2009年 フィリピンの労働事情

2009年6月16日 講演録

フィリピン労働組合会議(TUCP)
アン・ミサジョン・ドゥマラオグ (Ms. Ann Misajon Dumaraog)

ジョビリー労働組合 教育・調査担当

 

フィリピンの労働事情

 グローバルな経済危機の影響を受けてフィリピンの経済は本年の上半期に新たな底に達し、下半期はもとより今後数年に亘って悪化し続けるものと予想されている。その中でフィリピンの労働者は次から次へドカンドカンと打撃を受けている。石油製品や電力の価格の高騰の影響を社会の全部門は負担を余儀なくされている一方、フィリピンの3,600万人の賃金労働者は、縮小し続ける経済の中で絶えず余剰人員が発生・拡大しており、そのため経済危機による打撃の大部分を背負わせられている。

労働組合が直面する課題

  • 失業と不完全雇用の増大:2009年1月に行われた多国籍企業フィリピン・インテル社の閉鎖は大きな影響を与えた。
  • 組織化:労働組合組織率は賃金労働者3,460万人の5.6%。団体協約によってカバーされている労働者は総労働組合員の13.4%。
  • 劣悪な労働条件:2006年の労働基準監督の調査によると、調査を受けたほぼ半分の企業で安全衛生に関する国際的な労働基準に違反していた。
  • 輸出加工区(EPZ)やその他の地区における組織化:この部門では嫌がらせ、脅迫、解雇などが頻発し、組織化の最も困難な状況にある。 組織化がいかに困難かは次の数字に表れている。1995年-2000年の組織化の目標に挙げられた企業100社の中、登録を申請できたのは75組合。選挙を行うことができたのは40組合。そのうち認証を受けたのは25組合。そのうち団体協約にまでこぎつけ、認可されたのは15組合であった。2000-2004年はそれらのいずれの数字も下がっている。
  • フィリピンの労働組合は政府への登録を必要とする
  • 外注(アウトソーシング)・派遣労働者の組織化の困難:飲食産業にサービス生協(Service Cooperative) ないしはサービス派遣企業(Service Agency)から派遣される食料品を取り扱わない労働者(Non-Food Handler)、すなわち飲食店の清掃、テーブルセッテングなどを行う労働者は派遣元が生協の形態をなしており、組織化が困難である。
  • 海外移民労働者の増加。2007年、海外で被雇用者として働くフィリピン人労働者は約100万人であった。中東においては様々な衝突が起こっている。死亡事件、虐待事件が頻繁に起きている。そのため18歳未満の若年労働者のうち平均して3,386名が毎日働いていた国を去っているという調査もある。海外移民労働者の多くが女性で、家事手伝い、ヘルパーとして働き、25歳から29歳までの女性で約30%を占めている。

解決のための労働組合の活動と要求

  • 労働法の改正:具体的には共和国法第9481号の規則およびルールの改正。労働者が自ら選ぶ労働組合を組織する労働者の権利を規定した憲法上の権利の具体化。労働組合は政府に対して78の改正提案を提出している。
  • 各種プログラムの推進:社会的ネートワークのプログラムの推進、HIV/AIDS対策プログラム、家族の健康・福祉プログラム、セクシュアル・ハラスメント対策プログラムの実施。
  • 住宅対策プログラム:貸与額の増額、金利の引き下げなどを要求している。
  • 社会保障、社会的保護の充実:住宅、健康、教育分野における給付金の充実を要求している。
  • インフォーマル部門への社会保障の拡充
  • フィリッピン製品の購入運動
  • 仕事と必要な技術がマッチできるようにする運動
  • 職業訓練、再訓練の充実と雇用促進:トレイニーへの援助拡大。TUCPの労働大学。
  • 移民労働者を組織化:人身売買の犠牲者を含めた移民労働者に対するサービスの提供。
  • 技能認定制度の充実:様々な教育機関と連携して、これまで受けた教育訓練、経験、技術などの認定を叙する制度の充実。

政府との関係

  • 労働者は政労使3者構成機関に代表を送っている。
  • 労働組合は政府の審議会に参加し、反労働者的な提案を阻止することができる。
  • 政府の政策、手続きなどの変更などに影響を与えるために議会などへのロビー活動を展開している。

フィリピンの多国籍企業

 2009年1月を期してフィリピン・インテル社はフィリピンにおける事業を閉鎖した。世界最大の半導体企業であるテキサス・インスルメント社は危機を理由に12月に400人の解雇を行った。多くの多国籍企業が需要の減少を理由に人員削減を行ってきた。BPO社も下請け作業需要の減少のために利益の減少に直面している。オーストラリアのある多国籍企業も昨年900名の人員解雇を行った。これらの企業の大半、すなわち104のケースでは労働者の経済的、社会的、文化的権利に違反している。労働者はピケット・ラインや平和的な団体行動で容赦のない攻撃を受けてきた。