2016年 ミャンマーの労働事情

2016年11月30日 講演録

ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)
ミョウ・チッ

ミャンマー鉄道労働組合連盟会長/ミンゲー客車・貨物車工場労働組合委員長

ティン・モウ・カイン
製造業労働組合連盟事務局長/サクラ衣料労働組合委員長

イェ・ウィン・トゥン
建設木材労働組合連盟財政担当/日本ダンボール労働組合財政担当

 

1.ミャンマーのナショナルセンター

 2011年に民主化を達成したミャンマーは、軍事独裁体制から民主主義への過渡期にある。その意味では、民族融和、少数民族の武装闘争など多くの問題がある中で、労働組合運動も一歩一歩前進している。2012年マウンマウン氏の帰国とともにミャンマー国内のFTUMの歴史は始まったと言えるが、2014年FTUMからCTUMへの名称変更を経て、2015年にはCTUMがナショナルセンターとして承認され、全登録労働組合1,227(6万人強)中CTUM加盟組合は627(4万人強)となっている。労働組合数がなかなか伸びない理由として、ミャンマーの労働組合が企業別(Basic)、産別(Township、州・地方、全国)、ナショナルセンターと5層になっており、対象人員の10%以上を組織しなければならないなど、複雑な要件が「労働組合法」で定められているからである。現在ミャンマーの組織率は0.2%である。
 ミャンマーの就業人口は3,300万人だが、実際に産業部門で働いている労働者数は554万人となっている。人口5,416万人中60%が自作農であり、その内10エーカー以下の土地の耕作権を所有している階層の人々は労働組合に加入できる。その為CTUM最大の勢力は農業労組である。

2.労働法の現状

 労働法は未だ形成中であり、労働者への保護が十分でない。16の法律が成立しており、現在国会で審議中のものが2件あるが、労働安全衛生に関わる法律は未だ制定されておらず、良好な労使関係が構築されているとは到底言えない。そうした中で短期契約や日雇い労働者が増大している。職場レベルには労使の協議機関があり、地域別に労働委員会に類似した組織もあるが、機能していない。2012年「社会福祉法」が制定されたが、対象となっているのは少数の労働者である。建設労働者、農業労働者、家事労働者、日雇い労働者は対象外となっている。「最低賃金法」が施行されたのは昨年だが、これもほとんど機能していない。紛争が起こると、まず工場レベルで労使の協議、地域労働局での協議、7つの州と7つの管区の紛争解決委員会での協議、中央労働委員会での協議、それでも解決しない場合裁判所に訴える形になる。しかし、しかし、中央労働委員会の決定に従わなかった場合、裁判で勝っても罰金は100万チャット(約10万円)と決められているため、使用者側は罰金を支払って中労委の決定に従わないことが多々ある。

3.労使紛争の事例

(A) 工場閉鎖、給料未払い
 コンクリートの枕木工場において、工場が閉鎖され、労働者97人が給与未払いのうえで解雇されたため、郡の労働局に提訴した。使用者側と協議を行い、2回目の協議で、①解雇した労働者全員を再雇用する、②前月分の給与を支払う、③賠償金を労働者に支払う、④当月分の仕事ができなかった日を出勤扱いにすることで合意し、組合側も会社の生産能力を高めるよう努力することを約束した。

(B) 非正規労働者の正規化
 客車及び貨物車工場で非正規労働者として働いていた152人の労働者は、勤続年数が3~4年に達しているため、正規労働者への転換を希望した。国営の工場であるため、この件に関して工場側と副大臣が懇談を行った際に、労組とも意見交換を行った。労組側は、①正規労働への転換、②労組としての工場の製造能力強化への支援等を訴えた。解決には時間を要したが、アウン・サン・スー・チー青函かとなり、正規化を勝ち取り、ミャンマー全体の鉄道で1,016人が正規労働者となった。

(C)運転手3名を「仕事をサボっている」という理由で解雇
 清涼飲料水の工場で3名の運転手が、勤務態度が悪いということで解雇された。組合側は、事前に注意する義務を怠っていたことを理由に、解雇予告手当と勤続年数に応じた補償金を支払うことを要求し、会社側と全面対立した。この事案は中央労働委員会まで進み、組合側の要求通り、①1か月分の解雇予告手当の支払い、②勤続年数に応じた補償金の支払いが命じられた。それにも関わらず、会社側は納得せず、裁判に移行することになると思われる。

(D)労働組合のリーダー2名の解雇
 労組リーダーのうち2名が、「労働規則を守って働かない」等を理由に解雇されたため、地域の労働局に訴えた。郡の労働局、管区の紛争解決委員会、さらに中央労働委員会でも再雇用をするようにとの指導が出たが、それでも会社側は再雇用に同意せず、裁判に訴えるという姿勢をとっていた。そのため、つい先日、改めてナショナルセンターのCTUMが会社側と交渉した結果、この2名は再雇用されることになったと聞いている。