し、それを実行してきました。政府が施策として実行してきました具体的な内容ですけれども、例えば病気になった場合、どんな病気でも30バーツで治療が受けられるという政策、経済回復のための政策、一村一品運動、農地改革に関する政策、麻薬撲滅や賄賂撲滅のための政策といったものです。
 政府の様々な経済回復のための政策に対して、基本的にLCTは支持してきました。このようにLCTは政府の様々な政策を支持しているにも関わらず、タイ政府はあまり労働問題に関心を払わず重要視していない状況があります。その状況の中で、タイの労働組合は政府に対しまして労働法改正の圧力をかけています。
 なぜ労働法の改正を訴えているのかといいますと、まず、タイの労働法は完全なものではないということ、他の国に比べ遅れている部分があるからです。タイでは、自由に労働組合を設立できないのが現状です。更に、タイの労働組合にはまだ労働組合出身の国会議員を持ちません。政府に対して対等な立場で働きかけるような指導者が育っていないことも問題の一つです。
 次に、タイの現在の経済状況について申し上げます。タイの経済はかなり回復基調にあります。輸出や貿易、外国からの投資が増加してきています。こういった拡大というのは、外国の投資家が、タイでは政治が安定していることを認めているからだと思います。これらによってタイの経済は回復してきました。そういった状況の中で、8月にタイ政府は経済の自立宣言を行いました。つまり、IMFからの債務を払い終えたということです。

LCTの活動方針

 次にLCTの基本的な考え方や政策について申し上げます。まず、国連憲章の人権規定や、ILO条約が規定する労働条件に従って、労働者、また市民の尊厳、権利、利益を守るという基本的な考え方があります。
 労働組合員を始め労働者のための教育活動としてLCTは情報の発信基地として情報提供を行っております。また、組織拡大にも力を入れています。労働者に対して労働法に関する助言を行うアドバイザー的な役割も果たしています。

LCTの具体的な活動

 次に、LCTが行ってきた活動と、その成果について申し上げます。他の労働団体とも協力して、失業保険制度の制定に向けた法案づくりに参加してきました。2番目に、組織の拡大を図ってきました。教育活動としては、労働法や職場の安全衛生に関するセミナー、環境に対する理解を深めるためのセミナーを開催しました。また、組合員に児童労働や女性労働に対する理解を深めるための教育も行いました。その他の活動としては、レーバーデーにおける集会、障害者のためのスポーツ大会、麻薬撲滅のための活動、それからHIV感染者に対する支援等を行ってきました。

タイ労働会議(LCT)
スピッチャヤー ソーンシー ガン

モンリゲーヘルスケア労働組合(衣料) 委員長兼LCT安全衛生部担当

 

国内の状況

 ヴィシィットさんからタイの経済は良くなっている、回復しているという話がありましたが、タイの労働事情に目を向けますと、改善しているとは申せません。近年、タイの労働組合は力が非常に落ちています。それには、次のような原因があります。
 まず労働者の教育レベルが低いことが挙げられます。教育程度が低いため労働者が労働者としての権利を理解しない、知らないという現状があります。次に賃金のレベルがかなり低いということが挙げられます。更に労働組合の組織運営がうまくいっていないという現実があります。企業別組合、産業別組織、ナショナルセンター共々組織運営が効率的でなく、うまくいっていません。加えて政府機関の法の運用、法の適用が不十分で、効力を発揮していません。労働組合指導者間の対立といった面も見られます。労働指導者間の対立があるという事は、労働組合の運営が実際に民主的になされていないということです。これらの事が原因で、タイの労働組合運動は力が落ちてきていると申し上げたわけです。
 日本の労働組合運動の実情を見せてもらいましたが、率直に言って非常にすばらしい力を持っていると思いました。具体的には、日本の労働組合は政府と対等な立場で対話ができるといった部分です。タイはまだそういう状況にはありません。