2010年 マレーシアの労働事情

2010年6月4日 講演録

マレーシア労働組合会議(MTUC)
モルガナスンドラム トレダス(Mr. Morganasundram Toredas)

マラヤ大学医療センター労働組合財務部長

 

1.労働事情(一般)

 マレーシアには、主な労働法として雇用法、労使関係法、労働組合法の3つがあるが、現在の労働情勢は労働者側にとってよい状況とはいえない。2008年2月、政府は労使関係法と労働組合法の改正を断行した。この改正は労働者にとって厳しく、労働組合の発展を抑制するものでもあったため、MTUCは強硬に反対した。
経済面では、マレーシアの物価、生活費はたいへん高く、この2年の間に約40%も上昇したにもかかわらず、労働者の賃金は同水準のままである。
 また、外国人労働者の問題がある。いわゆる専門職労働者の賃金が低いために、医者や看護師等が他国へ移民してしまうことが問題になっている。その代わりに、ミャンマー、インドネシア、インドなどから外国人労働者がマレーシアに来るが、なかなか定住しない。外国人労働者の賃金水準は非常に低く、マレーシアの労働者1人分で、外国人労働者を2人雇用できるという事情があり、企業はどちらかというと外国人を雇いたがる傾向にある。

2.労働組合が直面する課題

  1. 労働組合の結成と発展を厳格に規制する労働組合法が繰り返し行使されてきたこと。たとえば、労働組合の認定と団体交渉を行うための煩雑な手続き。
  2. 政府部門や民間部門において、現在58歳である定年を60歳に延長させること。58歳で定年になると、その後の所得が何もなく、ともに暮らすパートナーがいない場合にはとくに生活に困るので、MTUCは定年を60歳に延ばそうと努力している。

3.課題解決に向けた取り組み

  1. 人的資源省への覚書の提出
  2. 国会議員へのロビー活動
  3. 国際金属労働者連合、国際化学労働者組合、ILOなどへの報告

4.ナショナルセンターと政府との関係

 現在の関係は良好である。労働者に影響を及ぼす課題は、人的資源大臣との会合や、国の労働諮問会議(労働者代表、使用者代表、人的資源省で構成する三者会議)に提起されることが一般的である。

5.多国籍企業の進出と労使紛争の状況

 マレーシアで活動する多国籍企業のほとんどは電子産業に集中しており、日本、台湾、中国、米国の企業が主である。多国籍企業の中には企業内組合の結成を認めている会社もあるが、使用者の抵抗があるため組合結成は難しい。
 電子産業の労働者の全国組合をつくる問題を政府が絶えず提起してきたが、多国籍企業の抵抗は強い。政府は現在、電子産業の組合を全国組合ではなく、地域別に登録することで合意している。
 現在の景気低迷により、多国籍企業は事業を閉鎖し、より労働力の安い国に移っている。さらに悪いのは、企業が突然事業を停止し、労働者が相当の補償もなく解雇される場合である。現行法制では、企業が債権者に支払う全ての勘定を清算した後、はじめて労働者の賃金を清算することが可能になっている。MTUCは、労働者を債権者として分類する法改正を提案している。
  日系多国籍企業のキヤノンオプトマレーシアは、企業内組合が60%の労働者を代表していると政府が証明したにもかかわらず、組合の認定を拒否した。キャノンは高等裁判所に異議申し立てを行っており、この問題は今後、5年から10年は法廷で争われる可能性が高い。裁判所が決定を下すまで企業側は組合を認定する必要がなく、団体交渉を拒否することができる。キャノンの行動は明らかに2,000人の組合員の気持ちをくじくことを意図したものであり、2008年末までに、会社の思惑どおりほとんどの組合員は組合費の支払いをやめてしまった。