2000年 フィリピンの労働事情

2000年6月21日 講演録

ロメオ・エステバン・カストロ
EEI管理部門従業員組合委員長

 

現在の状況

 今日、400万人のフィリピン労働者が失業しています。政治的、経済的不安定さのために、国内外の投資家は投資を増やすことができません。石油製品の価格が上昇し続けているため、労働者の購買力は大きく低下しました。ペソの価値も、2カ月前の1ドル39~40ペソから、今週の42ペソ30センタボに下がりました。マスコミは、現政府の指導力の欠如を指摘し、今の状況については、政府の高潔度が大いに疑われています。その結果、フィリピンの状況が不安定になっているのだとみなされています。
 最初の2年間に政府を襲った幾つかの論争によって、現大統領の政権は相当弱体化しました。我が国経済も、現政権の政治的運命にならいました。国内株式市場も、銀行業も、為替相場でさえも不安定な状況にあります。これは主として、めまぐるしく変わる政府の
政策と身びいき、えこひいき、政治的任命による政治に原因があります。このような状況の行き着くところは、下落する経済と、弱体化した大統領政権によって、労働者とその家族たちの苦しみです。

経済状況

 1997~98年の通貨危機から他のアジア諸国の経済は回復しつつあります。国によっては、3%から5%の成長率を達成しているにもかかわらず、フィリピンの成長率は2%を超えていません。それどころか、今でも経済は下落しつつあります。政府は経済の成長見通しを宣言していますが、幾つかの政治状況を抱えている我が国は、マイナス成長率が見込まれています。
 もう一つの悩みの種は、政治的な爆発危険物で、社会的な取扱注意物質である石油産業です。石油産業が1997年に規制撤廃されて以来、石油価格は何回か値上げされました。規制撤廃したのは、より多くのプレイヤーにこの産業を開放しようというものだったのですが、シェル、ペトロン、及びカルテックスという外国資本の3大石油会社が引き続きこの産業を支配しています。いわば、カルテルのように振舞い、価格を思うままに決めています。投資家は、いまだフィリピンをよい投資先だと見ていますが、フィリピン南部で猛威を振るっている反乱など、幾つかの現在進行中の政治問題がありますので、そのような投14資意欲もそがれています。

労働状況

 平均的な6人家族は、食料だけでも、少なくとも425ペソ必要です。この中には、電気、ガス、水道代や教育費、交通費などは含まれていません。物価上昇の影響で、家庭では家計費を削減せざるを得ず、中でも保健医療、住居、及びレクリエーション費をカットしています。首都圏の最低賃金は、国内最高額に設定されています。223ペソ50センタボです。これは、ほとんどの一般労働者の基準賃金ですが、フィリピンの家族のニーズを満たしているとは言えません。
 失業率は非常な高止まりです。3,240万人の労働者のうち、400万人が今もまだ仕事を探しています。そのほかにも800万人が不完全就業の状態です。創り出される雇用は、ほとんどが契約労働であるため、海外移住が労働者の第1選択肢になっています。

組合の組織化

 組合の組織化は、相変わらず厳しい状態です。組織化可能な労働力は、1,100万人から1,500万人ですが、そのうち300万人しか、組合に組織化されていません。TUCPは、輸出加工区で組織化に向けて努力しています。TUCPは、1996年に全面的な組織化運動を開始して以来、キャビート、ダグーナ、スービック、及びバターン輸出加工区において、少なくとも41の組合を組織化しました。さらに、100組合が法的認知待ちの状態です。数年前には、輸出加工区は、組合オルグが手のつけられないようなところであると考えられていました。

賃金

 賃金水準は、地域によって異なります。フィリピンは、政治上16地域に分割されています。メトロマニラ、つまり首都圏の最低賃金は、最高額の223ペソ50センタボ、つまり米ドルで、5.32ドルに設定されています。低いほうの最低賃金では、130ペソから170ペソぐらいになっています。我が国が陥った経済的な困難、中でも1997年から98年にかけてのアジア金融危機のために、賃上げ要求も阻害されています。1989年に賃金の地域化が法制化されて以来、TUCPは、ちょうど連合の春闘のように、毎年賃上げ要求をしてきました。

