2008年 フィリピンの労働事情

2008年10月21日 講演録

フィリピン労働組合会議(TUCP)
ミラグロス・オガリンダ(Ms. Milagros Ogalinda)

TUCP副会長兼教職員連盟(SMPNATOW)事務局長

 

雇用情勢

フィリピンの総人口は約8,857万人、労働人口約3,600万人。経済・雇用のインフォーマル化が進んでいる。これは就業労働者の約50%、1,500万人に上り、特に農業(55.1%)、サービス産業(39.1%)、製造業(5.8%)にみられる。さらに過剰就業(over-employment)が深刻化している。就業労働者約3,300万の4分の1近い22.9%が過剰就業者である。全体で約760万人となり、その59.8%、440万人は副業をもっている。半数以上が女性である。この長時間労働は労働者の健康と福利はもとより、生産性、労働の質、ワーク・ライフ・バランスからも問題である。

雇用のミスマッチ

在外フィリピン人労働者(OFW)からの送金は国家経済の大きな貢献となっているが、同時にフィリピンは多くの技能労働者を失っている。雇用のミスマッチも起きている。医療・保健分野では医師、看護師、医療技術者など、教育分野では教師、図書館員、航空産業では民間航空パイロット、航空メカニックなど、電子部門ではITエンジニア・テクニシャン、船舶で船舶エンジニア、鉄鋼ではプラントエンジニア、石油化学では化学エンジニア、情報通信では無線周波数エンジニア等が不足している。さらに経済界が求める人材が不足しているのは大学の教育内容に問題があるともいわれている。政府の統計でも比較的賃金の高い職種といわれる会計士やエンジニア、IT関連職種から現場労働者の溶接工や熟練労働者まで労働力不足とされている。

国際労働基準と国内労働関係法

フィリピンはILOの中核的労働基準条約(結社の自由及び団体交渉第87号、第98号など8条約すべてを批准している。関連する国内法はそれなりに整備されている。しかし組合の調査では多くの企業で労働基準法や安全衛生違反、強制的な時間外労働、賃金・時間外労働の未払い、福利厚生給付・社会保障保険違反、採用・昇給時のジェンダー差別、組合つぶしなどが全産業でみられることが明らかになっている。政府の正式な調査や使用者側の報告でも同様のことが指摘されている。

児童労働

フィリピンには児童労働がほとんどのセクターに存在する。主に農業に多いが鉱山や採石、ごみ捨て場、人身取引、売春、児童ポルノ、薬物取引、反政府組織における子ども兵士など最悪の形態の児童労働が存在する。政府は特定のコミュニティーをターゲットにした総合的なプロジェクトを始めているが、インフォーマルセクターの児童労働の実態は当局も把握できないでいる。国際機関や国内外のNGOによる支援活動も行われている。労働運動は、批准されているILO条約の完全適用を目標に児童労働の撤廃に活動している。

労働運動

ナションルセンターの一つであるフィリピン労働組合会議(TUCP)の組織人員は約45万名(女性40.5%)である。TUCP傘下の組合が締結している労働協約は2,500企業に及ぶ。労働協約の適用範囲はエージェンシー・ショップも含め約150万人。37.5%を占める女性が含まれる。(エージェンシー・ショップ=agency shop組合加入はせず組合員と同額の組合費を納入して労使交渉の恩恵を受ける)。増大する潜在的組合員はコールセンターと在外フィリピン労働者である。毎年約38万人のコールセンター有資格者と約87.5万人の在外フィリピン労働者(OFW)が新たに労働市場に参入する。労働運動にとっては大きな挑戦である。伝統的な雇用構造の枠を越えた膨大な労働者の利益と社会的ニードも取り入れた新たな労働運動の再構築が求められている。

Gender Equality

女性労働者と青年労働者の労働市場への参加はますます増えている。組合活動すべてのレベルで女性・青年組合員の積極的な参加が期待される。また組合と職場の重要なポストに女性が就任することが望まれる。TUCPの執行委員会構成21名のうち女性は4名、女性委員会委員長、青年委員会委員長、産別推薦2名である。傘下の組合役員に占める女性の割合は29.6%、局長233名のうち女性は69名である。企業レベルの組合執行部における女性の割合は34%。TUCPが主催するすべてのプログラムにおいて25%は女性の参加が最低条件としている。また労働者全体の健康のための有給休暇(産前産後、検診)、授乳・育児休暇の取得や企業に対してシングルマザーに関する法律の遵守を呼びかける運動も展開している。

輸出加工区(EPZ)

TUCPが輸出加工区内の企業と締結している労働協約は42にのぼる。また加工区内での組合の数は173である。EPZ全体の労働者の71%を女性労働者が占めている。輸出加工区内のTUCP組合員も60%が女性であり、そのうち労働協約の適用を受ける女性労働者は57%である。労働関係法は輸出加工区内の労働者すべてに適用されるはずであるが実際は十分に遵守されているとはいえない。セクシャルハラスメントも頻繁に起きていることが報告されている。セクシャルハラスメント対策としてのメカニズムが存在する組合のある企業においても起きている。この事実から未組織企業ではさらに悪い状況にあることは容易に推測される。告発によって仕事を失う可能性もあり確認できないケースも多い。