2000年 タイの労働事情

2000年6月21日 講演録

プリーチャー・キヤオゲーオ
E.A.T.Thailand 労働組合(時計製造)委員長兼LCT調査企画部長

 

 LCTは、現在、5つの緊急を要する課題を抱えています。
 まず、最低賃金の改定です。現在162バーツですが、これを170バーツに引き上げるというものです。今年の5月1日、全国の労働者は8項目からなる対政府要求行動を行いました。その中には、最低賃金改定要求が含まれていました。労働大臣は、我々の要求を書面で受け取り、検討を約束しました。その後、最低賃金に関する会議が開かれましたが、その決定は、最低賃金引き上げの見送りでした。理由として、景気の回復がいまだみられず、経営者がその影響を受けているというものでした。一方、これに対して政府は、沈黙を守ったままです。チュアン政権は、労働者を支援する側に回ったことがありません。常に経営者の方を向いていて、貧しい人々や、労働者の方に顔を向けることがないのです。そういったチュアン政権を、私どもは、金持ち政権と呼んでいます。我々のような貧しい国民や労働者のための政権では決してありません。LCTとしては、今回最低賃金引き上げが見送られたことに対し反対を表明しています。
 LCTは、最低賃金引き上げのために圧力をかけることを目的に、9つのナショナルセンターで協議会を開くことを提案しました。協議会は6月11日に開催され、最低賃金引き上げに向けて政府に圧力をかけるという決定を出しました。しかし、この呼びかけに賛同しましたのは、6つのナショナルセンターで、3のナショナルセンターは、賛同しませんでした。3つのナショナルセンターは、経営者側寄りであったからです。賛同した6つのナショナルセンターは、政府に対する抗議を行います。もし仮に、ほかのナショナルセンターが脱落しても、LCTだけでも行動を起こします。LCTは、ナショナルセンターとして行動を起こすのに十分な組合員を抱えているからです。
 私たちは、最近の物価の上昇を見れば、最低賃金の引き上げは妥当だと考えています。
 2つ目の対政府要求は、失業保険制度です。それは、今、タイが抱えている失業者の数の多さにあります。LCTとしては、この失業保険の制度の導入要求を2年前から行ってきました。しかし、いまだ実現されていません。LCTは、3月11日の国際女性デーに8項目を政府に提出しました。その主なものは次の3つです。(1)失業保険制度の導入。(2)就学前児童のための保育園・保育所の設置。(3)失業者救済保険の設置です。失業による問題が、非常に深刻化してきているからです。政府からの回答は現在のところありません。
 3つ目は、1975年に公布された労働関係法の問題です。私たちは、労働関係法の見なおしを要求しています。これは現在、労働小委員会で検討作業に入っています。私たちの要求の理由は、経営者が労働組合に対して、公平な扱いをしないところにあります。それどころか、経営者側は、労働組合に対して常に有利な立場をとろうとしています。そこで、LCTは、労働組合の保護をうたった法律の制定を求めています。例えば、労働組合保護法といったものです。法律で保護されることにより労働組合を設立しようとする労働者、また、それにかかわろうとする労働者が、解雇やレイオフから安心して組合をつくることができるようになります。また、賃金カットの恐れも避けることが出来ます。このような法の制定は、良好な労使関係をつくる上にも必要なものだと考えています。私たちは、この種の法律が制定されることを待っているところです。
 4つ目は、解雇問題と失業問題に関してです。現在、タイの解雇と失業は、まるで伝染病のように広がりを見せています。経営者は、すべて自分たちを優位な立場に置き、決して労働法を守ろうとしませんLCTとしては組織・非組織労働者にかかわらず、さまざまな支援を行っています。例えば、苦情申し立て書類の書き方とか、裁判所での争い方、交渉の進め方、証拠の集め方など無料で指導しております。ただし、裁判所での係争には、手数料が必要となっています。また、現在経営者は、景気がいまだに回復していないこと、ないしは悪化していることを理由に解雇をしますが、その解雇に伴う補償金を払おうとはしません。このため、LCTは、さまざまな労働相談を行っています。
 タイの経営者というのは、そのほとんどが組合の設立を望んでいません。ですから、組合をつくろうとする労働者に対して解雇等の嫌がらせを行っています。経営者自身、そういった行為が不当行為であるということを承知の上で行っているのです。LCTは、こうした不当な行為を受けた労働者が仕事を続けることができるよう、相談に乗っています。
 5つ目の要求は、職場の安全を確保するための機関の設置です。経営者は、労働者の価値、重要性を全く認めていません。1日の労働時間をめいっぱい働かせることしか考えていません。つまり、労働者が安全に仕事をしているかどうかということは、彼らの眼中には全くないのです。そのため、LCTは職場の安全を確保するための政府機関の設置を要求しています。これは、労働者が安全に仕事をできるような環境をつくるためです。例えば、悪臭とか騒音、地下や水中での作業、高温・低温状態での作業、労働者の身体に影響を及ぼすような環境に対する改善要求です。