2002年 パキスタンの労働事情

2002年10月2日 講演録

全パキスタン労働総同盟(APFOL)
ジャハンゼブ カーン

全パキスタン労働総同盟 NWFP州支部会長

 

国内の状況

 パキスタンは国土面積が79万6,095平方メートルで、人口は約1億4,000万人です。現在、軍が政権を握っていて、大統領はパルウェーズ・ムシャラフ参謀総長です。現在の憲法は停止されていますが、本年10月12日までに文民政権復帰という最高裁の決定に従って、国民議会選挙が2002年10月12日に行なわれることになっています。
 90年代後半には、労働組合運動は比較的強力で、国内政治にも重要な役割を果たしました。しかし現在は、政治的不安定と軍事政権の下で、労働組合運動はみずからの存続のため、そして労働者と労働組合の権利を最大限確保していくために闘わざるをえない状況にあります。多くの民間部門、団体、そして農業部門、インフォーマルセクターで労働組合の活動が認められていません。
 労使関係に関しての主要な法律は、1947年の労働争議法に代わって制定された1969年の法律です。労働組合の結成、登録は、この法律によって認められましたが、これらの権利はいまだ多くの制約を受けています。法律では労働者は事業所あるいは支部に労働組合を結成することができるが、労働組合は市または地方自治体、つまり自治体労働組合登録所の認可を受けなければならないと規定しています。それに、組合員が複数の自治体にまたがる場合には、中央政府、つまり労使関係委員会に登録し、その認可を受けなければならないと定めています。認可された企業別組合は、産業別組合に加盟することは可能です。企業別および産業別組合は、ナショナルセンターに加盟することもできます。
 パキスタンでは、認可を受けた組合の数は徐々に増加してきています。80年代後半に6,800だった組合の数は、2000年度に7,318となり、メンバーの数は120万人に達しています。しかし、認可された組合の一部しか労働組合活動にかかわっていなく、実際に活動している労働組合の数は限られてています。したがって、2000年度に団体交渉権を認められた労働組合の数は1,833にすぎず、それらの代表する組合員の数は70万5,000人のみです。

APFOLの活動状況

 APFOLは1965年に結成されました。設立以来、さまざまな努力を重ねた結果、APFOLは多くの未組織労働者の組織化に成功してきました。組合結成の権利は与えられていても行政、法律その他の制約により組織化されなかった労働者の組織化を成し遂げました。APFOLが果たした役割や活動は、パキスタンの労働者のみならず政府つまり労働省、また国際的にもILOやICFTU、FES、JILAFなどからも高く評価されています。APFOLは民主的に機能しています。
 APFOLには352の単位組合、または連合体が加盟していて、29万1,575人の労働者を代表しています。この352の組合のうち、332の組合は団体交渉権を認められていますが、残りの20はその権利がありません。その原因は、資金不足や人材不足のような問題があるからです。これらの制約があるため、APFOLは貧しい階級の労働者のため、十分な活動ができないでいるという面もあります。
 APFOLはICFTU、デンマークLO-FTF、またJILAFなどから資金提供を受け、労働者教育活動や労働組合権擁護活動などを行っています。JILAFの支援で行っている活動は、一般労働者教育、家族計画、そして安全衛生教育が中心です。APFOLは200人以上の安全衛生トレーナーを養成してきました。これらのトレーナーは、教育プログラムを実施するための基本的な能力を身につけています。これらの人材は、APFOLのみならずAPFTUやPNFTUなど他のナショナルセンターがJILAFの協力で行なう教育訓練の際、パキスタン内外で活躍しています。
 これらの経験に基づいて、鉱山分野で働く労働者に対しても、安全衛生プログラムを導入しました。そして、指導官は、鉱山分野で働く労働者向けの安全衛生訓練のマニュアルも作成しました。この分野でもJILAFの協力が得られれば、有意義で興味深い成果が得られると思います。
 最後に我々の努力の結果、先日政府が発表した政策で、農村部門で働く労働者がちゃんとしたフォーマルセクターで働く労働者として認められました。先月、9月20日に発表された新しい労働政策には、労働者のためにたくさんの情報を引き出しました。これらがもうじき法律の形で具現化すると思います。

全パキスタン労働組合連盟(APFTU)
ターヒル アジーム

ワプダ水力発電中央労働組合 バルチスタン州支部副事務局長

 

