2008年 パキスタンの労働事情

2008年5月21日 講演録

パキスタン労働者連盟(PWF)
ズルフィカール・アーメッド

 

 パキスタンの人口は約1億6千万人、そのうち労働人口は約1千600万人。組織されている労働人口は約300~400万人。労働者が置かれている状況があまり良くない。労働人口の多くは農業に従事しているがほとんど組織化もされておらず、労働関係法もあまり適用されていない。繊維、衣料分野、中小企業、輸出指定ゾーンなどにおいても組織化率はないに等しい。経済特区になると組合結成それ自体が認められていない。
 雇用機会が少ないことや労働法の適切な実施がないために労働者が抱える問題が増加の一途をたどるばかりである。その根本になるのは実業家自身が政治家になっていることであろう。このような政治家は自分の利益を守るために反労働者的政策を増やしてばかりいる。また、低所得、契約労働、長時間労働、不安定な雇用などの問題も存在する。
 われわれは、これらの問題解決のためにほとんどすべてのフォーラムで声を上げている。現場レベルの組合も自ら問題解決のために取り組んでいる。しかし政府や政策決定機関に労働者代表がないために組合の努力が十分に成果をあげていない。
 ナショナルセンターは問題解決のために適切な影響力を行使しているが、政府、大臣、官僚や行政に労働者問題の専門家があまりいないため、問題解決になっていない。政策に一貫性もなく、新政権が誕生するたびに政策が覆される。また政府に労働者の代表がいないために、政府と労働組織が良い関係にあっても、労働者の福祉のために十分な措置が取られていない。
 わが国において、多国籍企業だけが労働者や組合が満足できる状況がある。それはおそらく多国籍企業の経営側はできるだけ自国のシステム、職場環境、労働条件などを地元企業にも導入しようとするからだろう。多国籍企業はしっかりと労働法を守ることを原則としている。それに多国籍企業では給料水準や福利厚生も地元企業より高いレベルである。 パキスタン全体では、農業産業が経済を支えている。全体労働者のうち労働組合が組織されているのは4~5%程度。労働条件も良いとはいえない。貧困者層の生活をどのように改善していくのかが課題である。
 雇用問題については、非正規、短期間労働者が増え、不安定労働者が目立っている。政府は、ILO条項すべて批准、国内労働法も多く制定していると言っているが、それらが実際に適応されていないのが実態で、われわれは本当に多くの問題に直面している。この課題に取り組む対策は、ナショナルセンターの役割として労働者、一般生活者との意見交換から政策制度要求活動として、政府をゆり動かす運動をしなければならない。
 また、インフレ問題についてもその原因はさまざまな要素が含まれている。パキスタン独特の問題は国境が厳格に管理されておらず近隣国は、食糧事情の厳しい地域のため、食糧を豊富に生産するわが国は、輸出国であるが密輸が横行し、国内食糧が不足、インフレにつながっている面もある。
 非正規労働者の問題は、日本と少し違う型の問題がある。それは、新たな非正規労働者が拡大したのではなく、最初から正規労働者として働いている労働者が実は、雇用記録が全くないまま、そのまま20~30年間働いている。その結果、医療保険、住居手当、退職金といった正規労働者に与えられる条件を一切受けていない層が存在することである。これらを改善しようとわれわれは政府に企業側に迫っている。

パキスタン労働者連盟(PWF)
サラ ウッディーン

 

 パキスタン政府の重要な産業の企業が民営化されようとしている。民営化、人員整理などによって、労働者が職を奪われようとしている。労働者の組織化の自由が制限されようとしている。これはILOの87-98条約に違反である。
 パキスタン労働者が直面する問題は、インフレ問題、特に食糧のインフレが激しい状況である。したがって、一般労働者の雇用、経済動向は悪い。仕事を求めても十分な雇用機会がないうえに、機会があっても契約社員、期間労働という不安定雇用の場のみ。職場においては、男女差別の問題や女性が仕事と家庭の両立を図るための施策が乏しい。このような課題が失業者を多く招き、貧困層も増える。収入を得るためには、親が子供にも働かせる。まさしく児童労働である。これら多くの解決に対して、PWFレベルでの取り組みは、労働者自身が自分の問題という認識を深めるための教育プログラムの設定、集会やデモの実施、そして労働者の意識を高める活動と共に政府へ改善を求める活動を議員と意見交換をしながら行っている。
 パキスタンでは、選挙が終わり、新政権が誕生したばかりである。PWFは、選挙中さまざまな政党に労働者の権利を守るために実施してほしい政策マニフェストを提出した結果、われわれの要求項目に一番多く同意してくれたのはPPP(パキスタン人民党・第一)でした。ペナジールが暗殺された日、実は、集会後PWFのリーダーと会談を予定していた。新政権のPPPは、われわれの要求項目を受け入れることに合意し、実現すべき最低賃金の月6,000ルピーとIRO2002(労働組合の結成・加入権を付与する条例)の条件見直し(理由なしに解雇できる)の改正を実現する途中でした。
 パキスタンは、現地の治安が乱れているが、政治的には大きな混乱はないと思っている。
 PWF、組合レベルで教育プログラムを展開している。労働組合の組織力を高めるためには、組合員には、諸問題に対する認識を深めてもらうことが必要である。
 そのためにポスターなどの刊行物を配布し、集会を開くときにはみんなに参加を促すためにキャンペーンなども行っている。職場環境を良くするために、特にOSHも関連して労働者自身がどのような取り組みができるかを教えるために教育プログラムも行っている。限られた予算で、できる限りの取り組みをこの分野でも行っている。