2001年 バングラデシュの労働事情

2001年5月30日 講演録

バングラデシュ労働組合(BJSL)
ファルグニーブナジー

バングラデシュ製茶労働組合女性委員会/委員長

 

労働運動が当面している最近の政治経済、社会状況

 バングラデシュは、現在多くの政治的、経済的、社会的問題に直面しています。政治的な不安定状況が続いており、それが労働組合にも悪い影響を与えています。
金融部門における管理の失敗から、経済状況がもともと悪かったのが、さらに悪化しています。生活必需品の価格が上昇しました。
 労働者の実質賃金は低下しています。政府は民間部門の労働者の最低賃金を発表していません。社会的なさまざまな犯罪がかなり増加しています。貧しい労働者からお金を引ったくる、密輸、手当たり次第の腐敗、賄賂の受け渡し等が全く日常茶飯事になっています。
 労働運動というものは、社会の一部であり、社会から決して離れたところにあるわけではありませんので、私たちの労働運動もこのような政治的、経済的、社会的問題から悪影響を受けざるを得ません。

BJSLの主な行動方針

 私たちの労働運動の必要に基づいて、そして私たちが当面しているさまざまな課題に基づいて、私たちナショナルセンターの行動計画も形づくられています。それに基づいてつくられた方針とは次のとおりです。

  1. 政府がILO条約を批准し、完全に適用するように圧力をかけています。いわゆる中核的条約で既に政府が批准している条約については、実際にその中身を尊重し、完全に適用するようにと圧力をかけています。
  2. 労使、政府の三者協議機関において提案された現在の労働法の民主化。
  3. 現在細分化している労働運動を統一するために取り組みをする。
  4. 労働運動を強化するために、未組織部門を組織化する。
  5. 労働組合の組織のあらゆる段階において、民主主義を徹底させる。次は労働組合運動に女性労働者を組み込む。職場において、悪化している労働条件について意識を高め、また職業安全衛生についての意識を高める。

方針を実現するための具体的な運動、活動

 私たちは、会合、集会、セミナー、ワークショップ等を組織して、さまざまな形で政府に圧力をかけて、組合の一員になることに対するさまざまな障害を取り除かせる。それから衣料労働者がもっと自由に恐れなく組合に入ることを許させる。輸出加工区(EPZ)の労働者についても、やはり自由に組合に加盟させるように、政府に圧力をかける。
 三者協議委員会(TCC;TripartiteConsulation Committee)というのがあって、BJSLはそのメンバーになっていますが、TCCとしては政府にILO条約の批准をさせるよう圧力をかけています。まだ批准されていないILO中核条約があります。それを批准させようとしています。しかしその中で政府は、ILO条約182号は既に批准することに基本的に同意しています。しかし、もう一つの児童労働に関する条約である児童労働者の最低年齢についての条約については、まだ批准をすることに、正式には同意していません。ですから、BJSLは政府に圧力をかけています。そして、さまざまなほかのNGOにも働きかけて、この分野で一緒にキャンペーンを始めました。
 2番目ですが、労働法検討委員会の設立が政府と労働組合のゆるい連合体、SKOPとの間で同意されています。この委員会では労働法を民主化することを協議することになっています。この委員会は、既に労働法の民主化のための勧告を行っていますが、それがまだ法律にはなっていませんし、もちろん実施もされていません。そこでBJSLはSKOP運動の最前線に立って、政府に対して委員会の提言をもとに法律を制定するようにと呼びかけています。
 細分化されている労働運動を統一しようという取り組みが始められました。BJSLはこのような努力をしている労働組合の中でパイオニアの一つです。既にBCTU(バングラデシュ労働組合総連合会)というものが結成されました。私たちは、ほかの組合にもBCTUに加盟するようにと呼びかけています。
 組合の組織率が非常に低く、4ないし5%にとどまっています。そこでBJSLはまだ組織化されていない人たちを組織化することを最優先課題としています。BJSLはまだ組合のできていない、組織化されていない職場で働いている労働者に対して、その人たちを力づけて組織化するように組合指導者に呼びかけています。
 産業民主主義というものは、労働組合運動の成長と発展のために非常に重要なことであると私たちは考えています。そこでBJSLはこのことに大きな重要性を置いています。そしてすべての組合指導者は、2年に1度の大会において選挙で選ばれています。
 女性労働者を組合運動に取り入れる、加入を呼びかけるというのは大変重要なことです。というのは、多くの女性が今では労働市場に参入してきているからです。そこでBJSLは女性労働者を力づけて、勇気を出すように呼びかけて、これは個人的な接触であったり、セミナーであったり、ワークショップだったりしますが、そういう方法を使って組合への参加を奨励しています。
 BJSLは、ICFTU-APRO、JILAF及び国際産別組織等の援助を得て、職業安全衛生、また劣悪な労働条件の改善のためにセミナーやワークショップを開催しています。そして、末端の労働組合に対しては、団体交渉によって職業安全衛生及び労働条件についての項目を団体協約に入れるようにと助言をしています。

