2008年 シンガポールの労働事情

2008年10月21日 講演録

シンガポール全国労働組合会議(NTUC)
リー・シォク・ブエ(Ms. Lee Siok Buea)

航空輸送関連管理職組合
会計担当補佐兼NTUC女性委員

 

国の概要

 シンガポールの総人口は約483万人、労働人口約275万人、人口も女性の労働市場参加率も年々上昇している。労働人口の約30%前後が外国人労働者で、労働運動においても、唯一のナションルセンターであるシンガポール労働組合会議(NTUC)においても、組織人員の約1割を占める。

雇用情勢

 2005年から今回の金融危機までシンガポール経済は順調に推移し仕事も増え、高い求人需要が続いた。サービス産業、建設業、製造業において労働者不足に陥っている。特に若い20~29歳の労働者が不足している。賃金や付帯給付が少しでも高い企業に転職する傾向は続いている。2008年第3四半期に2,000人のリストラが行われたが、その内1500人が電機産業であった。全体の失業率は2.2%である。

外国人労働者

 外国人労働者の依存率は25%~30%に上り、造船、石油、建設産業がとりわけ多い。仕事と熟練労働者のミスマッチが起きているためでもある。シンガポールが外国人労働者に依存する限り外国人労働者の社会的ニーズに取り組む必要がある。外国人労働者を組織化しているシンガポール労働組合会議(NTUC)はこの分野で先進的な役割を果たしている。

高齢化社会

 出生率の低下により2030年までには60歳以上の高齢者が人口の25%に達するものと予測されている。高学歴の女性労働者の出生率が低いことも懸念されている。政府は産児・育児手当の増額をして出生率を高める促進策をとっている。非経済的活動人口には、育児のために仕事を辞めた女性が熟練の欠如と職場復帰の自信喪失から家庭に留まっている女性も含まれている。このような女性もターゲットにしてNTUC女性委員会が「仕事に戻ろう!Back to Work!」の運動を始めている。フレキシブル・ワーク、パートタイム、在宅労働などを紹介すると同時に、関係機関との協力により要求されている新たなスキルや希望職種について相談に応じている。

労働運動

 シンガポール労働組合会議(NTUC)の組織人員は62加盟組織、7友誼組織、約50万名。NTUCは組合員サービス活動の一環としてさまざまな事業も展開している。9つの協同組合(小売、保険、幼児ケア、住宅、高齢者ケア、食品、保健、メディア、信用協同組合)と6つの関連組織(シンガポール労働財団、NTUCクラブ、NTUCリンク、オンテンチョン労働研究院、NTUCラーニングハブ、消費者協会)である。
熟練労働者の育成のために政府の援助も受けて訓練・再訓練プログラムも行われている。高齢者対策としては62歳定年後の再雇用をすすめている。年功賃金システムに躊躇している企業に対しては賃下げなどを含めた再雇用のオプションを提示するなどして取り組んでいる。

航空輸送関連企業管理職組合(AESU)

 Air-Transport Executive Staff Union(AESU)はNTUC加盟の組合。シンガポール航空とその関連企業6社(シンガポール航空貨物、シンガポール空港ターミナルサービスなど)の中間管理職の大多数を組織化している。その前身は1965年結成のマレーシア航空管理職組合。1967年にマレーシア・シンガポール航空となり組合の名称も変更。1972年にシンガポール航空として独立、現在の組合名称となる。

労働運動の課題

 「Labour Movement 2011」を掲げてすべて人々のための労働運動の再構築を目指している。All people、学生から退職者、在宅ワーカー、管理・監督者、外国人労働者までを包含する組織へ、2011年を目標に組織化を展開している。