2013年 スリランカの労働事情

2013年6月7日 講演録

セイロン労働者会議(CWC)
ラヴィンドラ・サンドラセケラ
Mr. Ravindra Sandorasekera

CWC広報部長

 

1.全般的な労働事情

 まず労働力人口は約850万人で、そのうち労働組合組織率は17~20%である。公務員は、労働協約を締結する権利を持たない。
 主要産業である茶園などのプランテーション労働者の賃金は、今年4月1日にまとまった団体交渉により、1日450ルピーに増額された。この450ルピーから、一定負担率の社会保険である従業員共済基金(EPF)と従業員信託基金(ETF)が支払われることになる。プランテーション労働者の場合は、提示されている労働日数の少なくとも75%以上働いた場合には、追加で1日当たり140ルピーが支払われる。さらに1日の補助手当という形で、30ルピーが支払われる。もともとの考え方としては、この1日30ルピーの追加支払いは利益をシェアするという考え方でスタートしたが、現在では利益の有無にかかわらず、一律1日補助手当として30ルピーが支給されている。
 プランテーション労働者は、超過労働時間ではなく、摘み取った茶の葉の重量によって、超過1キロ当たり20ルピーの超過労働手当が支払われる。
 CWCは、スリランカ国内の家政婦などの家庭内労働者を労働組合に組織化しようというとしている。地方から都市部に出てきて、豊かな中産階級などの家政婦として働くというケースである。このような労働者は、労働時間においても、あるいは賃金についても権利を主張することができない。そこで組織化して状況を変えたいと考えている。しかし、それぞれ勤めている家庭の事情があからさまになることを嫌がる者が多く、組織化は大変難しい仕事になっている。
 全国的に一律に設定された最低賃金は無い。例えば教職員、銀行など部門ごとに最低賃金が設定されている。国内経済の63%はインフォーマルセクターが占め、そのうち農業が86%を占めている。労働時間は一般的に8時間となっている。これは世界的に見ても、標準的な労働時間である。失業率は4.2%、うち男性の失業率は2.7%である。

2.労働組合が直面する課題

 労働組合が直面する大きな課題の一つが、労働組合がバラバラな分裂状態にあることである。組合員あるいは組合役員が、個人的、あるいは政治的な立場から、母体の組合を離れて、個々人で個々人のための労働組合をつくろうとする。この様な分裂により、もともとの労働組合も、また新たに結成された労働組合も加盟人数が少なくなり、その結果、交渉力が低下する事態となっている。
 1977年の総選挙で自由主義的な政府が政権に就き、経済の自由化が進み、関税などの措置が軽減され、外国からの投資が増えた。この結果、大きく台頭してきたのが、繊維産業などである。国内に輸出加工区(EPZ)が設立され、縫製工場や衣料関係の産業は、この自由貿易区域で操業を開始した。この自由貿易区域では、労働者が労働組合に入ることは自由であるが、労働組合の役員がその区域に入ること、そこで集会を行なうことは禁止されているなど結社の自由が大きく制限されている。
 第2の課題は移民労働者に係る問題である。スリランカ人が外国へ出稼ぎに行く場合、主に家政婦として中東に行く。一部、香港あるいは韓国に行く者もいるが、ほとんどは中東の国々に移住して働く。中東、特に湾岸諸国は、労働組合に対してあまりいい感情を持っていない国が多い。こうした中でCWCは、賃金などの労働条件を解決するために、中東に出稼ぎに行ったスリランカ人を組織化しようと考えているが、かなり困難である。一部のリベラルな国、例えばレバノンは、スリランカと覚書を交わしている。
 3番目の課題は、妊娠・出産など女性の保護に関する課題である。この問題に関して、法律上、公務部門と民間部門・プランテーション部門で働く女性労働者の間に大きな差別が存在する。さまざまな給付について、公務部門で働く女性は、民間部門・プランテーション部門で働く女性労働者よりも、大きな手当を受けている。

3.労働組合は課題をどのように解決しようとしているか

 これらの問題は、政府が労働省の下に設置している全国労働諮問協議会(NLAC)で審議されることになっている。NLACは三者構成の機関でCWCも委員を派遣している。さまざまな課題が審議されるが、進捗は著しく遅く、解決に至るまで時間を要しているのが現状である。

4.その他の課題

 そのほかの課題としては、アウトソーシングや契約労働が増えているために、労働そのものが不安定になっていることである。諸手当などを支払う必要のないアウトソーシングや契約労働者が増え、使用者にとっては好ましい状況となっている。
 最近の新たな現象で問題となっているのが、軍人の労働である。スリランカは30年近く内戦状態を経験したが、その内戦も2009年に終結し、そのため軍人を労働させるということである。政府が行なうプロジェクトにおいて、建設作業、保守作業などに軍人を従事させるケースが増えているが、これも新たな課題となっている。