2015年 ラオスの労働事情

2015年9月4日 講演録

ラオス労働組合連盟(LFTU)
ソンパイサイ・ケッタウォン

サワンナート県委員長

 

1.ラオスの労働情勢(全般)

  2013年 2014年 2015年(見通し)
実質GDP(%) 7~8% 7~8% 7~8%
物価上昇率(%) 3~5% 3~5% 3~5%
最低賃金 90ドル
(約1万1081円)/月
90ドル
(約1万1081円)/月
112ドル
(約1万3789円)/月
労使紛争件数 22 26 12
法定労働時間 8時間/日 5-6日/週 時間外割増率
150%(17-22時)
200%(22-6時)
休日割増率
300%

 ラオスは、タイ、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、中国と国境を接し、農業を主たる産業としている。雇用の70%はインフォーマル労働者で、30%がフォーマル労働者である。
 近年のラオス経済成長の背景として、ひとつは外国からの資本投資が拡大し、雇用の拡大が図られている。もう一点は観光業の発展であり、観光関連の雇用が拡大している。

2.ラオス労働組合連盟(LFTU)の役割

 第1に、工場労働者、労働者に対して計画的で規律ある仕事をし、政治に関心を持ち、科学的な知識や広い視野を備え労働者育成の教育を行っている。第2に、工場労働者、労働者、学生(大学生)の公正な利益を保護する代表である。第3に、政府組織や企業など各レベルでの調査・管理、経済社会を管理するモニタリング活動に参加することである。

3.ラオスの労働組合の組織

 ラオスの労働組合組織は4つのレベルで構成されている。まず、ラオス労働組合連盟(LFTU)の中央組織がある。次に、省、県、主要な都市に労働組合組織がある。その下に、大規模病院や大規模な学校などの組合組織が各関連する省の下にある。さらにその下に草の根レベル、事業所レベルの労働組合がある。

4.ラオス労働組合連盟の活動

 主な活動は3つある。まず広報・教育であり、これまで実施してきた活動は次のようなものである。法を守り、規律ある労働を実施するために職員や組合員、工場労働者等に対して思想、考え方の教育を行ってきた。また、労働者に対して法律相談室を開いている。現在、全国9県において法律相談を行うための広報室を設置中であり、その中で公式に設置しているのは、サワンナケート県、サイヤブリー県、カムムアン県、そして首都ビエンチャンの4つである。また、労働組合の業務、リーダーの役割、労働者の権益に関する研修や教育を全国の労働組合や労働者に対して実施している。テレビ、ラジオ、ポスター、Tシャツなどを利用して、労働者の権利に関する法令を普及させるために広報も行っている。
 二つ目は組織拡大に関する活動である。ラオスの労働組合は、各レベルの労働組合組織や関係部門とともに、公社や民間企業の工場における組織化と組合員の拡大を重視し、その調整を行っている。現在、都、県レベルの労働組合組織が18、ビエンチャンの36の省および機関に労働組合組織があり、郡の労働組合組織が148、事業所労働組合が3797、職場労働組合が6789となっている。組合員数は21万419人で、そのうち女性が9万4286人となっている。組織率は28%で、2011年から2014年の間に組合員が30%増加した。
 三つ目は労働法に関する業務である。LFTUは三者構成機関に参画し、関係部門との調整を行っている。労働関係の改善、労働協約の締結、個別の労働契約について全国の職場・工場等をモニタリングし、法令が守られているかどうかを調査してきた。496の工場・企業において労働協約を締結し、150件の法律相談、労働紛争の調停も行ってきた。紛争に関係した工場労働者は1613人となり、紛争に関与した労働者の賃金支払いを勧告し、その額は約104億キープ(約1億4560万円)になっている。労働安全に関する活動を357回実施し、参加者数は4万1249人にのぼる。
 LFTUは三者構成機関の構成者として、3回にわたり最低賃金の改定を提言してきた。現在、最低賃金は90万キープ(約1万2600円)である。
 工場労働者の保護と管理のために、7万人の工場労働者の登録を行った。今、ラオスでは企業間の労働移動が非常に多い。登録の目的は工場労働者の情報管理にある。工場労働者登録とは、例えば、ある縫製工場に500人の工場労働者がいたら、その500人に住所、氏名、写真入りの登録証がLFTU中央本部あるいは地方組織から発行され、勤務先が記載される。工場労働者が別の企業の工場に移動した場合に、この登録証があれば情報が登録証に残ることになる。登録された工場労働者は、労働争議やその他の問題が起きた時に労働組合の保護を受けられる。しかし、登録したから自動的に組合員に承認されるわけではない。ラオスでは組合員になるためには「品行方正な労働者であること」がひとつの条件となっている。率先して登録することにより、組合員になる資格が優先的に得られる。また、登録はラオス人労働者に限られ、外国からの出稼ぎ労働者は組合登録が認められない。
 サワンナケート県とチャンパーサック県には移動した労働者の受け入れセンターを設立した。国内の移動または外国(主としてタイ)での就労を希望する労働者のための相談センターである。また、タイで働いていた労働者がラオスに帰国した時の相談も行っている。

5.労働組合の直面する課題

 ラオスには、フォーマルセクターとインフォーマルセクターの労働者がある。フォーマルセクター労働者は全労働者の30%で、多くは工場、公社および民間企業で働いている。インフォーマルセクター労働者が約70%となっており、さまざまな仕事に就いている。教育レベルや法令に関する知識が低く、社会保険に入っていない。
 労働組合が直面している課題は、民間企業における労働組合の設立が思うように順調にはいかない点である。各省・機関、公営企業および民間企業では、労働組合の専従役員が置かれていない。地方から都市へ流入する労働者の数が増えているが、このような労働者は法律に関する知識もなく、使用者との間で労働契約を結んでいない。またラオスの労働者は転職が多く、労働者の権益擁護は労働組合にとり非常に難しい課題となっている。
 労働組合は、財政の基盤も弱い。国からの収入が中心である。企業や労働者が、企業収益や賃金から一定割合をLFTUに支払う制度も実現できていない。

6.課題解決のための取り組み

 課題の解決手段として、労働組合の設立が必要である。特に民間工場における労働組合の結成が課題だ。労働者に対して、労働組合の役割や権利義務についての広報や研修を増やす必要がある。公社や民間企業において、労働者や使用者に労働組合の設立を理解してもらうよう研修を行う。
 2015年に労働法が改正された。政府に対して、労働法と整合性のある『労働組合法』の改正を提言する。また、各省・機関、民間企業の労働組合に専従役員を置くよう提言したい。さらに、労働移動者の実態および情報収集のために、関係機関との調整を実施や労働者の知識・能力向上に向けて、多くの関係部門と協力関係を結び、技能・職業訓練を実施するための資金を集める取り組みを行う。

*1ドル=123.12円(2015年11月10日現在)
*1キープ=0.014円(2015年11月10日現在)