2004年 韓国の労働事情

2004年10月5日 講演録

韓国労働組合総連盟(FKTU)
キム デヨル

韓国労働組合総連盟 教育宣伝部次長

 

国内の状況

 韓国では今年の4月に総選挙があり、これによって大きな政治的・経済的変化が生じました。
 ご存知のように韓国には韓国労総(FKTU)と民主労総(KCTU)という2つのナショナルセンターがあります。民主労総は今回の総選挙に向けて民主労働党という政党を作り、政党として支持を得ることに成功しました。一方、韓国労総は緑社民党という政党を作り選挙に打って出ましたが、政治的な勢力にまで押し上げることができませんでした。また総選挙のために賃金闘争が遅れるなどの大きな影響がありました。
 今回の総選挙を通じて、私たちの組織の持つさまざまな問題点が明らかになりました。例を挙げますと、組織運営の安直な決断、問題が解決されなくても看過される組織体制、規律の不備、現場組合員の帰属感と自信の欠如などです。社会全般における変化と改革に対して、韓国労総をはじめ産別組織が能動的に対応できないまま、労働界の主導権を大きく喪失したという危機感も増幅しています。このような状況で、韓国労総の組織改革を求める要求も提起されました。これは5月25日にイ・ヨントク氏を委員長とする新執行部の新しい課題となっています。
 私たちは組織内部の評価にもとづき、「2004年度下半期の情勢展望」を定め、民主労働党の躍進のなかで、与野党と民主労働党に対する関係を設定し、組織内部の政治的スタンスを確立することの重要性を訴えています。民主労働党との関係設定の上では、民主労働党内部の路線対立を踏まえる必要があります。また韓国労総と民主労総の統合の可否に対する現場の意見の吸収も重要になると思います。

FKTUの運動方針

 労使関係について申し上げますと「最低賃金制度改善」「労働条件の後退なき週40時間制貫徹」「非正規職問題の解決」をめぐり、労使間の綱引きが今後も継続するものと展望しています。このような労使間の攻防は労使関係のロードマップ処理と並行して展開されるわけですが、政府の役割と民主労総の労使政委員会への参加が鍵となります。
 運動面では韓国労総の全面的な組織点検とともに、組織改革を推進することが内外の信頼確保のための重要なポイントになります。改革のテーマは現場の組織力強化と対外的な地位の向上です。あわせて産別中心の闘争に運動基調を転換し、韓国労総の対政府交渉力を強化することが必要になると思います。
 次に制度改定について申し上げます。非正規職保護立法、公務員労組法、国民年金法改悪など、各種制度改訂が通常国会で扱われる見通しです。民主労働党の躍進と開かれたウリ党の過半数議席確保で、制度改訂は大きな争点となるものと思われます。このような状況下で、韓国労総の闘争力と交渉力を総動員し、制度改訂闘争に全力を集中することが必要だと考えています。
 「2004年度下半期重点闘争事業」の中で韓国労総が掲げている運動方針は以下のとおりです――非正規職の差別撤廃、労働基本権確保のための制度改善闘争、労使関係ロードマップなどの政府の労働法改悪推進の粉砕、最低賃金改善、脆弱な労働者たちの権益増進と社会的格差解消、国民年金改悪阻止、これら社会改革闘争を通じた社会的連帯の強化、現場の支援体制の確立と週5日制、賃団協における実質的な成果獲得、韓国労総の改革と組織革新、そして韓国労総の政治方針再樹立と労働者政治勢力化の中枢的な地位の確立です。

FKTUの具体的な活動

 韓国労総では6つの中心的な活動を展開しています。1)労働基本権確保のための立法化及び制度改善闘争、2)非正規職保護立法獲得などの脆弱階層労働者対策、3)社会保険改革・税制改革・不平等解消闘争などの社会改革闘争、4)新自由主義の阻止・反グローバリズム闘争・対外連帯活動、5)週40時間と週5日制・賃団協の闘争支援、6)労総改革と政治方針の再樹立――です。
 現在、最大の争点になっているものは以下の3点であります。1番目は、韓国の労働部が通常国会に上程した非正規職保護立法案が、労働者にとっては改悪された内容であることを労働者たちに把握してもらうことです。2年前に日本でも同じことがあったと思いますが、ここには派遣法の問題と期間限定の問題が含まれています。2番目は公務員の労働三権保障の問題です。日本と同じように韓国においても公務員のストライキ権が保障されていないので、韓国全体の公務員がこれから集団的な闘争に入ると思います。3番目は日韓のFTA協定問題です。
 去る8月22日から25日、ソウルで日韓のFTA交渉が開催されたわけですが、その内容がいまだに公開されていません。10月中にも東京で日韓のFTA交渉が再度行われる見通しです。韓国も日本もナショナルセンターをはじめとする市民団体と力を合わせて、これから反対集会を開ければいいと考えています。

韓国労働組合総連盟(FKTU)
パク ミョンヒュン

韓国海上産業労働組合連盟 国際本部部長

 

