2001年 パキスタンの労働事情

2001年5月30日 講演録

全パキスタン労働総同盟(APFOL)10
スルタンハムマッドカーン

全パキスタン労働総同盟バロチスタン地方組織支部 事務局長

 

社会状況

 パキスタンの最高裁判所の判事が全員一致で1999年10月12日に、軍によるクーデターを正当と認め、軍事政権に民主主義の復活のために3年間の猶余期間を与えました。また、最高裁判所は軍事政権に憲法に必要な改正を行う権限も認めました。軍事政権は最高裁判所のこの決定を受け入れています。
 軍事政権の声明によると、ムハンマド・ナワズ・シャリフ前首相は、政府との合意のもとで家族と共に10年間サウジアラビアに追放されました。他方、最高裁判所は、ベナジール・ブットとその夫を汚職事件で有罪と認めた判決を無効にする決定を下しています。この決定によって、ベナジール・ブットには海外亡命から帰国する道が開かれたと思われます。
 しかし、軍事政権は公に政治活動を行うことを禁じています。軍事政権の権限移譲計画に基づいて、多くの地域に町や郡レベルで段階的に選挙が行われています。ここで選ばれる議員は2001年4月初めから任務に着任します。この選挙に女性は33%の議席を割り当てられています。それに労働者や、農民も議席を割り当てられています。
 ペルベズ・ムシャラフ参謀長はパキスタンに民主主義や、民間組織が栄える社会構造を築きたいとの意思を表明しています。2001年4月初めに、マスコミのインタビューで参謀長が「傲慢で生意気に聞こえるかもしれないが、私がこの国の生存と安定に責任を担っているように思う。だから私は引退できない。政権も2002年に私が大統領になることに関して、あらゆる側面から検討を行っている」と述べていました。
 軍事政権は腐敗をなくすため、また仕事の効率を高め、行政機能を改善するために、地域レベルでさまざまな政府機関に軍の監視チームを派遣し、行政機関に対してチェックを行っています。新たに設けられた責任追及裁判において、200人以上もの政治家、実業家、ビジネスマン、また幹部らが腐敗容疑事件で有罪と認定されています。そしてこのような腐敗事件の起訴が増えていることから、さらに責任追及裁判が設けられています。
 核所有国になったパキスタン、そしてインドに対して、相互の紛争やカシミール問題を平和的に解決するよう、国際的圧力が高まっています。この圧力の結果、多少前向きな動きの兆しが見えてきました。国境線での小競り合いが2000年12月から止まった状況になっています。

経済状況

 1999年から2000年のパキスタンの経済は緩やかに回復し、GDPが96年から99年の3年間の平均3.1%に対し、4.8%に伸びました。2001年の当初のGDPの成長の目標は4.5%で、農業部門は2.6%と、製造業は6.2%と設けられました。しかし深刻な干ばつのために、農業部門での成長の見通しはあまり明るいとは言えません。1999年、2000年に比べ、主要作物である稲、麦、サトウキビの生産が減少しています。綿だけが例外で目標の数字を上回りましたが、それでも過去に比べると生産量が減っています。
 今年度の経済成長は今のところ予想どおりの結果を示しています。明るい側面は税金の徴収率が目標の95%に達したことや、諸外国に住むパキスタン人移民からの送金が増加したことです。また、インフレが予想より下回っていること。そして輸出による収入が増え、目標にかなり近づく見込みであることなどです。しかしながら、反面、干ばつとかんがい施設の不足のため農業部門の成長は影響を受ける見通しとなっています。

労働情勢

 パキスタンの労働事情に前向きな変化が見られました。労働法の簡素化、合理化、そして体系化を図るために設けられた委員会がそのレポートをまとめる作業を終えました。委員会は過剰にある現行の60以上の法律のかわりに6つの法律を提言しています。政府は委員会のこの提言を受け入れ、現在法案の作成が進められています。
 パキスタンの児童労働を撤廃するために、政府は国内及び国際機関、また労働者や経営者の代表と協議して、行動計画をまとめています。政府が強制労働者や、その家族の社会復帰を図るために、1,000万ルピーの予算を割り当て、強制労働問題の根絶を目指しています。
 政府が新しい労働政策を導入する決意も表明しています。その政策には労働者の人権の保護や、職場での労働条件の改善を通して、安全衛生の促進、そして国内法規をILOの条約に適合させることや、実施機関の効率を高めることを目指しています。1997年に廃止された労働の日、勤労の日の休日も2001年から復活されました。
 政府が労働者、経営者の代表やNGO団体、政府の幹部と協議して、男女均等報酬や、最悪な形態の児童労働に関するILO条約を批准する意思を表明しました。政府が早期にILOのこの2つの条約に批准することが望まれます。

