2003年 東ティモールの労働事情

2003年9月10日 講演録

東ティモール労働組合連合(TLTUC)
ホセ ダ コンセイサン ダ コスタ

東ティモール労働組合連合 会長

 

東ティモールから初の招聘

 東ティモールも招聘を受けたのは今回が初めてです。東ティモールの独立以来、労働組。合設立のためにいろいろ努力をしてきましたICFTU-APROと連絡を取りながら、東ティモールの労働組合をどうするかについて話し合いをしてきました。今回は、ICFTU-APROの強い推薦もありまして、東ティモール労働組合連合(TLTUC)の会長、非常に若く27歳の会長ですが、私が招待されることになったわけです。東ティモールの労働組合の情勢について、日本では初めて聞く話になるのではないかと思います。

国内の状況

 我が国における政治状況についてご存じの方も多いと思います。東ティモールは450年間に亘ってポルトガルの支配下にありました。その当時は、東ティモールの労働者は労働組合をつくる機会は全くありませんでした。当時の東ティモールの人々は自分たちの権利がどういうものであるかを理解もしていませんでした。当時の人々はたった2つのことを知っていただけです。つまり、給料を受け取る権利と働く義務だけでした。他の事は何にも知りませんでした。有給休暇とか病気休暇とか、そういう他のことは一切知りませんでした。
 ついでインドネシアの支配下に入りました。24年間インドネシアの統治が続きましたが基本的には状況は変わりませんでした。インドネシアの支配下にあった当時、インドネシアには労働組合がありましたけれども、政府の支配下にある労働組合でした。従って、労働組合運動に労働者はほとんど参加することはありませんでした。その理由は、労働運動に参加すると反政府運動とみなされたからです。
 1999年に東ティモールで国連主催で国民投票が行われ、その結果インドネシアから解放されました。独立を達成し初めて労働者の権利について考え始めました。労働者の権利を守ることについて考え始めたのです。
 国民投票が行われた後、間もなく様々な多国籍企業が東ティモールに入ってきました。多国籍企業は労働者の募集を始め、労働者は働き始めたのですけれども、非常に危険な労働条件、あるいは雇用契約がない、労働契約が結ばれない、労働者の権利が尊敬されない、守られない、団体交渉の機会もないという状況でした。
 私たち若い東ティモール人は、独立に活動家として多く関わったわけでありますけれども、まずは国を解放することに専念することが必要だと考えて活動しました。解放後は労働者を解放することも必要だと思うようになりました。経営者の圧力、圧迫、あるいは抑圧から解放する事が必要だと思うようになったのであります。
 1999年の終わに私たちは1つのNGOを成立しました。労働擁護研究所(Labor Advocacy Institute)といいますけれども、これは労働者の権利を擁護するための組織で、職場において争議が発生したときに、労働者側を擁護するためのものでありました。
 ところが、NGOではあまり労働者の権利や利益は達成できません。そこで私たちは、これは労働組合をつくらなければいけない、労働組合を作ればもっと力が強くなって、労働者の生活水準を上げるための闘いにもっと力を発揮できるのではないかと考えるようになりました。しかし労働者自身が、自分たちの労働者としての権利をあまり理解していないため、組織化は非常に難しい課題となりました。
 我々の能力も限られていたのですけれども、幾つかの職場の労働者と何回か会合を重ね、どうやったら組合が結成できるかについて話し合いを行いました。3カ月にわたる長い討議の末に、東ティモールの労働者は、自らの組織を結成し設立することが大切であるという結論に達しました。それによって労働者の権利を守り、家族の生活水準を引き上げようということになりました。
 2001年2月にようやくナショナルセンターを設立しました。それが東ティモール労働組合連合(TLTUC)です。我が国の言葉を使いまして、同じ組織のことをKSTLといっています。現在の加盟組合数は7つです。
 次に、経済状況でありますが、現在のところ我が国の政府はドナー国から提供された資金に依存している状況です。
 東ティモールには天然資源は幾つかあるのですけれども、それを開発するための能力も知識もないので開発できていない状況です。
 東ティモールの国民、特に労働者は非常に劣悪な状況で暮らしています。賃金は低く、全く仕事のない人もいます。全人口は70万79人です。その中で60%が労働力人口であります。その60%の内の20%は職に就いていますが、残りの40%は失業しています。40%の人が失業していますが、生き延びてはいます。なぜかと言うと農地を所有しておりまして、それを耕して、毎日の食べる食料は自分たちで作れるからです。
 次に、東ティモールの憲法は、労働者の権利を擁護するという点では非常に良い憲法であります。労働者の団結権、団体交渉権、スト権等はすべて保障されています。ロックアウトは禁止されています。
 私たちが直面している課題としては、先ほど申し上げました極めて悪い失業問題であります。もう1つの問題点は労働者が労働者の権利を理解していないということです。更に問題は、政府の政策が欠如していることです。その理由は、政府自身が労働条件とか、あるいは労働法によって労働者を守るということについて知識がないからです。政府がそういう状況ですので労働組合は大変厳しい状況にあります。
 しかし、労働組合としては何とか2者間、つまり労働者と政府、あるいは3者で様々な話し合いを行って何とか労働者のために状況を良くしよう、条件を良くしようと努力しています。それによって労働者及びその家族の生活水準を高めたいと思って、いろいろな対話の機会を持ちたいと思っています。
 次に、社会保障制度ですが、日本のような立派な社会保障制度はありません。失業保険もありませんし、労働者災害保障法もありません。労働者が災害に遭ったときに、それを保障するための特別な法制度はありません。つまり、政府の政策が足りない状況であります。それが我々にとっては一番大きな課題であると言えます。
 まだまだ道のりは遠く、しかも非常に厳しいものがありますが、前進するために労働組合の役員として仕事にコミットしていきたいと考えてます。