ジャティオ・スラミク・リーグ(JSL)
カウサーアハメッドパラッシュ

バングラデシュ基幹トラック運輸労働組合/委員長

 

経済・社会状況

 1971年の独立運動にかかわったアワミ連盟が政府で最も大きい政党になりました。1949年に設立され、現総理大臣のシェク・ハシナが、この政党の代表でもあります。この政党による政府は21年を経て、1996年6月12日に設立。この政府によって、さまざまな5年計画の政策をしました。
 この中で女性の労働状況、福祉活動等にかかわるプロジェクトも発足させました。政府にテロリスト組織が降伏しました。テロリズムがどんどん減っています。政府は、9つの国営企業を民営化しました。現状ではアワミ連盟がもちろん与党になりますが、さまざまな野党からの圧力も受けています。
 約一、二年前に起きた悲惨な事件で、14名ほどの政府関係者が無残にも殺され、この中で政府のリーダー格に当たるアレフ・アーマード氏の暗殺もありました。この間政府のテロリストグループに対してのさまざまな政策等も一時期は混沌とした状況になっていましたが、現在ではそのショックから立ち直りつつあります。
 ご存じのとおり、バングラデシュの経済状況はまだとても弱く、過去20年にわたって、市場経済政策を取り入れています。この中で、さまざまな民営化を図り、政府で持っていた工場等を民営化させて、工場閉鎖等で、数千もの労働者が失職しました。さらに大洪水が作物等に多大な影響を及ぼし、GDPが去年の6.5から3.4ポイントまで下がってしまったのが現状です。
 この大洪水によって、非常にインフレが高くなり、通貨の価値自体も落ちてしまいました。政府はこういった非常事態について、短期的な打開策としてさまざまな施策を取っています。
 こういった状況の中で、生活水準はとても低い。政府は一応法律で生活水準というものを設定しましたが、これは徹底しませんでした。政府はさまざまな分野についての労働基準の設定をしていますが、現状はまだ法律化されていません。
 現在、5名ほどの家族を保つにはとても厳しい状況にあります。それは生活水準というものが、労働者の収入に対して見合っていないからです。それに重ねて、経営者側は、どうしても労働者に対して労働条件に関心を向けていません。法律もあまり守らず、労働者の声に耳を傾けている状況ではないということです。
 最低賃金が保障されず、結果として、最低条件の食事、住居、医療機器等の支出がそれに満たない。生活水準は、やはりまだ貧しいということです。
 バングラデシュは小さい国で、そこに人口が集中しています。80%が農業に従事しています。国の80%が農業だと、天候によって、毎年状況が変わってきてしまいます。GDP等も、毎年天候によって変わってきています。こうした中で、バングラデシュ政府は、近年、外国からの直接投資政策を受け入れています。こういった政府の政策の成果として、GDPが1980年から96年までは4%から5%の間だったものが、96年から2000年には、5%から7%まで上昇しています。こういった政府の生活水準等を高めるための政策のおかげで、GDPは年々若干ですが、上がっています。
 一人当り国民所得が、1980年代から90年代前半までが196ドルだったものに対して、99年から2000年の統計でいきますと、386ドルまで上昇しました。重ねて貧困線以下の比率が、96年に47%だったものが、99年には3%減りまして、44%まで下がっています。
 貿易の面でも、まだ輸出入のバランスが実は見合っていませんので、輸出額に対して輸入のほうが勝っている状況です。

JSLのアクションプラン

 賃金を含めた労働条件の向上がまず第1点。バングラデシュの児童保護の向上に努めます。経営者側等については、労働者の権利を守るべきであるとはっきりさせることです。洪水等自然災害についての支援を強める。まだ一つのナショナルセンターになっていない労働組合組織の統一に努めます。労働者団体の統一と、国際社会への連帯。労働組合の設立と人権保護。
 新しい賃金の設定。ILO第182号条約の批准を国会で通過させるということ。先ほど述べた9つの工場等の施設の閉鎖を白紙に戻し、労働者に引き渡す。政府と、経営者側とのよい関係に努める。