2014年 パキスタンの労働事情

2014年9月5日 講演録

シャウカト アリ カーン アンジュム
市職員連合ハイバル・パクトゥンクワ州スワビ地区委員会書記長兼PWF全国教育担当
シェド スプタイン ムスタファ トリムジ
スタンダードチャータード銀行労働組合連合会長兼PWFパンジャプ地方執行委員
ファザル ラパーニ

ハザラホテル労働組合副事務局長
マクスード アフマト
ラホールRscord計測器労働組合書記長兼PWF中央パンジャブ地方副事務局長
アティフ フサイン
イスラマバード資本開発局労働組合副委員長兼PWF北パンジャブ地方副議長
ナヴィード アフマド
全パキスタンPWD労働組合ムルタン地域副事務局長兼PWF南パンジャプ地方議長

 

雇用の74%はインフォーマル部門、労働者の権利保護にも問題多い

 パキスタン労働者連盟(PWF)は、今から7年まえに3つのナショナルセンター(APFTU、PNFTU、APFOL)が統合して作られた組織である。組合員数は男性が約78 万人で、女性は3万5000人である。役員は30人、そのうち女性は3人。加盟組織は406組合である。パキスタンは4つの州と2つの連邦直轄地域があり、8つの行政区に分かれている。96の地方の中の80の地域にパキスタン労働者連盟(PWF)があり活動を展開している。国際的にはITUCとITUC-APに加盟している。これから2年後の2016年までの活動目標の達成に向け取り組んでいる。その中には、[1]各地域の組合員の意識を高めること[2]地方のレベルでは新しい労働組合をつくること[3]小さい労働組合を加入させること――などである。この行動計画は、14あり、その資金を集めるためのキャンペーンを行なっている。
 パキスタンの人口は1億8100万人(2010年6月末)で、労働力人口は5800万人を数える。経済の三つの主要部門は農業、工業、サービス部門で、サービス部門は国内総生産の53.8%を占める最大の産業である。農業部門は21.8%、工業部門は18.2%となっている。労働力人口の45%は農林水産業部門に従事し、13%は製造部門、6.6%は建設業、16.5%は卸売・小売部門、11.2%は地域・社会・対人サービス業で雇用されている。パキスタンでは、インフォーマル部門が雇用の74%を占めている。農業、製造業、漁業、建設、公務員部門、ホテルで、PWFの組織があり活動している。
 労働組合の権利について、パキスタンの政府はILO条約を締結しており、87号条約(結社の自由及び団結権保護条約)と98号条約(団結権及び団体交渉権条約)を批准している。しかし、携帯電話や建設会社でも国際的な会社が多いので、労働組合権は守られていない。パキスタン政府は、主として輸出加工区内の外資系企業に関連した経済の広範な部門に対して労働組合権の適用を除外している。また、農業や教育部門の労働者には労使関係法に基づく権利は適用されない。労使関係法も地域社会に重大な困難を起こす恐れや、または国益を損なう場合は、政府は時を選ばず、あらゆるストを禁じることができる。
 パキスタンのカラチの最低賃金は1万4000ルピー(約1万4728円)となった。3ヵ月前の政府の宣言で法律となっているが、まだ実現されていない。政府が3ヵ月前につくった法律を、再度、発表をしたため、多分、来週から実現されると思う。ILO 条約にもストライキの権利がある、これは労働者の権利だが、政府はひどいことをする。ストライキの参加者を解雇してしまう。最近、ある病院で組合員がストライキを行なったために、63人が解雇された。私たちは今裁判で闘っている。ストライキやデモは、警察に阻止されるのが常であると同時に、経営者に解雇の口実を与えることになる。
 パキスタンでは、児童労働が大きな問題である。この問題を私たちは、15年前から取り上げてきたが、まだ完全には解決できていない。1991年には、法律で14歳未満の子供の雇用を禁止し、危険職種においてはすべての子供の雇用を厳格に禁じている。しかし、1992年のILO報告では、パキスタンでは絨毯織り産業で働く子供の約半数が、栄養失調や病気が原因で、12歳に達する前に亡くなることが明らかになった。その後のILO報告 (1996)の推定によれば、330万人の児童が「経済活動に従事している」としている。児童労働を強いられている子供たちの職種としては、煉瓦造り、修理関係、レストラン等であり、7~8歳から働いている。ILOが進める児童労働撤廃に関する国際プログラム(IPEC)は、監視やリハビリテーションによる児童労働との闘いで、サッカーボールや外科用手術用品、カーペットの生産部門において一定の成功を収めてきた。こうした取り組みや、当局の取り締まり等により児童労働の数は減少しつつある。
 政府とPWFの関係は、いろんなレベルで、PWFの役割が政府の手助けをしていることもある。政府の会議にも参加して意見反映をしている。例えば、最近の1年半の間に、労働者に関係する法律は、いろいろ話し合ってから作られてきた。またPWFは中央だけでなく地方にも力を注いでいる。パキスタンは地方の政府が力を持っており、それを見て地域レベルで、地域の政府と話し合うことが多くなっている。地域レベルのPWFが活発に活動しているのが現状である。
 パキスタンはまだ発展していない国であり、毎日のように職場が無くなったり、職場が出来たりとかが続いている。またアフガニスタンは隣の国で、政治活動とか、国同士の関係とか、テロリズムの関係もあるが、毎日のように連動して動いている。現在は、アフガニスタンの労働組合と一緒に仕事を始め、ITUC-APや日本の労働組合活動を紹介している。お互い一生懸命働いている労働組合連盟が、いろんな問題を解決できるように力を合わせるということである。テロに対してもアフガニスタンの若者に、勉強させるための機会をつくっている。
 パキスタンでは停電の問題も大きい。エネルギー不足で電気が足りない。それから、社会保険の問題と年金の問題がある。製造業には社会保険があるが、それ以外一般的には社会保険がない。大体80%の人が社会保険、年金の保障がないのが実態である。医療関係も未整備であるし、国民に対して住居の問題も解決できていない。法律があっても守られていないという問題がある。公務員の仕事は事故があった場合に救助活動をするが、本人に何か事故があってもその補償はない。制度はあっても守られていないのが現実である。
 パキスタンでは毎日のように物価が上がり、食料品、ガソリン、ガス・電気、日用雑貨も急激に上昇しているため、労働者の生活は苦しい。このように物価の上昇が激しいのに医療手当と交通費は増額されないため、通勤手当の改定を要求した。その内容は、バイクを持っていない人にバイクを持たせ、自転車をバイクに買い替えることである。これは、清掃作業の人から事務関係の仕事まで全ての人を対象としている。
 パキスタンではイスラム教が国の宗教であり、メッカに巡礼に行くことは大切なことである。そこで来年から、公務員に対して代表者を巡礼に送ることを決めた。地域別と場所別で二人である。かかる費用(一人当たり50万円ぐらい)全部を政府が負担する。それ以外では消防署の部署で特別手当の話も進んでいる。
 労働者のデモが制限されていることについて、野党の後押しもあるため議会で解決できると考えている。われわれは政府に対して、我々の権利保護をきちんと解決できなかった場合は、我々の地域の組合員は、家の前でデモを行なうことも考えている。我々の組合員も、投票をする権利がある。パキスタンでは、2年毎とか、選挙がよく行なわれていることから、政治家が問題を解決できなかったときは、次は投票しないという選択も考えている。

*1パキスタンルピー=1.052円(2014年10月29日現在)