2010年 バングラデシュの労働事情

2010年5月21日 講演録

バングラデシュ茶園スタッフ協議会
モハメド・マハブ・レジャ

委員長兼BFTUC副会長

バングラデシュ電気通信スラミクカマチャリ労働組合
シディーカ・モホル

中央執行委員
女性問題担当兼BJSD執行委員
女性委員会担当

 
組合名 ITUC-BC(ITUCバングラデシュ協議会)
ITUC-Bangladesha Councial (ITUC-BC)
加盟組織 6組織
バングラデシュ自由労働組合会議(BFTUC)
バングラデシュ・ジャティヤタバディ・スラミク・ダル(BJSD)
バングラデシュ自由労働組合連盟(BMSF)
ジャディオ・スラミク・リーグ(JSL)
バングラデシュ労働連盟(BLF)
バングラデシュ・サンジュクタ・スラミック連盟(BSSF)
人 口 1億4,450万人(2008年7月)
言 語 ベンガル語
1人当たりGDP 624米ドル(2008年度)
労働力人口 4,740万人(農業48.1%、サービス37.4%、鉱工業14.6%)

1.労働情勢(全般)

 バングラデシュはパキスタン占領軍からの解放を求めた9ヵ月に及ぶ戦争を経て、1971年に独立した。現在バングラデシュは、選挙で選ばれた政府による民主主義国家となっており、議院内閣制をとっている。
 1972年以降は、労働者の福祉と基本的権利の確保に真摯に取り組んでいる。これまでバングラデシュは33のILO条約を批准している。
 2006年のバングラデシュ労働法(BLA)では警察部隊を除き、一部の輸出加工区も含むほぼ全ての部門で、労働者は結社の自由と団体交渉権が保障されている。さらに、現政府は2006年BLAの見直しと必要な修正を行い、同法を投資、環境、労働者によりやさしいものにしようと努めている。労働者の安全衛生(建設機械の安全含む)、勤務条件、最低賃金は同法の規定で確保されている。
 統計局の統計データ(2005~06年)によると、民間の労働人口は推計4,950万人で、現在雇用されているのはこのうち4,740万人(女性は121万人)である。フォーマル部門とインフォーマル部門の比率は21.6:78.4である。
 政府は、世界銀行、アフリカ開発銀行(ADB)、国際通貨基金(IMF)の圧力や指示によって一部の国有企業を民営化しており、現在も引き続き国有企業が民間部門に引き渡されている。こうしたなかで、民間部門やインフォーマル部門はいま大幅に増大しつつある。
 現在32の全国レベルの労働組合連合会と約7,000の労働組合が存在し(労働者・従業員組合、企業別組合、業種・職種・職能別組合、全国労働組合連合を含む)、組合員数は約200万人となっている。
 苦情処理手続および労使紛争の裁定は適切かつ公正に行われているが、労働裁判所および裁定施設の数はきわめて限られている。

2.労働組合が現在直面している課題

  労働市場の変化によって、労働組合の活動も変化している。女性労働者、在宅労働者、インフォーマル部門、小規模の商業・サービス部門の増大は、労働組合の組織戦略を変更させており、近年では建設、人力車、ポーター、精米所といったインフォーマル部門における組合結成に成功している。
 労働運動では、インフォーマル部門に対する強力な組織化されたリーダーシップがなく、結果として労働者の人権が侵害され改善していない。現在、労働運動は自由市場経済と労働市場および従来の労使関係の変貌を受けて、国内レベルでも国際レベルでも困難な時代を迎えているが、バングラデシュでは以下のような課題に直面している。

  1. 公共サービス部門の縮小と民間部門の拡大―ここしばらくいくつかの国有企業が閉鎖し、公共部門ではさらに閉鎖が進んでいる。
  2. 未組織労働者対策―労働者の権利の侵害や剥奪という状況が生じ、組織化はきびしい状況にある。
  3. グローバル化―バングラデシュの労働者の識字率は非常に低く、グローバル化と自由市場経済により、職の維持が困難である。
  4. 労働組合の多様性―わずか4%の組織労働者が32のナショナルセンターに分割されて労働運動の障壁となっている。また1つの企業に複数の組合があると、組合同士の対立や衝突、競争が生じ、政府が法によってその実態を監視し組合の数を減らそうとするため、組合リーダーは問題意識を高めチェックする活動を展開している。
  5. 法整備不足と労働法実施の不備―農業、政府官庁、NGO、教師、家内労働者をはじめ労働法の及ばない部門があり、さらに法実施の不備がある。

3.課題解決に向けた取組み

 労働運動の多様性(32のナショナルセンター)はあるものの、16の全国的労働組合連合が政治的基盤となるSKOP(Sramik Karmachary Oikkya Parishad)を結成している(BFTUCとBJSDも加盟)。
 また、14の主要な労働組合が、労働組合運動の能力を高めるための訓練・研究機関となるBILSを設立している。さらに、全国労働者教育調整委員会も、ILOの訓練・研究を行う場となっている。
 主要な労働組合連合はすべて、より多くの労働者を労働組合に統合するためのプログラムを行っている。また、インフォーマル部門での組織化にイニシアティブを発揮し、労働組合の結成に成功している。労働組合のほとんどは女性委員会を設け、実行委員会にも女性のリーダーを入れている。
 労働組合のリーダーは、労働安全衛生に関する権利と責任や職場における労働者の意識を高めるために、職場レベルで効果的なキャンペーンと研修プログラムを実行している。法整備を進めて労働法をより労働者にやさしいものにするために、労働組合は労働法の見直しに取り組んでいる。
 労働組合は労働者の権利の保護と促進を声高に主張し、キャンペーンを組織し、政府に対し、事業の閉鎖や民営化に反対するロビー活動や要請を展開し圧力をかけている。また、経営者側と二者間の話し合いを行い問題解決に努めている。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 BFTUC、BJSDとも関係は良好。
 BJSDは国内有数の労働組合連合で、政府主催の三者会談に参加している。BJSDは労働法審査委員会、労働政策委員会、安全衛生協議会など、政府の設置するさまざまな委員会に代表を送っている。

5.多国籍企業の進出状況と労使紛争

 わが国の多国籍企業は、利益等においては国内企業よりも好業績を上げている。しかし実際には、多国籍企業の現地経営者は自分たちの利益を優先し、労働者が搾取されている。賃金その他の給付に関して、管理者と事務職・労働者の間には格差が広がっている。給与等に関して、多国籍企業の全体的な条件は他の企業よりもよい。
 わが国ではタバコ、茶、衣類、電気通信、飲食料品などの有名な多国籍企業が活動している。最も論争を呼んでいる分野は、臨時雇用者の正規雇用化、適正賃金、労働組合権などである。