2005年 韓国の労働事情

2005年10月26日 講演録

韓国労働組合総連盟(FKTU)
ハン デチャン

 

 現在、韓国の労働運動は、大変な危機を迎えているといえます。今年の初めから連続して発生した労働組合の各種の不正行為は道徳的にかなりの打撃をうけました。また、日々激しくなる労、政の葛藤によって山積している労働懸案問題は何一つ解決できない混乱状態の中にいます。その、実例、現在の労働部長官の言行を見ますと労働部自体が労働者のための政府の部署というよりは、使用者のための政府部署に成り下がってしまい、労働者を完全に排除した非常識な国政運営のために労・政間の葛藤を誘発しています。これに対して韓国の両労総は連帯して、100万人署名運動を実施しました。
 労働部長官の退陣運動を図るとともに、全組織を攻撃的な闘争組織に転換しつつあります。
 また、秋の国会で上程された非正規の法案も、また労働者の意向を排除したまま政府と使用者の一方的な主張のみの法案のため、韓国労総はこの法案を阻止するため、民主労総と連帯し実務対策委員会を設置、運営しています。
 政府は、非正規職法案や新労使文化政策などの策定については、労・使・政すべてが参加し、十分な時間をかけて対話と討論を通じて、ともに参加できる新しい労使文化パラダイムを創設することが大原則といえます。しかし、政府は労働者組織を排除したまま一方的に強行しようとしています。労働界は強く批判すると同時に11月8日には、組合員10万人参加の総闘争決議大会を展開していくことを既に決議しています。労働行政をつかさどる長官の交代と真の経済改革を図り、国民すべてにとって望ましい道すじをつくり、さらに発展した労働運動となることと思います。

韓国労働組合総連盟(FKTU)
キム シンオク

 

 私は女性問題、また韓国における少子化問題について触れたい。韓国では、保険 社会部の統計によれば、現在の水準の出生率が続けば、医学等の発達よって寿命が延長するのにもかかわらず、2023年をピークに韓国の総人口は減少に向かうと予想されています。このことは、2016年からは生産可能な人口の減少が挙げられますが、その際に、経済的には総人口減少よりも、生産可能な人口減少の方が影響が大きいと思います。 生産可能な労働力が減少し、その反対に社会福祉等の費用が必要な老齢人口へ加速する。10年後には著しい生産性の低下がみられる。
 また、最近韓国では、経済条件が困難な条件の中で、就業を希望する共稼ぎ夫婦が増加しています。働く女性が妊娠・出産休暇を安心して取得できる環境が大切であると同時に子育てに対する両性の理解、保育施設の増設と内容の充実が問題となっています。 政府は出産奨励改革として、出産奨励金の支給、児童数によって手当て支給の優遇措置等の解決策を挙げています。しかし、実行は上がっていないのが実情です。
 韓国の母性保護法を紹介します。
 勤労基準法・産前・産後休暇90日、所得保障60日間、通常賃金100%保障、最後の30日分雇用保険から支給。この制度が2006年度からは、90日間雇用保険から支給される。育児休業について、男性1年間取得可能、女性、10.5カ月間、その間の賃金、月一律40万円が雇用保険から支給、あと20万円は事業主が支給。
 韓国政府も全体的な労働力人口が減少する点については、危機感を持っています。
 少子高齢化の問題は、日本、韓国、台湾各国の共通問題と考える、問題解決策について共有したいと思います。

韓国労働組合総連盟(FKTU)
イム ヨンスー

 

