2003年 フィリピンの労働事情

2003年9月10日 講演録

国際自由労連アジア・太平洋地域組織(ICFTU-APRO)推薦
ダリル ラピソラ アレガルベス

フィリピン労働組合会議(TUCP)加盟労働組合協会・青年委員会議長/TUCP青年委員会委員

 

国内の状況

 フィリピンでは8カ月後に大統領選挙が行われます。大統領選挙に向けてフィリピンの政党は、お互いに非難キャンペーンを始めています。選挙に加えて、失敗に終わりましたが先日クーデター騒ぎがありました。それに関連して国防大臣が辞任しました。そのような状況のために、フィリピンは現在一時的な不安定状況に陥っています。
 2003年4月に発表されました労働力調査報告によりますと、失業あるいは不完全雇用はどの指標を見ても減少しております。その理由は、海外に出稼ぎに出るフィリピン労働者の数が増えた事、及び一部の労働者が地下経済(これはインフォーマルな経済という意味で非合法という意味ではない)に仕事の場を移した人が増えている結果であります。
 フィリピンの労働者はグローバル化の影響を強く受けています。グローバルな競争の結果、閉鎖に追い込まれた企業もありますし、労働者をレイオフした企業もあります。また事業や人材を契約化してしまった企業もあります。このような状況の結果、それに影響を受けた労働者は、海外に仕事の場を求め、あるいは地下経済(インフォーマルな経済)に移っているわけであります。
 海外においては看護師、家事手伝い、建設労働者、教員等の需要がありますので、多くの労働者が海外に出かけています。その結果、国内では、それに代わる需要が増えています。医師や看護師が国内で減少していますので、国立病院の中には、同じ医師を2つの病院で働くようにスケジュールを組んだ病院もあります。
 外国で良い仕事を見い出せなかった人たちは、国内で自営業を営むことになります。サリサリという小さなバラエティーストアを住んでいる地域社会で始めた人もいます。また、他の零細小売業を営んだり、のみの市で物を売ったりする人たちも出てきています。
 フォーマルセクターで労働者を組織化する努力をTUCPは続けていますが、同時に、インフォーマルセクターでも組織化しなければいけない必要性をひしひしと感じています。その理由は、インフォーマルセクターの労働者が既に組織化されている労働者にとって一種の脅威になっているからです。それらの労働者が置かれている経済状況が極めて悪いために、既に組織化されている労働者の条件に比べて極めて低い契約条件、あるいは極めて低い賃金で仕事につかざるをえないからであります。
 このような状況を企業は悪用して労働者をチープレーバーとして雇うために、その結果として労働者の権利が侵害され搾取されているという状況があります。

TUCPの具体的な活動

 TUCPの収入を算出するためのプロジェクトの一環として、特にリストラを受けた組合員のために新しい事業を開始しました。私自身の組合である労働組合協会もその一環としまして、組合員のために起業に関するセミナーを開催したり、あるいは協同組合制度に関するセミナーを開催しました。その結果、現在1つの協同組合と1つの企業を設立することができました。
 この2つの事業プログラムの結果、リストラを受けた組合員、もう1つは建設業の労働者に対して雇用を生み出すことができました。また、加えて、労働組合としましては、奨学貸付金を組合員に提供して援助しています。
 これらのプログラムに加えて、TUCPとしては数十万人の労働者、組合員、その家族、そして地域社会に具体的な発展の道筋を示し、社会サービスを確実に届けるために、産業の世話人としての役割をこれからも果たしていく考えであります。
 次に、別のプログラムですけれども、家族計画、特に性生活に関する健康プログラム等についての啓発運動も強化していきたいと思っております。
 それから、スウェットショップといって極めて劣悪な労働条件で働かされている職場がありますが、反スウェットショップキャンペーンの活動も行っております。それにより、経済ゾーンや工場地域を選別して、それらの監視活動、検証活動等をこれからも更に強化していくつもりです。
 女性に関する活動に関しましては、これから訓練、教育、情報提供、生活支援関連プログラム等を行いまして、働く女性の地位を更に引き上げるために努力を続けていきたいと思います。
 青年に関しましては、同世代の若い教育者の養成を強化して、若者に性に関する健康についての啓発活動を行っていきたいと思っています。
 それらの様々な活動に加えまして、更にこれからの活動として考えているのは、次世代の労働組合指導者の養成、また青年指導者の養成です。現在の労働組合指導者は既に老齢化しています。このような教育養成活動を通して、現在の労働組合精神が将来も生き続けていくでしょうし、また、我々が住んでいる急速に変化する環境に労働組合が適応していくことができると考えます。
 私の考えでは、将来、労働組合の指導者となる人たちをこれから養成していく良い方法として、現在の労働組合の指導者の子弟を労働組合運動に招待して体験させることが必要ではないかと思います。
 私自身の経験ですけれども、労働者の生活において労働組合がいかに価値あるものであるかということを理解するようになり、価値を認めるようになったのは、私の両親が、私がまだ若いときに労働組合運動に入ることを許して、それを体験させてくれたからです。先生として一番適切なのは両親ではないでしょうか。彼らは、いい模範として、自分たちの経験から得た知恵を私たちに授けてくれるからです。多分、私たち自身も自分たちを組織化できるのではないでしょうか。