2002年 インドネシアの労働事情

2002年6月5日 講演録

国際自由労連アジア・太平洋地域組織(ICFTU-APRO)
エドウィンテックヒーライ

ICFTU-APRO青年委員兼シンガポール教員労働組合副会長

 

国内の状況

 シンガポールにおいては全体的にビジネスへの信頼が除々に改善してきています。なぜそう言えるかというと、シンガポールへは外国からの投資が続いているからです。投資は続いていますが、シンガポールの企業は海外へ進出、移転しています。主に、東アジアに移っていて、中でも中国と香港に移っています。製造業の多くは中国のほうに移動しています。香港へはビジネスオフィスを求めて移動しています。それを「ヘッドウォーターズ」と呼んでいます。
 2001年12月時点で失業率は4.7%に達しました。また、解雇された人たちは2001年度で2万5,838人に達しました。
 一般的に言って、世界経済は今でもまだ米国への同時テロ事件の影響を受けています。
 米国での9月11日のテロ攻撃以後のシンガポールにおける社会環境についてですが、シンガポールでもテロの団体があります。国内治安庁(ISA)がテログループの何人かを拘束しました。ジェマヤ・イスラミヤンという組織です。このテロ組織の構成員はイスラム教徒のマレー人です。地下鉄を爆破するという計画を持っていました。そういうような状況ですから、ますます国内の人種間の調和、協調というものを強化する必要があります。というのは、シンガポールという国は多くの人種、民族でできているからです。

シンガポールNTUCの活動方針

  1. 雇用政策では日本と同じように失業率があまりにも高過ぎると思っています。雇用をもっと増やさなければいけないと感じています。
  2. 生涯を通じての雇用の可能性の問題があります。エンプロイアビリティという言葉を使いますが、これは、一生涯を通じて就職する能力、職業能力を持てるようにするという意味です。
  3. 政策分野では社会的安全ネット(socialsafety net)の強化があります。
  4. 労働組合運動を全体としていかに強化するかという問題もあります。

 これらの4つのそれぞれについて、NTUCがどのような活動をしているかを説明します。

具体的な活動内容

 まず第1は雇用政策の問題です。2001年度に2万5,000人以上の人々が職を失いました。理由は企業のリストラによるものであります。そこで、今年の4月26日にNTUCは「ジョブ・リンク・センター」を立ち上げました。職業紹介所です。例えば私が職を失ったとすると、そのセンターへ行き登録し、そこで職を仕事を見つけてもらうわけであります。
 更に、NTUCは、できるだけ今後の失職を少なくするため、解雇の可能性のあるところでいろいろと交渉を続けていますが、併せて一旦解雇された労働者ができるだけ早く再就職できるように援助しています。
 2番目の政策分野は一生涯、職業能力を維持するということです。労働者が持っている技能、技術をいつも最新なものであるようにしていくということです。それにより、人員整理に遭わずに済みます。また失職してもすぐ次の新しい仕事が見つかるように努力しているということです。具体的には、1996年にSkills Redevelopment Program(技能再開発計画)というものを立ち上げました。これは中高年の労働者や未熟練労働者たちが再訓練を受けるのを助けるための計画です。この計画には使用者も参加しており、自分のところの労働者がもっと再訓練が必要だと思ったら、このプログラムに送り込んできます。送り込まれた人たちは、自分の企業の仕事はできないので、仕事をしていない間もこの企業の賃金を、ある程度受けとることができるようにしたものです。
 ところが、経営者の中にはあまり組合をよく思っていない経営者もいて、そういう経営者はこのプログラムを利用していません。また、これとは別にNCTUC(教育訓練基金)というものが樹立されました。この基金にはNTUCが集めた額と同じ額をシンガポール政府が拠出し、経営者があまり労働者を援助してくれないような企業で働いている労働者が再訓練を受けたい場合には、勤務時間終了後、再訓練が受けられるように、この基金から再訓練用の費用を支出できるようになりました。
 第3番目の分野は、社会的安全網(socialsafety net)の強化です。NTUCは生活共同組合をいくつか持っています。その1つがスーパーマーケットです。そのスーパーマーケットは「フェアー・プライス」と呼ばれています。その役割は、状況が厳しくなって労働者の購買が大変になってきたときに、このスーパーマーケットでは価格を、特に、日常生活に必要な必需品、例えば米などの価格を引き下げます。それによって労働者の生活を助けています。また、レクリエーション施設の運営しています。労働者はバランスのとれた生活スタイルを持っているべきだと考えています。つまり、生活をエンジョイすることも必要であります。そのための施設の1つが「オーキッド・カントリークラブ」ゴルフコースです。
 次に、NTUCはさまざまな社会保障の受給資格の携帯可能性を推進しています。それはどういう意味かというと、ある企業をやめて次の企業に移るときに、それまで持っていた、例えば医療保障の資格を次の企業にも移行しても継続できる携帯可能性を推進しています。これはまだロビー活動の段階で、まだ実現はしていません。
 第4番目の分野は、労働運動の強化です。その一環としてシームレス組合員資格を導入しようとしています。シームレスというのは、境目がないということですが、それは、例えば銀行で働いてそこの組合の組合員であるとします。その銀行をやめて次は教師になったとします。その場合何が起こるかというと、まず、銀行をやめた時点でそこの組合員の資格はなくなります。次に、学校に行って先生になったら、また組合に新しく入り直さなければなりません。仕事を移ったときにでも自動的に組合員資格を持っていけるようにする。つまり、一つの仕事から次の仕事へ移るときに、組合員資格についてはシームレスにしようという運動です。
 次に、NTUCは組合員資格を有する労働者の範囲を広げようとしています。現在は企業の役員や管理職者は労働組合に加盟できません。現在のような経済の状況の中では、たとえ銀行の副頭取であっても解雇されるということが現実に起きています。企業の役員であっても労働者として保護しなければいけないということで、組合員の対象を広げようとしています。NTUCでは組合員証があります。現在大々的に組合員募集キャンペーンを行っています。具体的には町の中心部のビジネス街に行って、通り過ぎる人たちに組合に入らないかと呼びかけ、それに応じた人には申込書に書き込んでもらいます。その中でこの人は先生だということがわかったら、この人の申込書を教員組合に渡す。その人が銀行員なら銀行員の組合に渡す。電子産業で働いていたら、電子産業の組合に渡すというようなことをやっています。
 また、同時にNTUCはほかのいろいろな分野の人たちにも組合への参加を呼びかけています。女性、若い労働者ですが、それぞれ女性委員会と青年委員会を立ち上げました。それぞれは組合の中の1つの部門であるリーダーシップ・ディベロップメント部(指導者開発部)に属しています。