2015年 カンボジアの労働事情

2015年6月26日 講演録

ITUCカンボジア評議会(ITUC-CC)
カンボジア労働総連合(CLC) 副会長
エク・ソペッカデイ

 

1.カンボジアの労働情勢(全般)

 カンボジアでは、労働契約には期限の定めのない雇用契約と有期雇用契約がある。有期雇用契約の労働者の立場は非常に不安定である。
 政府は外国資本の導入を奨励し、さまざまな優遇策を提供している。例えば、外国資本の企業は5年間無税となっている。プラス面としては、カンボジア国内に投資する外国資本に対して融資が可能になる。一方、マイナス面としては、工場を操業後、5年たつ直前に、工場を閉鎖してしまうことである。その結果、労働者は保障も得られずに解雇される。

  2013年 2014年 2015年(見通し)
実質GDP(%) 7.6% 7.0% 7.8%  
物価上昇率(%) 2.9% 3.87% 1.02%  
最低賃金 80ドル/月
(縫製産業)
100ドル/月
(縫製産業)
128ドル/月(確定)
(縫製産業)  
労使紛争件数 13(裁判に至らない)
19(裁判に至る)
15(裁判に至らない)
22(裁判に至る)
   
法定労働時間 8時間/日 48時間/週 時間外/割増率
2時間迄/150%
休日/割増率
200%  

2.労働組合の直面する課題

 有期雇用契約が多く、労働者の組織化は困難を極めている。また、組合員になったことがわかると解雇される傾向が強いため、労使紛争が発生している。カンボジアでは労働組合を作るとき、政府登録をしなければならない。その際、政府は労働組合役員の犯罪歴を確認し、犯罪歴がある場合、登録が許可されない。さらに、労働組合活動ができるという証拠を示すため、労働組合活動の写真を提出するよう求められる。皮肉にも、これが許可前に労働組合活動を行った証拠となり、組合役員が拘束される。結局、労働組合を作らせないための手続きといえる。
 現在、使用者側からの提案で、労働組合の監督を強化する法案が出されている。この法案は、組合財政に関する監督と労働組合結成の要件を、これまでの「8人以上」から「従業員の20%以上」に変更しようとするものである。他にも、いったん労働組合が結成され、登録されても、何か違法な点が見つかれば、政府は労働組合を解散させる権限を持つことができるよう変更がなされる。

3.解決に向けた取組み

 現在、国際連携の下に、国内労働組合の指導者を集めて、カンボジア議会に対し、労働組合規制の強化に関する条文を削除するよう要請している。2015年6月1日に1回、8月3日にさらに1回、政府に要請書を提出する。

ITUCカンボジア評議会(ITUC-CC)
カンボジア労働組合連合(CCU) 会長補佐
ロン・パンニャ

 

1.カンボジアの労働情勢(全般)

 カンボジアは1992年に多党制を採用し、1997年には労働法が制定された。それと同時にアメリカから最恵国待遇を受けるようになり、アメリカに輸出する衣料品と靴の関税はゼロになった。その頃からカンボジアの労働運動が始まった(労働運動の草分け的存在といわれるチャエア・ビチュア氏は、2002年に殺害された)。

2.労働組合の直面する課題

 現在、カンボジアには衣料・縫製関係と靴製造関係の生産工場が600あり、従業員は58万人、事業収入は58億ドル(約7014億円)に上る。ILO報告によれば、バイヤーは39社にのぼる。
 労働者の直面している問題には、1)最低賃金、2)社会保障制度、3)短期雇用契約が挙げられる。多くの労働組合指導者が刑事訴訟の被告人にされるなど、組合役員に対する圧力が強まっている。
 最低賃金を決める際、月額128ドル(約1万5479円)が生計費として適当な額であるかを考える必要がある。法律上、時間外労働は1日2時間までと規定されているにもかかわらず、多くの労働者は、生計費を確保するため、1日4時間の時間外労働、つまり1日12時間労働を余儀なくされる。2013年末から2014年初にかけ、労働者が最低賃金の改善を要求した結果、28%の引き上げを獲得できた。ただし、最低賃金額の引き上げを要求すると、使用者は「ミャンマーに工場を移す」と脅してくるのが常だ。

3.解決に向けた取組み

 2年前の労働組合法案では、労働組合指導者に対する損害賠償や禁固刑が含まれるなど、労働組合に対する規制が非常に厳しいものであった。そこで、ナショナルセンターが協力して内容を検討し、労働組合側から提言を行った。政府からの回答はなかったが、2014年になって出された新法案では、禁固刑などが削除されたと聞いている。近々議会に上程されるが、労働組合には法案の情報が十分入ってこない。カンボジアの憲法では、労働組合結成の自由が保障されているから、労働組合を規制する法案の内容であるならば、撤回を求めていく。

ITUCカンボジア評議会(ITUC-CC)
カンボジア労働組合連盟(CCTU)
労働紛争調整担当執行委員
チェン・ネン

 

1.カンボジアの労働情勢(全般)

 カンボジアにおける労働条件は、2004年から改善されている。労働者の平均収入は、時間外労働(2時間分)、食費手当、通勤手当、住宅手当などを含めると、現在では月180(約2万1767円)~200ドル(約2万4186円)になる。
 CCTUは特定の政党に所属せず、政府と協議の場を持つよう努めている。執行委員の1人は最低賃金協議会のメンバーになっている。

2.労働組合の直面する課題

 カンボジアの法律は、各企業内で労使紛争を解決するよう定めている。解決できない場合、労働委員会に持ち込み、それでも解決できない場合、労働省仲裁委員会の仲裁を求めることができる。裁定が出ても解決に至らない場合、8日間の期間を待って、ストライキに入る申請を行うことができる。ストライキを行う自由はあるが、公益を害しない条件がある。現在多くの労働組合指導者が告訴されているが、ストライキに際して企業や公共の建物・財産を破壊したとする理由によるものである。
 インフォーマルセクター労働者は、労働法の対象外で、最低賃金も適用されない。短期雇用契約の労働者が多く、組織化が困難である。しかも、ナショナルセンターの乱立で、組合員の争奪戦が起きている。

3.解決に向けた取組み

 カンボジアは法治国家を目指して進んでいるので、労働組合法は必要である。例えば、プノンペン近郊の工場で2カ月間のストライキを指導した時、当局からの妨害はなかった。したがって、結社の自由を規制するような条文は削除、改正されるべきである。今後国会で論議する中で、労働組合に対する規制は緩和されるのではないかと見ている。