政治状況

 現政権は、指導力を欠いているというのが、大方の見方です。ジョーゼフ・F・エストラーダ大統領の就任以来、政府は次から次へと論争につきまとわれてきました。就任後2年たって、大統領はえこひいきと身びいきの疑いを主な原因とする政治論争の的になっています。1998年の大統領の選挙運動を財政支援したと報じられている大統領に近い実業界の大立て者たちは、現在では、主要産業を堂々と支配しています。そのほとんどは、フィリピン華僑社会、フィリピンの中国人社会に属する人たちです。フィリピン航空、フォーチューンたばこ、アジア醸造所、及び、その他の巨大企業の所有者であり、大統領と親密な関係にあると言われるルシオ・タン氏は、前の国営フィリピン銀行株の過半数を所有しています。他の親密な関係者の中には、マルコスの親友として知られている、エドワルド・コンジュランコ、ダンテ・タン、その他の著名なマルコス関係者がいて、彼らもまた、権力に返り咲いています。
 現政権指導部は、身びいき、えこひいき以外にも、ずっとその無能ぶりを批判され続けています。現政府は、先見の明のなさと、それによる国政の失敗も非難されています。エストラーダ大統領の労働政策は、問題のあるもので、多くの不満足な点があります。マスコミに対する幾つかの声明の中で、エストラーダは組合と組合指導者を批判しました。彼は、組合運動が戦闘的過ぎると非難し、そうすることによって、外国人投資家たちを遠ざけてしまいました。大統領は、任期の初期のころに、いわゆる基幹産業における労働者のストライキを禁止する法案を支持しました。幾つかの労使紛争の件に関して、中でも、セブ州における港湾労働者のストライキについて、大統領は経営側を支持しました。TUCPの書記長であるエルネスト・F・ヘレラは、以前、与党の拡大を支援したのですが、政府との関係を絶ってしまいました。

労働戦線の展開と発展

 フィリピンの労働運動は、多数の小さな組織が存在するために、細分化されていることが特徴となってきました。最近、TUCPが音頭をとって、労働連帯運動(LaborSolidarityMovement)が発足しました。LSMと言います。このLSMは、組織労働者の80%を代表する、労働組織の連合体です。
 この連合体の中で、TUCPと組んでいるのは、次のような組織です。進歩労働同盟、労働諮問協議会、全国労働総連合、これはKMUから分裂した組織です。それからジープニ運転手連合及びその他の全国組織です。連合体はその基本理念声明の中でLSM、、は労働者に課せられた緊急課題に対する、労働者たちの回答であると述べています。
 この連合体は、労働者の統一された声として機能することを誓いました。また、グローバル化の悪影響と闘うこと、政府に対して労働者とその家族のために保護的機構を制度化するよう働きかけることを表明しました。
 LSMは、次のような5項目の運動計画を作成しました。

  • 第1、契約労働化に対する行動。つまり、労働限定契約、期間限定契約、派遣会社による雇用等々と闘う。
  • 第2、組合運動の防衛。つまり、労働者の団結権の強化。
  • 第3、すべての労働者に公正な賃金を。つまり、労働者の手取り賃金を改善するために、まっとうな賃金やその他の給付を獲得するために闘う。
  • 第4、社会的保護とセーフティーネット。つまり、労働者とその家族のための安全対策を獲得するため闘う。特に、訓練と再訓練、政府に医療資金、及び、子どもや女性労働者を保護するための諸機構の対策を求めて闘う。
  • 第5、立派な政府による統治。つまり、よりよい政治的リーダーシップの要求。身びいき、及び政治的任免権の乱用の中止要求。自己説明責任、及び透明性の要求。以上です。