2016年フィリピンの労働事情

2016年12月9日 講演録

フィリピン労働組合会議(TUCP)
アルトロ・アンテノール・パシア

TUCP副会長
アンジェリータ・デ・グズマン・セノリーン
TUCP副会長
ウィルマーク・ジャヴィエール・ラモス
タルラック州立大学労働組合書記

 

1. 当該国の労働情勢(全般)

  2014年 2015年 2016年(見通し)
実質GDP(%)
(出典)
6.9% 6.5% 7.1%
(2016年10月現在)
物価上昇率(%)
(出典)
4.1% 1.4% 2.3%
(2016年10月現在)
最低賃金
(時給/日給/月給)
(出典)
時間
(58.25フィリピンペソ)
日額
(466.00フィリピンペソ)
月額
(13,980フィリピンペソ)
時間
(61.15フィリピンペソ)
日額
(481フィリピンペソ)
月額
(14,430フィリピンペソ)
時間
(61.40フィリピンペソ)
日額
(491フィリピンペソ)
月額
(14,730フィリピンペソ)
労使紛争件数
(出典)
2件(実際のスト)
159件(ストの通告)
5件(実際のスト)
194件(ストの通告)
10件(実際のスト)
146件(ストの通告)
失業率
(出典元)
6.7% 6.5% 5.4%
(2016年7月現在)
法定労働時間
(出典元)
8時間/日 40時間/週 時間外/割増率 休日/割増率
200%

 フィリピン統計局の最新報告(2014年度・3年に1度調査)によると、2014年における派遣、あるいは契約労働者などの不安定な仕事に就いている労働者は、全雇用者の約17.4%、670万人で、そのうち女性は約224万人となっている。不安定雇用が最も明確にあらわれている産業は、工業・製造業で、30.4%となっており、これは農業の16.7%、サービスセクターの13.9%の倍以上となっている。
 不安定雇用の分野は、さまざまな法令違反が多いセクターで、フィリピンでは公共部門労働者があげられる。「ジョブ・オーダー・ワーカーズ」と呼ばれる契約雇用の約60万人の公共部門労働者が不安定雇用となっている。
 また、ILOの報告書では、農業や自営業を除く産業の70.1%がインフォーマル雇用となっており、農業や自営業を含むすべてのインフォーマルセクター雇用は72.5%となっている。また、本当はフォーマル雇用なのに社会保障等を払いたくない雇い主が見せかけでインフォーマルセクター労働者としているのが11.5%となっている。
 TUCPは、インフォーマルセクター労働者の連盟でありTUCPに加盟しているインフォーマル経済セクター労働者同盟(ALLWIES)を通じて、10年間に渡りインフォーマル経済で働く労働者の権利、福祉および保護の促進を強化する国内立法を提唱している。現在、その法案が、議会で審議中である。

2. 労働組合が現在直面している課題

 使用者は、積極的かつ強力に労働組合に抵抗し続けている。労働組合を排除するために会社を閉鎖し、新たに会社を立ち上げたり、会社を国外に移転したり、反組合色の強い地区の組合指導者に対して、会社から物を盗んだ、組合承認に際して虚偽書類を提出したなど、あらゆる種類の事実を捻じ曲げた内容で訴訟を起こす等を行っている。残念ながら、フィリピンに進出している日本企業についても、規模の大小を問わず、反組合というしきたりに従っていることが見られる。

3. その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか。

 これらの課題解決のためTUCPは、まずは組織化、団体交渉や協議に取り組んでいる。また、社会的保護がより強化されること、雇用の安定が強化されることなどを主張している。また、TUCPは労働に関する教育、研修、法律相談、その他のサービスを実施している。労組として、労働専門の弁護士に依頼すると費用が高額となるため、法的な事案にどのように対処するかなどを、パラリーガルを対象に教育プログラムを実施している。

4. その他

 フィリピン経済は長期低迷から復活し、アジアでトップを走る成長(2016第3四半期7.4%)となっている。この背景の1つとして、年率20%の成長をしているIT-BPO(business process outsourcing)がある。中でもコールセンター受託件数は世界トップといわれ、その売り上げや雇用者数は大きな数字(約100万人)をあげている。また、海外出稼ぎ者(約1000万人)の送金も個人消費の押上げや成長を後押ししているとみられる。こうした背景から、国内労働市場で一定の改善が進んでいることも事実である。しかし、そうした明るい情勢とは裏腹に、雇用構造の未だ脆弱性は否めない。不安定な非正規雇用は雇用者総数の約17.4%(670万人)も存在しており、インフォーマルセクターの問題も発生している。これに対応すべく、TUCPは尊厳ある働き方をめざし取り組みを進めている。しかし、組合に抵抗し続ける経営側の対抗も強く、逆風の中にあるといっても過言ではない。アジアで成長一番にもかかわらずその成果が働く者の手に届いていない。新大統領であるドゥテルテ氏の動向も気になるが、働く者に僥倖となることを期待したい。

*1フィリピンペソ=2.2562円(2017年2月21日現在)