2007年 フィリピンの労働事情

2007年5月30日 講演録

フィリピン労働組合会議(TUCP)
ヴィクトリーナ ニンファ ヴェドレーロ

全国教員オフィス労働者組合 青年委員長兼TUCP青年議長

 

 フィリピンの労働力人口は、2007年1月現在、3,640万人、そのうち雇用労働者3,350万人、失業者280万人である。政府は雇用率が高くなっていると発表しているが、現実は若年層の雇用チャンスがないという大きな問題を抱えている。
 失業問題は、教育と貧困問題が大きな原因となっている。
 フィリピンの労働問題全般については、[1]職場で労働者が抱えている共通の問題は、低賃金であること。フィリピンでは現在家族が生活していくためには、604ペソは必要だが、最低賃金は350ペソしかない。毎年、多くの優秀な学生が学校を卒業しているが、このような学生達はフィリピンの国内で就職するよりも海外に職を求める傾向がある。学生達は、フィリピンで職を得たとしても給与が高くないと考え自分達の努力に見合った給料を得るために、海外に求職する傾向がある。[2]労働組合に関する問題としては、フィリピンの労働法は労働運動の活動を制限しているということ。使用者が労働者に対して、敵意を抱いているということ。労働組合同志のライバル意識・競争により、組合はあるものの、労働組合が1つの目的に向かって一緒に進む状況でないこと。また、組合の一部が擬似労働組合であることが問題とされていること。[3]社会の中で労働者が共通し直面する問題としては、高物価、インフレに見舞われ、失業率が高いこと。その結果、貧困が蔓延している。労働環境が悪化している状態は地域社会によい影響を与えないのである。このような様々な問題を解決するために努力をしなければならないと考えている。

2007年2月21日 講演録

フィリピン労働組合会議(TUCP)
ジャズ・ボウリン・マティエンツォ・ブランコ

女性・青年活動特別補佐兼広報担当

 

雇用情勢

 フィリピンの人口は約8946万人。2006年の労働力人口は3580万人、労働参加率は64%です。雇用の創出は2000年より年平均2.4%の伸びをみせ2006年には3325.7万人に達しています。最も高い雇用創出を見せたのはサービス部門です。それでも雇用創出は労働人口の成長に追いついていないのが現状です。そのために高い失業率になっていますが男女別では男の失業が女性の2倍になっています。その理由の一つは平均して女性の教育レベルが男性より高いということと男の方が労働市場に入る時期が早いために十分な教育を受ける機会に恵まれていないためといわれています。

組織率

 組織率は賃金労働者の約10%前後です。人数にすると約33万人となりますが労働協約の恩恵をこうむっている労働者はそのうちわずか1.3%にすぎません。組合加入手続きに時間がかかることも組織率があがらない原因としてもあげられています。
 組合加入の賛否を問う投票(election)にもっていくまでにさまざまな手続きがあり、その間に経営側が介入してくることもあります。組合が交渉権を獲得してから団体交渉を申し入れることになります。団体交渉が順調に行けば労働協約(CBA)の締結になりますが、最近、組合リーダーや組合活動家が殺害されるなどかってのような反組合的な動きもでてきています。

組合の技能教育訓練

 改善の兆しはありますが依然として若年者の失業は深刻です。これは2006年の年齢別失業率です。15~19歳=21.6、20~24=20.1、25~34=9.2、35~44=4.9、55~64=4.4、65以上=5.0。
 労働者技能教育を通して若年者の雇用を促進するためにフィリピン労働組合会議(TUCP)はカレッジを設立しています。TUCPの組合員とその扶養家族、失業した組合員および若年者を対象にした技能訓練をするものです。組合としてコールセンターエイジェント上級講座開設に必要な政府の要件を満たしています。この講座には2006年9月~2007年1月の間に1,857人の応募があり2006年10月~2007年1月に760人の生徒が受講を許可され506人が修了しました。2007年1月に新たに247人の生徒が10の講座を受講しています。この一連の訓練期間中に就職相談会が9回開催されました。その結果151人がコールセンターで働いています。労働組合も労働者への付加価値のサービスとして雇用促進の分野にも参入する必要があると考えています。これは組織化へのプログラムでもあります。受講修了者は「フィリピンコールセンターエイジェント・アソーシエイション」というギルドをつくっています。

最低賃金

 フィリピンの最賃は一家族の毎日の生活費に足る最低額の半分にもなりません。フィリピンの場合1家族6人の家族構成を元に最賃は決められています。首都圏の最賃は350ペソ、米ドルで約7ドル(約805@115)程度です。しかし一家族が必要な賃金は764ペソと算出されています。その内訳は食費204ペソ、非食費(家賃とか登下校の交通費、教育関連費用、わずかなレジャー費用など)491ぺソ、10%の貯蓄69ペソで合計764ペソになります。米ドルで約14ドル程度(約1,610円)です。

労働関係法の改訂と実行

 労働者の保護を強化するために労働関係法の改訂をはたらきかけています。経営者はアウトソウシングの大幅な規制緩和をもとめています。労働関係の弁護士は労使紛争の早期解決をすすめるために紛争解決までの手続きの改善を求めています。また経済のグローバリゼイションの観点から労働法をどのように改訂すべきか産業レベルでの論議が行われています。ILO87号(結社の自由)、98号(団体交渉権)は批准されていますが中核的なILO条約の適用が課題となっています。フィリピンでは労働関係法の策定までは得意なのですが実行はまた別問題なのです。

青年委員会

 国連は「青年」を15~24歳としていますが、フィリピンでは「国家建設における青年法」で15~30歳と定義しています。歴史的に高い出生率を記録してフィリピンは人口に占める若者の割合が高いといえます。労働人口に占める青年は平均24%です。就労人口に対す青年の割合は平均36%。若年者の多くは農業や林業に従事していますが低賃金で付帯給付などほとんどない典型的な分野です。若年女性はほとんどがサービス産業(販売やその他コミュニティー、社会サービスなど)に従事していています。青年とは限りませんが管理・監督職のポストについている女性の数は男性より多いです。労働組合としては次世代の組合リーダーを育成するために青年委員会をローカル・産別レベル・国レベルで設置してその活動強化に努めています。オルグ、デーセントワークやリーダーシップ、情報テクノロジーなどの青年訓練プログラムを推進しています。