 韓国の全国鉱山労働組合連盟は1949年に結成され、現在に至っています。組織の規模は、1981年度当時が129組合、約10万名組合員数に達していたが、政府の石炭合理化事業、鉄鋼による炭鉱廃鉱などで、現在は13組合約1万名の組合数になっています。
 私は単組の委員長と全国鉱山労働組合連盟副委員長を兼任しています。このキョンドンサンドン労働組合は1974年に設立され現在の組合数は1,086名です。
 キョンドンサンドン労働組合では、2004年度に内部対立が起きました。この紛争の発生原因は、長期政権をねらった労働組合委員長が委員長選出の選挙制度を組合員の直接選挙から代議員投票による間接選挙制に変えようとしたことにはじまりました。  結果、組合員たちの強力な反対闘争によって、その委員長は退陣し、直接選挙による委員長選挙制度がさらに確固たるものになる契機となりました。
 現在、韓国の全国鉱山労働組合連盟では、炭鉱で失業した組合員の職場提供を目的とした法人会社を設立、運営しています。その会社には100人余りが勤務しています。
 また、労働組合員の財政自立と産業災害を予防、福祉事業を展開するために、地下1階、地上13階建ての福祉会館も建設中です。韓国全国鉱山労働組合連盟では、このような事業をさらに拡大していく計画があり、さらなる労働者の権益向上のために労働運動の発展へ努力します。

韓国労働組合総連盟(FKTU)
イム イージャ

 

 今、韓国には、さまざまな労働問題があります。
 過去、韓国においては労働運動に携わるということがいかに困難で、また試練が多かったか、私たちの大先輩のさまざまな屈辱、あるいは苦労を思い浮かべながら、この場で韓国の政治、経済、労働全体について述べたいと思います。
 労働運動について、1960年代は、高度成長を掲げて、長期的な経済発展計画のもとで、政府の意図は国民経済成長優先で分配は後ということの労働政策を打ち出しました。また、労働者たちを弾圧しました。80年代に入りまして、再度、軍事クーデターを起こした軍事政権は、政権の正統性を隠すためにも、また労働者たちを弾圧することになった。これに、我慢できなかった全市民、労働者、学生が爆発したのが、6・29民主化宣言でした。その時期が、韓国においては労働組合が一挙に結成され、労働運動の最全盛期であった。
 しかし、90年代になり経済成長が鈍化したために、労働者はかってない雇用不安を感じるようになりました。文民政府によって、1993年に雇用政策法、雇用保険法が制定されました。その後1997年には国際的なIMF危機、通貨危機が訪れました。そのときには失業対策運動に街頭活動を展開しました。

労働組合の課題

 現在、韓国では、非正規労働者の差別問題、特殊雇用労働者問題が深刻化しています。特に特殊雇用労働者問題は労働法をめぐって勤労者制をどうするか。
 韓国の労働関係法は憲法32条に根拠し、個別の勤労関係法が制定されています。その憲法32条1項労働三権保障を根拠に集団的労使関係法が制定され、非正規職は勤労基準法、特殊雇用労働者は労働組合および労働関係調整法、この法律の目的は社会的、もの経済的弱者である労働者の勤労条件の維持、改善と労働者の経済的、社会的地位の向上を図ることで、均衡のとれた国民経済の発展に寄与すると考える。
 韓国においては、労働関係法はオール・オア・ナッシングの構造になっているため、法的に勤労者制を認められれば労働法の適用を受けることができる、勤労者制が否定されれば労働法の適用が受けられない、このような構造のため特殊雇用者といわれる、ゴルフ場のキャデイ、レミコンの事業主、荷物貨物車の事業主、放送作家、保険生活設計士などの職種の人たちの生存権保障問題が争点になっています。
 勤労基準法及び労働組合法、労働関係調整法では、勤労者側の定義があるにもかかわらず、最近の大法院の判決では、終始一貫して勤労者と使用者との間の使用従属関係を挙げて否定してきた。
 2004年判例を提示して、失業者も労組法上の勤労者概念に含まれるという判決も出ました。とはいえ、失業者の勤労者制認定の可否が真に労働者にとって実利か、検討課題、また、重要点として勤労基準法上では、依然として勤労者として認めていない点に注目すべきです。  現在、世界的な問題として労働市場の柔軟性と雇用安定というのが、今後私たちの共通した課題と考える。