2011年 ネパールの労働事情

2011年9月9日 講演録

ネパール労働組合総連盟(GEFONT)
マドゥ・スダン・カティワダ

 

1.労働事情(全般)

 2年前の統計になりますが、ネパールでは、1,177万9,000人が就労しており、このうち半数以上の53%が女性労働者である。労働力人口の大多数は、村落地域に住み、都市部の労働者の約56%が男性で占められている。つまり、村落地域では女性の労働人口比率が高くなっている。
 全労働者のうち月例ベースで賃金収入を得ているのは46%にすぎない。それ以外の労働者は、出来高払い、あるいは週給、日給、時給で収入を得ている。
 労働力全体のおよそ17%の199万1,000人が賃金を得る仕事に従事している。そのうちの約80%以上が民間部門で働いている。
 労働者のおよそ24%は、現金ではなく現物支給をされている。ネパールの場合、穀物で支給されることが多い。また、正規労働者が受けている有給休暇、年金、退職金、教育・研修、医療、住宅等に関する様々な手当を、非正規労働者は受けていない。その他の問題として、採用通知書を発行しないこと、正社員採用をしないこと、サービス労働を課されること、解雇がある。
 労働者の平均月収は、統計上この10年間で、2,143ルピーから5,117ルピーへと2倍以上に伸びている。本年は、新たに統計調査をする年に当たり、平均月収を6,150ルピーにまで引き上がるのではないかという話にはなっているが、最終的な数値はまだ出ていない。
 農業従事者に関しましては、最低賃金が150ルピーとなっている。これは2年前の数字で、最低賃金を本年から226ルピーに引き上げようとしているが、まだ実施されていない。
 また、2年前の統計によるとネパールにおいては、一度も就職したことのない失業者が8万1,000人おり、職を失った失業者は17万2,000人いる。20歳から29歳までの年齢層のうち、8%以上の人が半無職状態にある。
 児童労働の労働者数も、2009年の統計では、以前よりも減っている。260万人から209万7,000人に減少している。
 ネパール国内の公務員、政府関係の機関で働いている職員が合計約50万人に上る。約200万人は、その他の産業、民間セクターで働いている。農業、製造業、非正規セクター合わせて500万人近い人たちが就労している。
 また、ネパールでは雇用が得られないということで、毎年数多くの青年たちが海外への出稼ぎを目指している。1日当たり約700人のネパール人が海外への出稼ぎに出ているという統計がある。出稼ぎ先で不幸にも亡くなる労働者の数も多く、1日当たり平均7体の遺体がネパールに帰国している現状である。
 ネパール国内の労働法が存在する一方、遵守されているのは大企業、しかもその中の正規労働者に限られている。ほとんどの非正規労働者、あるいは出来高払いで給与をもらっている労働者はこの法律で保護されていない。

2.労働組合が現在直面している課題

 現在、労働組合が直面している最大の課題は、雇用の創出及び雇用の保持にある。インドとネパールの国境はオープンボーダーになっていることから、インドからの不法就労者が数多く、ネパール国内での雇用の機会を失わないように保護するという必要が生じている。
 また、ネパールにおける社会保障の問題及び労働組合間の連携・連帯の問題もある。現在ネパールでは、ネパール共産党毛沢東主義派の労働組合も労働組合として設立され、我々と共闘しているが、毛沢東主義派の人たちは、労働組合の運動について独自の考え方があり、今後どのように連帯・共闘していくかが課題である。
 その他に、ネパールには深刻なエネルギー問題や農民を賃金労働者として職業化できていない問題がある。また、現在ネパールは政治的な移行期であるが、政権議会議員の選挙も行われ、2年以内に憲法を制定するということであったが、既に3年半がたっており、未だに憲法が制定されていない。
 政治の移行期間が延長されることで、地方行政サービスの不在状態が続いている。国の発展に係るインフラ整備等も十分に行なわれておらず、雇用に関しても深刻な悪影響を及ぼしている。
 また、ネパールにおいては肉体労働に対する偏見があることから、青年層は海外に出て重労働をする傾向がある。

3.課題解決に向けた取り組み

 現在、ネパールでは統一労働組合調整センターというものを設立した。GEFONTを含めNTUC-I他、毛沢東主義派の労働組合やその他の職能組合も参加している。様々な労働組合の人たちと共に民主化を推進するよう、使用者、政府との間でロビー活動等も行なっている。
 ネパールには、使用者団体としてネパール商工会議所があり、連携・協働を推進している。この結果、懸案事項であった社会保障の問題についても、使用者団体が合意するようになった。
 GEFONT、NTUC-I、毛沢東主義派の3つの主な労働組合と使用者団体との間で、5カ月前、11項目の合意がなされ、社会保障に関する法制度の整備を行ない、全ての労働者を制度に組み入れるという合意がなされた。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 労働組合と政府との関係は決して悪くない。我々と政党との関係も悪くない。主な使用者団体がネパール商工会議所であることから、使用者団体と政府は密接な関係を築いる。しかし、労働組合は主に3つの組合があり、共闘ということが困難で、政府との関係も使用者団体に比べると希薄である。
 一方、使用者団体との合意によって政府に圧力をかけることもある。現在、労働に関する法制度、6つの法律があるが、労働法、労働組合法、報酬法の改正作業に入っている。また、新たに社会保障法、労働審判法、保険法を新たに法制定する方向で、政労使が参加する三者協議を進めている。

5.多国籍企業の進出状況と労使紛争

 2005年の統計で、395の多国籍企業があり、幾つか免許を取得して、ネパール国内で操業している。多国籍企業に対しては、ネパール政府が5年間、税の免除をする政策を出している。しかし、税が免除される5年を過ぎると、多くの多国国籍企業がインドへ脱出する状況がある。
 インドのバッディという町では、多国籍企業を誘致する取り組みをしており、インフラの整備、緩やかな労働法の運用、税の免除など実施している。例えば、コルゲートやコダックといった会社、または、ペプシコーラの瓶の栓をつくるCSIという会社もインドに脱出した。
 ネパールにも、大きな多国籍企業が進出しており、コカ・コーラ、ペプシ、ダーバル、スールヤ・ネパールといった企業が進出している。また、保健医療の分野でも外国籍企業が存在している。それぞれの経営側とGEFONTの間の関係は良い関係を保っている。
 ネパールでは、エネルギー供給が危機状態にあり、ほとんどの原材料を輸入に頼っているため輸送費もかなりかかる。例えば、電力不足解消のため発電機を使用するにも燃料費がかかるという問題もある。また、多国籍企業に係る政府の方針が制定されていないこともあり、多くの企業がインドへ脱出している状況にある。また、商標のみ売って実際は生産をしていない多国籍企業があり、賃金労働者の数も少なくなっている。
 基本的に、外国籍企業との間では深刻な労使紛争は起きていない。唯一、スールヤ・ネパールの既製服部門において、賃上げ交渉の結果、工場側が不法に工場を閉鎖したという問題がある。労働組合としても会社側と協議をして早急に工場再開するように要請をしている。その他の多国籍企業においては、今のところ深刻な労使紛争は起きていない。