APFTUの状況

 パキスタンの各ナショナルセンターは、それぞれ独自のプログラムを持ち、それぞれの活動家を通じてプログラムの実施に当たっています。貧しい人々に対する教育、そして孤児に対する教育プログラムなども行っています。未亡人、つまり配偶者を亡くした女性に対するプログラムも実施しています。パキスタンの労働組合はJILAFとも長い安定した関係を維持してきました。
 JILAFは、パキスタンのいろいろなところで教育プログラムを実施しています。先月、2つのプログラムがJILAFの協力で実施されました。一つは職場の安全に関するプログラムです。もう一つは鉱山分野で働く労働者たちの広域福祉に関するプログラムです。ナショナルセンターがパキスタン各地でコンピュータートレーニングセンターを設けていて、子どもたちに無料で教育プログラムを実施しています。
 国の政治経済情勢に関しては、ジャグディシュさんが詳しく述べましたので、私はパキスタンの文化について少し触れたいと思います。パキスタンは4つの州から成り立っています。パキスタンは1947年に独立して誕生しました。季節が4つに分かれ、山、平野、砂漠、海と地形も多様です。基本的に農業国家です。栽培される穀物、野菜、果物などの農産物は、世界各国に輸出されています。歴史的な観光名所も数多くあります。国民は勤勉で心が穏やかです。鉄鉱石、天然ガス、石油をはじめ、多くの天然資源に恵まれていて、山地には滝や温泉があります。
 もうじき総選挙が実施される予定です、この研修を終えて帰国したころに選挙結果が発表されていると思います。誠実な人たちが選ばれ、安定したよい政権が誕生することを願っています。きっと状況がよくなっていると思います。
 パキスタンの労働組合運動はかなり自由に行われています。労働組合リーダーに対する教育活動を通じて、運動に質的な変化も見られます。

パキスタン全国労働組合連盟(PNFTU)
ムスタグ アーマッド カドリ

パキスタン国営テレビ労働組合 事務局長

 

PNFTUの状況

 PNFTUは、メンバーが20万人で、90の単位労働組合が所属しています。執行委員の数は80人で、そのうちの6人が女性です。4つの州それぞれに州支部を置いています。首都のイスラマバードにも事務所を置いています。国際レベルでは、ICFTUに加盟し、またPNFTUの代表がILOに深く関わっています。
 パキスタンの情勢に関してですが、先ず政治状況について申し上げます。パキスタンは現在、軍事政権下にあります。しかし、軍事政権は、2002年10月10日に国会議員、地方議員総選挙を実施すると公表しています。選挙に立候補する者は大学卒でなければならないという条件をつけています。選挙制度とその実施方法には、幾つかの改革も行われました。約75の政党が、他の政党と連立して、または独自で選挙に参加するため、準備を進めています。PNFTUも、国会そして地方議会に労働者の十分な代表を確保すべく、大統領に対して申し入れを行ないました。申し入れの内容については、そのコピーを既にJILAFに渡してあります。
 社会経済情勢について、IMFや世界銀行の介入により、そして指図の下、経済はむしろ破綻しています。介入の結果、数多くの事業所、商業施設が閉鎖に追い込まれ、また多国籍企業との合併に追い込まれました。数百人、数千人もの労働者は事業の整理縮小などの理由で職場から追い出されています。現在も多くの企業が、コンサルタントを介して、少々の補償の見返りに、労働者に希望退職を促している状況です。失業は危険なレベルまで増加しています。その結果、労働組合は多くのメンバーを失ってしまいました。また、失業や厳しい経済状態のため、多くの人々のモラルの低下の問題も出てきています。

PNFTUの活動方針

 2002年4月20日に、PNFTUのリーダーは、関係閣僚とゆ会談し、新しい労働政策を要求する以下の要求事項を手渡しました。内容は、先ず労働者をいかなる搾取からも守るために闘うこと。労働者の経済、社会、職業的利害を守ること。労働組合活動または効果的な団体交渉の権利を守ること。国際機関にパキスタン労働者の代表を確保すること。国内の労働者間の連帯を強めるために努力すること。労働者に国内、海外の経済情勢、また労働者の労働条件に関する情報を組合に提供すること。
 上記の目的を達成するための効果的なキャンペーンについて、具体的にどのように進めるべきかという決定を(2002年12月14日予、定)年2回行われる17回目の総会で行うことになっている。