2010年 韓国の労働事情

2010年6月18日 講演録

韓国労働組合総連盟(FKTU)
ソン・ミョン・ジ(Mr. Song Myong Jin)

組織局部長

韓国国際労働協力院(KOILAF)
キム・ハ・ヨン(Mr. Kim Ha Youg)

企画・総務部次長

 

1. 韓国の労働情勢

 韓国は、一昨年の経済危機から世界で一番早く抜け出したと評価されている。しかし、所得分配は非常に悪化しており、OECD加盟諸国の中で所得不平等においてもっとも著しい開きがある。また、高齢化も世界で一番早く進行している。
韓国政府は、雇用創出を国政の最優先課題に挙げている。しかし、その対策として、労働基準法の改悪、派遣労働業務の範囲拡大、最低賃金法の改悪などを実施しており、労使政間の厳しい対立が不可避となっている。とりわけ、公共部門の構造調整で攻勢をかけてくるのが明白となっている。昨年上半期には定員縮減、賃金削減、下半期には団体協約の解約に代表される政府の一方的な構造調整が行われた。
今年は、号棒制の廃止、新入社員の賃金の一方的な削減、賃金ピーク制の導入、成果給の賞与の削減、採用規模の縮小など、昨年推進した構造調整をそのまま持続すると見られている。
労働組合について、13年間猶予されていた労組専従者の賃金支給禁止と複数労組解禁に関する労働組合法および労働関係法の改正法が昨年12月31日に成立した。これにより様々な混乱と労使間の対立、葛藤が起こっている。今年7月1日からは労組専従者に対する賃金の支給が全面禁止され、その代りに勤労時間免除制度が施行される予定である。単位事業所の労使間の対立も激しくなっている。
2011年7月からは、事業所単位の複数労組解禁が実施される。事業所において小規模の労組が乱立し、上部団体間の競争が熾烈になるなど、相当な混乱が発生すると予想されるため、その対策準備に追われている。

2. 労働組合が現在直面している課題

 ここ数年間続いている組織率低下の問題および企業別組合を産業別組合に転換する問題が、それぞれ停滞状態にある。また改正労組法の施行によって、専従者の実質的な活動や複数労組のもとでの安定的な交渉権をどのように確保するかが最も大きな課題となっている。
さらに、来年から始まる複数労組を解禁する法律の施行をまえに、組織をより拡大し、強化していくことに力を注いでいる。
一昨年の経済危機により、昨年は賃金と労働条件が大きく低下したが、それを元に戻す動きが見られる。また、定年後の雇用の法制化や長時間労働体系の是正により、雇用の安定と質の改善に努めている。さらに労働基準法の改悪を防ぎ、最低賃金を現実化し、公共企業の構造を調整していくことに力を入れている。

3. 課題解決に向けた取り組み

 改正労働組合法に関連して、FKTUでは傘下のすべての組織において、同法を現場で適用していく過程で、より安定的な組合活動が保障されるよう、団体交渉を展開している。また、労働基本権を守るために政府や使用者、政党と交渉し、さらに市民団体との連携にも力を入れている。
雇用の安定と質を改善するため、定年退職年齢の延長を法制化すること、長時間労働体系を改善してたくさんの仕事を創出することなどに取り組んでいる。
来年からは、企業レベルの複数労働組合解禁が実施される。この機会に、類似した産別を1つに統合し、産別労組を拡大していくことに力を入れている。さらに未組織労働者の組織化にも全力で取り組む。

4. FKTUと政府との関係

 FKTUとしては、今の与党ハンナラ党との政策連携を、これからも続けていきたいと考えている。
労働問題に関する案件については協力しながらも、政府の親企業・反労働者のような政策には闘争していく立場を堅持している。
FKTUは「国民と共にする労働運動」というスローガンを掲げている。労働問題だけでなく、多様な社会的な問題を解決するため、労使政委員会をはじめとする社会的な対話に積極的に参加していきたいと考えている

5. 多国籍企業の進出状況と労使紛争

 2009年度の多国籍企業の総出資額は、1兆1,400億ドルであった。2年前の経済危機等で停滞していた数値も以前の水準に回復しつつある。2008年度の労使紛争は19件であり、韓国全体の労使紛争の17.5%となっています。