2015年スリランカの労働事情

2015年11月13日 講演録

スリランカ労働組合会議(CWC)
テイマラル・レッチャマン

CWC女性コーディネーター

 

1.労働事情全般

  2013年 2014年 2015年(見通し)
実質GDP(%) 約7% 約7% 約6.8%
物価上昇率(%) 6.9% 3.3% 1.7%
最低賃金
(業種によって異なる)
約3ドル/日 約3ドル/日 3ドル/日(プランテーション労働者)
労使紛争件数      
法定労働時間 9時間/日
昼休み1時間含む
48時間/週 時間外/割増率
適宜-通常日当
の150%
休日/割増率
適宜-通常日当の150%

 セイロン労働者会議(CWC)は、お茶とゴム産業のプランテーションで働く労働者を代表している。公的部門と民間部門の労働者は、政党とのつながりを持つさまざまな労働組合によって代表されている。お茶とゴム産業で働くプランテーション労働者は、18世紀にインド南部からイギリスの統治者によってスリランカに移送されて以来、お茶やゴムのプランテーションで働いている。

2.労働組合が直面する課題

 このようなプランテーション労働者は、住宅、社会保障、医療、教育、生活費の不足など、さまざまな問題に直面している。
 CWCは、組合闘争および政治的な力を通じて適切な行動をとり、住宅、教育、医療、生計費などの、賃金の改善を達成し、労働協約の中に盛り込んできた。
 CWCは、インド系の労働者を対象とした労働条例やスリランカおよびセイロンの『労使紛争法』を遵守しているため、インフォーマルセクター労働の問題は顕在化していない。インフォーマルセクター労働が問題になっているのは、建設業や家内労働などの分野においてのみ存在している。
 労働組合が現在直面している課題は、プランテーション労働者の賃金の改定問題である。直近の団体協約が、2015年3月31日に失効して以来、6回の労使交渉を行ってきたが、不調に終わっている。われわれは、政府に対して、住宅、医療、インフレ、生活水準の問題に加えて、このプランテーション労働者の賃金改定に関しても要請している。
 プランテーション産業の中には、若くて教育を受けた人もいる。しかし、彼らはお茶の産業以外で、より良い雇用の機会を求めており、これは組合と政府にとって、深刻な問題となっている。CWCは、このような若者に対して、教職、事務管理職、通訳、翻訳、自治体の行政官、その他のベンチャー企業などを含め、雇用の機会が得られるよう取り組んでいる。

スリランカ・ニダハス・セワカ・サンガマヤ(SLNSS)
モハンメド・チハン・シンハワンサ

ランカ製塩労働組合 書記兼SLNSS執行委員

 

1.労働事情全般

  2013年 2014年 2015年(見通し)
実質GDP(%) 7.3% 7.4% 6.5%(予想)
物価上昇率(%) 約7% 約3% 約2%
最低賃金 約60ドル~95ドル
/月額
約60ドル~95ドル
/月額
約60ドル~95ドル
/月額
労使紛争件数 正確な数は不明だが、
多数発生
   
法定労働時間 8時間/日
食事休憩除く
48時間/週 時間外/割増率
1.5 倍
休日/割増率
職場により異なる

 スリランカのインフォーマルセクター労働者は、組織化されていない。漁業・農業部門に従事している労働者は、地域をベースにしたアソシエーション(協会)という形での組織体はあるが、この組織は、完全に法的な保護を受けられていないため、実行力を有しない。この非正規雇用に関する問題は、政府によって十分に対応されていない。
 SLNSSは、農園、プランテーション部門、官公共部門、民間部門、半官半民部門などの労働者が加盟している。SLNSSは、約9万人の組合員を擁しており、スリランカで最も強固な組合である。スリランカの組織率は20%で、ナショナルセンターをはじめ労働組合は多数あり、政党の影響を強く受けている。

2.労働組合が直面している課題

 現在、労働組合が直面している課題は、[1]全国共通の最低賃金の導入、[2]民間部門での年金制度導入、[3]産休手当の均等水準の導入、[4]基本給に生活費を反映させる、[5]下請け業者を介した労働者の正規就労の実現、[6]労働者に共通の退職年齢制を導入、[7]若者雇用者向けのスキル開発訓練の確立、[8]職業スキルと教育訓練のマッチング、[9]多様な就労に応じて支給される給与等の平等性、[10]リビングウエッジの確立、[11]男女平等の確立、[12]組織率の向上――などである。

3.課題解決に向けた取り組み

 これらの問題に対して、以下のような取り組みを行っている。

  1. 政府に対して全国共通の最低賃金の導入を提案
    SLNSSの提案は、当時の政権によって議会を通過したが、現在もまだ施行されていない。
  2. 政府への適切な年金制度導入の実施の働きかけ
    SLNSSの提案した年金制度を政府は導入するが、政府が一部修正して提案した年金制度は欠陥があり、透明性が欠けていることもあり、幾つかの労働組合がこの提案に反対し、現在も棚上げされている。労働組合から提案した内容も追加して改正提案を再度導入するよう政府に働きかけている。
  3. 産休制度の格差を是正する法案の提出
  4. 政府による生計費手当の給付額の改正
    生計費手当の給付は、従来労働省から、定期的に必要な生活費や妥当な給付額について公布されたが、直近の生活費給付額は、今の政府によって発表されていない。そのため使用者側は、この手当を労働者に対して未払いの口実となっている。
  5. 下請け労働禁止を政府へ働きかける
    正規の労働者に、下請業者を介して労働者を不当に関与させること防止することに関して、数年前に、労働の諸問題を取り上げるスリランカ全国賃金委員会に対して、「正規労働なのに下請業者を介して不当に労働させることは違法である」とする提案を提出した。労働組合は、事業の中核をなす正規労働者が下請労働者として扱われることを非常に問題視している。この提案は、全国賃金委員会で扱われ、承認を受けるための法案が内閣に提出された。しかし、使用者側からの圧力があり、数年間、保留にされている。この法案が内閣によって早急に可決されるよう、働きかけを強めている。
  6. 退職年齢の統一
    公共部門で60歳、民間部門で55歳である退職年齢を同一化することも要求している。