2009年 韓国の労働事情

2009年10月23日 講演録

韓国労働組合総連盟(FKTU)
チョイ・チョンファン(Mr. CHOI Jonghwan)

広報部部長補佐

 

1. 労働情勢

 4つのテーマがある。第一は労使民政大妥協である。世界的な経済危機を打開するため本年2月、労使民政の大妥協(「経済危機克服のための労使民政大合意」)を宣言した。労働界は賃金を譲歩するかわりに、使用者は既存の雇用水準を維持、確保することを約束し、政府は多様な支援を行う、というものである。
 第二は非正規職法の改悪阻止である。7月から雇用期間が2年過ぎた期間制労働者を正規職とみなす非正規職法が施行されたが、その直前、非正規職の使用期間延長の動きが起こった。労働界はこの改悪の試みを阻止した。
 第三は公共部門の先進化問題である。2008年に発足したイ・ミョンバク政府は、発足と同時に公共部門に対する強力な先進化方針(公企業の民営化・統廃合等)を打ち出した。しかし、韓国労総をはじめ国民的な反対世論にぶつかっている。
 第四は社会の二極化現象である。去る9月のOECDの統計によれば韓国は、2007年基準でアメリカに次いで2番目の貧困国とされている。また、低出産、高齢化社会の速度も世界で一番早いと言われ、将来の労働力不足など労働社会問題が懸念されている。

2. 現在直面している課題

 現在、直面している課題は、2010年1月施行予定の専従者賃金支給禁止問題、そして複数労組認可及び交渉窓口一元化の問題である。これは組合専従者への企業の賃金支払いを禁止するものだが、ILOは法規定は廃止されるべきだと韓国政府に勧告している。また、韓国大法院判例も労働組合が自主的な交渉と闘争の結果として確保した専従者賃金は、労働組合の自主性を侵害するものではなく、勤労契約に基づいた給与だと認めている。
 現在の労働事情で専従者への賃金支給を禁止した場合、組合活動は危機的な状況に置かれ、労使関係は大混乱に陥る。これは組合活動を無力化するたのものである。

 

3. 課題解決に向けた取り組み

 以上の課題に対し韓国労総は労使政委員会、また与党ハンナラ党との政策協議会など多様な交渉チャンネルを通して対話と協議を進行している。また、政労使の6者代表会議を提案しているが、政府は対話自体を拒否している。韓国労総は今後も闘争を継続し、また民主労総と連帯してゼネストなど全面的な対政府闘争に入ることも確認した。

4. ナショナルセンターと政府の関係

 韓国労総は2007年、ハンナラ党と政策連帯を結び、イ・ミョンバク大統領候補を支持し、当選後に政策協約を締結した。その後、党とは政策協議会をつくり、様々な労働問題、政策協議課題などを論議している。また、経済社会政策など全般的な政策について共同論議を行っている。しかし政府とハンナラ党は一方的に専従者賃金支給禁止及び交渉窓口一元化を前提とした法施行を強行しようとしており、政府との関係は急速に冷えこんでいる。

5. 多国籍企業の進出状況

 2009年10月現在、韓国に進出した外国人投資企業総数は1万7,614社。これらの企業での労使紛争発生件数は増加傾向にある。原因は賃金団体協約の決裂が56件で一番多く、次は買収合併、会社売却などによる解雇・雇用問題。平均ストライキ期間は36.8日である。
 2000年から2006年の間、外国人企業により16万4千名の雇用が創出され、雇用安定性も高い。外国企業で労使紛争が発生した場合、外国資本投資は減少し、国のイメージも失墜して、国家経済に及ぼす影響も大きい。

韓国国際労働協力院(KOILAF)
キム・ヨンス((Mr. KIM Young Soo)

広報部マネジャー

 

1. 労働情勢

○グローバル経済危機と景気後退、内需不振による民間企業の投資心理萎縮、構造調整等、雇用不安の台頭(経済活動参加率62.2%、失業率3.9%、失業者数96万人)
○イン・ミョンバク新政権による雇用維持と雇用創出、青年失業解消のための各種支援金の新設及び拡大、青年インターン制等の実施
○2009年2月、政労使及び市民社会団体代表による「経済危機克服のための労使民政大合意」成立。⇒「労使はワークシェアに最善を尽くし、政府は労使のこのような努力を積極支援、信頼と協力の労使文化醸成に努力する」
○2008年新政府発足以降、公企業の民営化・統廃合・機能調整等、先進化措置の本格化
○個別事業所の複数労組許可と労組専従者賃金支給禁止措置の施行(2010年1月)

2. 労働組合が現在直面している課題

○労組組織率の持続的減少(1995年:13.8%、2008年:10.5%)
○非正規労働者の組織化
○労組専従者賃金の支給禁止に備え、組織別強化案の模索
○経済危機克服以降の変化に対応した長期戦略の構築

3. 課題解決のための対応策

○産別転換運動
○組織化の努力
○非正規職保護に努力(組織化、立法、団協)
○政治勢力化
○構造調整阻止闘争(労組利己主義イメージ)

4. ナショナルセンターと政府の関係

○現在、韓国労働組合総連盟(韓国労総)と全国民主労働組合総連盟(民主労総)に二分
○韓国労総は、社会改革的労働組合主義を基に、穏健・合理路線を歩む。民主労総は、戦闘的労働組合主義と社会運動的労働組合主義を結合し、進歩・闘争路線を基礎とする
○韓国労総は、2007年に李明博候補と政策連帯を結び、政権創出に一役買った。
○民主労総は、民主労働党を支援(2008年総選挙で5名の労働者出身議員を輩出)
○2009年7月現在、韓国労総は与党との政策連帯を基盤に定期的な政策協議会を開催する等、労政・労使協議に活発である。民主労総は主要懸案事項に対し、政府と対立関係にある

5. 多国籍企業の進出状況

○外資企業の進出現況 投資実績:3744件/11,711百万ドル(2008年末)。
○韓国進出の外国人投資企業は1998年に5139社、2001年に1万社超、2008年に1万6000余社
○外資投資企業の労使紛争現況 1998年以降の全国的な外国人投資誘致活動の結果、外国人投資企業が韓国経済に占める比率がますます増大、これによって最近韓国内全労使紛争中、約10%が外国人投資企業で発生(2001年:20件・8.5%、2008年:19件・17.5%)。
○外国人投資企業の労使紛争は、[1]韓国労総よりは、民主労総所属の事業所で多くが発生している、[2]一旦労使紛争が発生した事業所では反復的に紛争が発生する事例が多い、[3]現地化が進み、韓国人CEOまたは工場責任者がいる事業所よりは、外国人CEOまたは工事責任者の事業所の方が、労使紛争の発生件数が多い、などの特性がある。