APFOLの行動計画

 児童労働や強制労働の廃止。教育プログラムを通じて労働者の人権や責任に対する意識を高めること。現行の労働法の効果的な実施、そして労働法制の運営の改善。労働法の適用分野の拡大と新たな労働者グループをこの範囲に組み入れること。未組織労働者の組織化。上記を達成するためのキャンペーンの内容は次のとおりです。
 APFOLは児童労働や強制労働問題に関する調査と利害関係の特定を行っています。社会団体と協力しながら児童労働、強制労働の廃絶と社会復帰に向けて役割を果たしています。APFOLはレンガ工場で働く児童労働者に対して、教育プログラムを実施しています。
 JILAFとデンマークLO-FTF等の協力で大規模な教育プログラムが実施されています。プログラムのもとに労働者教育、OA設置、家族計画、教育担当者育成、そして労働者一般教育の活動が行われています。労働者問題に焦点をあてるために、政府に対して定期的に申し入れや手紙などが発せられています。APFOLはすべての生産者団体の労働者を代表しています。

パキスタン労働組合連盟(APFTU)
ムハマッドアユーブ

パキスタンワプダ水電力中央労働組合地域委員長

 

APFTUの現況

 APFTUは独立かつ民主的な組合の総同盟であり、62万人の労働者のメンバーを、さまざまな産業別、企業別の組合を通して組織しています。APFTUは公的部門と民間部門両方、すなわち医療、エンジニアリング、通信、衣料、飲食、石油、公務員、印刷、交通、農業、保険、銀行などの分野で働く労働者を組織しています。
 アラーの神のおかげでAPFTUは国内で工業都市、首都や州など、合計35カ所に事務所を設けられました。

APFTUの今年の行動計画

 児童労働の廃止、組合メンバーの動機づけ、工場レベルの労働者の動員と、組合とその諸機関の強化、また世代間のギャップを埋めることも目指されています。
 APFTUは、民営化、事業の整理縮小、人員整理、失業、契約労働問題や他の緊急な問題と取り組んでいます。

主な活動

 APFTUはいかなる政治政党ともかかわりなく、労働者一般や虐げられた人々の福祉のために活動を行っている組織です。
 APFTUは労働者の組織化を促すためにさまざまな形で支援を行っています。所属の組合の団体交渉や、マネジメント側との紛争の際、さまざまな支援やアドバイスを行っています。そして労働者のために、福祉活動、つまり社会保障、住宅、衛生、安全、生活水準の向上のためにも努めています。APFTUは福祉活動の一環としてセミナー、会議、そしてトレーニングプログラムも実施しています。
 APFTUはパキスタンにおいて社会構成、産業界の民主化、労働者の尊厳の保護、また男女平等の実現を目指しています。労働者の能力開発に力を入れることによって、国の人的資源の十分な活用、雇用の権利の確保を目指しています。また同じように、能力開発を通じて失業問題や、潜在失業の解決と、雇用機会増進と労働者の自主自立を目指しています。
 APFTUは児童労働の廃止と女性の地位向上、また組合活動を含め、あらゆる分野における女性の社会参画も支援しています。このほか、APFTUは身体障害者が自尊心を持って暮らせるために職業機会を増やし、それを通じて身体障害者の社会参加と自立を促しています。
 APFTUはインドとパキスタンが統一されていた時代に最も指導的立場にあったバシール・ムハムッド・カーン・バクティアルによって設立されました。そして現在、クルシド・アーメッドに率いられています。クルシド・アーメッドは35年前からILO理事会のメンバーも務めています。
 APFTUはもちろんほかのナショナルセンター、例えばAPFOL等も緊密な協力関係にあって、労働者の相互理解、友好関係、交流を深めるために協力し合っています。