2017年 マレーシアの労働事情

2017年5月9日 講演録

 日本の面積の約90%の国土に約3千万人強が暮らしている。その人口の6割がマレー系で占められ、他に華人系が3割、インド系が1割の国家である。日本を手本とする経済発展で一人当たりGDPは1万ドルを超え、高所得国への仲間入りに今一歩である。労組組織率は6%程度である。

マレーシア労働組合会議(MTUC)
サイフル バハリ ビン ザカリア

キヤノンオプト労働組合 書記長

 

1. 団体交渉を巡り膠着状態続く

 組合が現在抱える課題は、団体交渉を巡り紛争状態が続いていることである。交渉当初から会社側の対応に真実味がなく、早期の決着を望む組合側の要請に対し、会社側は真摯な姿勢をみせなかった。組合側は労使関係法第18条(1967年)に基づく労使紛争報告書を労使関係局長官に提出し、1年余りの調停手続きを行ってきたが、未だ解決には至っていない。現状労働仲裁裁判所からの審問命令が下されている。

2. 進む協調的な労使関係

 労使関係に上記のような課題はあるものの、日常においては協調的な関係が進展している。これは労使双方にとって働く意識を高めることが大切だという共通認識があるからである。安全衛生委員会、スポーツイベント委員会、地域奉仕責任(CSR)活動など、様々な委員会-ある種の経営委員会といってもよいか-に参加し、働く場の安心・安定に寄与している。

マレーシア労働組合会議(MTUC)
アジゾン ビン ユソフ

ダイキンマレーシア労働組合 書記長

 

1. 拡がる外国人労働者雇用への懸念

 外国人労働者の活用を好む会社に対し、組合は懸念を表明し善処を求めている。マレーシアでは外国人の直接雇用は許可されず、派遣の形態をとるため、組合員化もできず組合の庇護下に入れることもできない。それ以前に、外国人労働者は日々、月々に替わってしまうため、トレーニング効果が意味ないものとなっている。英語を話せない人も多い。そうした短期戦力活用ではなく、長く働き、スキルの向上も期待できる自国民雇用の推進を要請している。しかしなかなか解決の糸口がつかめず、個々労使の枠を超えていることから、上部団体の協力を求めている。

2. 企業労使関係は極めて良好に推移

 2006年に日系企業の進出が図られて以来、今日まで労使関係は良好に機能している。組合として労使一体感を醸成するよう努めてきており、その成果として、様々な委員会、例えば安全衛生委員会などの各種経営委員会への参加はもとより、年次ディナーパーティーや功績表彰などの会社行事の開催にも関与している。団体交渉についても極めて友好的(開始時期や事前準備の確認など日本的気配り)な中で進められている。

マレーシア労働組合会議(MTUC)
モハメド アミルディン ビン アブドラ ハミド

ペナン繊維労働者組合 書記長

 

1. 問題は外国人労働者と契約社員

 マレーシアの組合は、全国レベル、州レベルと少数の企業内組合からなっている。ペナン繊維労働組合は州単位の組合である。組合の活動は新規雇用者全員の組織化だが、外国人労働者や契約社員の雇用にシフトしており、組合員化が困難な状況である。しかも繊維産業は衰退途上にあり、定年退職者が多く、それをカバーする雇用がないことから、組合員数が減少しており危機意識を持っている。

2. ストやピケなし団体交渉が定着

 組合設立(1973年5月)以来、ストやピケなしの団体交渉を定着させてきた。この3年間をみても、組合員の解雇問題はなく、多くの課題を成功裏に解決に導いてきている。まさに友好的な労使関係がもたらす賜であろう。当然ながら組合としての知見(社内調査、女性委員会、健康と安全など)や交渉力(団体交渉、職場委員会などへの対応の基礎トレーニング)を養うため、毎年組合員用に3つのセミナーを開催している。このようにして良好で持続的な労使関係の維持に腐心することは、将来にわたる組合の存在を確かなものにすると確信している。