2000年 マレーシアの労働事情

2000年6月21日 講演録

ローレンス・ブン
サバ州医療サービス組合事務局長兼MTUCサバ州副委員長

 

 現在マレーシアで一番ホットな議論が行われている問題についてお話します。
 1999年5月1日、マレーシアの労働者は、MTUC設立50周年を祝いました。一連の成果をあげたにもかかわらず、私たちは新しい世紀を取り組むべき多くの課題を残したまま迎えねばならないことになりました。労働者の生活水準は、経済成長のペースに見合うほど上昇していません。最低基準を規定した労働法は、ここ20年間停滞状態です。20世紀最後の10年間の出来事は、最も憂慮すべきものでした。労働者は、何年もかかって団体交渉で勝ち取ってきたものがインフレで根こそぎなくなるのを目の当たりにしました。東アジアの経済危機は、何百万人もの失業者を生み、賃金カット、ボーナス削減、あるいは不払い、手取り賃金の急激な落ち込み、毎年の賃上げの停止などが行われました。
 現在MTUCは、いくつかの問題を解決するために鋭意努力しています。まず第1に、公益事業の民営化の問題です。政府が公共事業の民営化路線を継続する中、MTUCはそのような政府の動きに対し強く反対を続けています。MTUCは、ある種の公共事業、中でも医療の民営化によって低所得層の人々が最も苦しむと考えています。それは、低所得層と高所得層の格差が非常に大きいためです。MTUCは、市民に無料で医療を提供するのは政府の社会的責任であると確信しています。近年、医療のいわゆるプライマリーケアのコストが高騰していることは、我々も承知していますが、それには民営化しか解決法がないということではないと思います。
 次に、現在の労働法の修正について政府はこの問題を真剣に考えなければならないと思います。法律の一定の側面について、特に関連産業の労働者の参加による組合規模の拡大に現行法が制限を設けているという点について、検討する必要があります。
 第3は、労働者の解雇について政府は経済が回復したと言っていますが、まだいくつかの会社が労働者をレイオフしているという報告を受けています。MTUCは、政府に対し、再就職つなぎ基金の設立を呼びかけています。
 4番目は、公共部門における自己評価制度についてです。MTUCは、労働者の毎年の賃上げ額を決定するために使われているこのような制度を廃止するように求めています。この制度には、割り当て制が含まれているため、フラストレーションと不満を大いに生み出しています。実際に公共部門の労働者の大多数は、この制度に幻滅を感じています。

ボスコ・オーガスティン
ジョホール州繊維・衣料労働者組合事務局長兼MTUCジョホール州書記長

 

 残りの部分については、私の方からお話しいたします。
 現在、マレーシアの労働運動が要求している課題は、次のようなものがあります。最低賃金、母性保護、再就職つなぎ基金、保育センターです。最低賃金問題に関しては、MTUC会長を団長とする代表団がマレーシア首相と1998年8月に会談し、最低賃金を600リンギットとし、それを雇用法に組み入れて法制化することにより実施するよう再度主張しました。それに対して、首相は次のように答えました「600リンギットでは労働者にとって生活するのには十分な収入とはいえない。」首相は1カ月当たり1,200リンギットが妥当な額ではないかと提案しました。同時に、この案は、国内経済が改善しなければ実施できないとも述べました。
 今年4月にMTUCの総評議会が開かれ、首相提案の1,200リンギットは、現実的ではないという結論を出しました。そこで、委員会を設置し、最も妥当な最低賃金はどの程度かについて検討し、総評議会に勧告することにしました。今年の5月27日に、この委員会は総評議会に対して、最低賃金を月額900リンギットとするよう勧告し、MTUCと加盟組合は全国で運動を開始しました。
 最低賃金以外にも、先に挙げた4項目を運動目標に加えました。私たちは全国的な国民の支持を求めていく考えです。マレーシアの経営者連盟は、最低賃金、及びその他の政策に反対しています。彼らは、とにかくMTUCには賛成しません。現在の最低賃金は市場の動向で決まっています。最低賃金は、300から600リンギットの範囲内で、州によって違っています。
 再就職つなぎ基金については、政府がその基金を設立し、労働者が失業状態にある場合に支払うように求めています。当初政府はその基金の設立に賛成しましたが、人的資源省は、その実施に手間取っています。おそらくマレーシアの経営者連盟から圧力がかかっているのではないかと思われます。
 MTUCは、女性労働者がとる産休を現在の60日を90日にするよう政府に求めています。また、保育センターに関しては、マレーシアには、経営者が保育センターを提供しなければならないという法律はありません。多くの働く母親たちは、子どもをベビーシッターに託さなければなりません。その平均的費用は、子ども一人当たり1カ月150から200リンギットです。夫婦に3人子どもがいた場合、全員をベビーシッターに預けるとしたら、いくら生活費として残るかご想像いただけると思います。