組合活動への参画

 私は労働組合に入る前、18年間乗船生活をしていました。私が所属している韓国海上産業労働組合連盟は1949年に結成された組織で、現在に至るまで56年の長い歴史を持っています。10月には私たち連盟の50年史という大きい、記念すべき本が出版される予定です。
 私が長い乗船生活のなかで感じたことは、船員たちの労働条件があまりにも劣悪だということでした。そのため労働組合に入ってからは、現場で感じたことを労働組合を通じて改善し、同僚の組合員の一助になりたいという希望を持って労働運動を展開してきました。この間、さまざまな組織活動、福祉活動の経験をしてまいりました。労働運動をしていた6年間にいろいろな経験を積み、現在は国際部で仕事をしています。

韓国船員労働組合連盟の具体的な活動

 主要な活動内容は連盟の乗組員の船を訪ね、苦情処理や組合員の紹介などの仕事をすることです。最近は世界経済が混迷の度を増していますので、乗組員が賃金をまともに受け取れないこともめずらしくありません。船主の倒産で切り捨てられた船員も大勢います。このようなとき、私たちは未払い賃金や滞納賃金の問題を解決したり、船員を助けるための弁護士を選任したり、船舶の競売業務や裁判関係の業務を行ったりします。特にFOC船舶、すなわち便宜置籍船に乗っている東南アジアやロシアの船員の間でこのような問題が深刻化しています。船を訪ねてみますと、食事もなければ飲料水もなく、適切な医療サービスも受けられなまま不当解雇されるという現実を目の当たりにします。お金が一銭もないので帰国さえできないという人もたくさんいました。
 韓国船員労働組合連盟は、イギリスに本部を置く国際運輸労連(ITF)と連携し、船員に不利益を与える船主を最後まで追跡し、船員の滞納賃金や苦情の問題を解決しています。最近はロシアの船員が船主に簡単に切り捨てられたり、賃金未払いのまま放置されてしまうケースが増えています。私たちの組織はこのようなロシア船員が泊まっている港を訪問してミーティングを開いたり、あるいは未払いの賃金を解決してあげたりして、船員が無事に帰国できるよう手助けをしています。船員であれば、国籍にかかわらずこのようなサービスを提供してあげるのは当然だと思います。私どものこのような活動は小さな活動ではありますが、船員が抱えているこのような問題がなくなるまで、積極的に最後まで展開していこうと思っています。ロシアの船員労働組合も韓国に常駐しているロシア人船員の問題を解決するために、私たちの連盟FKTUを頻繁に訪問してきます。
 ご参考までに申し上げますと、私が所属しています連盟は水産部門まで入れて組織人員10万人です。今年、政府に向けて大々的な闘争を展開しました。その結果は、私たちの組合の勝利に終わりました。

韓国国際労働財団(KOILAF)
ペ スナム

韓国国際労働財団 広報部長

 

KOILAFの成り立ち

 韓国国際労働財団(KOILAF)は、1997年11月に韓国労総の委員長が政府側と経営者団体側に勧告して設立されました。当時、私たちがモデルにしたのは日本のJILAFです。JILAFの事業内容が非常に良かったので、韓国においても同じような財団が必要だということになり、民間労働組合の交流を活性化させる目的で設立されました。
 KOILAFの意思決定は10人のメンバーからなる理事会で行われます。現理事長は前韓国労総の委員長のパク・イン・サンです。主要な理事構成メンバーは労働部の次官、韓国経営者団体の副会長、韓国労総の事務局長などで、政・労・使から選出されています。JILAFと異なっている部分があるとすれば、韓国では政・労・使が一緒に協議し運営していることだと思います。

KOILAFの事業内容

 事業内容の中で一番重点を置いているのは、海外の労働組合指導者の招請です。私たち財団は1998年度から毎年、中国、東南アジア等、韓国に隣接する国の労働組合指導者を韓国に招請し、交流するプログラムを実施してきました。今年は9月までに、インド、インドネシア、マレーシア、モンゴルの4カ国の労働組合指導者を対象に招請を行いました。10月から年末までに中国、ベトナムなど、合わせて6カ国30名ぐらいがこのプログラムに参加する予定です。
 二番目に重点を置いている事業は、外資系企業における協力的な労使関係形成に向けた支援です。現在韓国には多国籍企業と呼ばれるアメリカ系企業、日系企業、ヨーロッパ系企業など、さまざまな外資系企業がありますが、このような企業では、経営者が韓国の労使文化や韓国の労働法、各種制度や労使慣行を知らないために、いろいろな問題が生じてしまうことがあります。そのような問題点に対してKOILAFが支援し、労使関係の安定化をめざしています。
 三番目の事業は、海外に進出している韓国系企業が現地で効率的な労務管理ができるように支援することです。日本においても在外企業協会というものがあり、このような事業を展開していると思います。

今後の重点項目

 最後に外国人労働者に対する教育研修制度について申し上げます。
 韓国では今年の7月1日から外国人の雇用が許可されました。以前は日本と同じように産業研修生制度という制度にもとづいて一部の外国人だけが入国できましたが、今年の7月からはこの制度とあわせて、新しく外国人雇用許可制というものが導入されました。この制度の導入によって外国人労働者は合法的に韓国で仕事をすることになりました。現在は6カ国がこの外国人雇用許可制に参加をしており、私たちの財団はその中のベトナムとモンゴルの労働者を対象に、年間各1万人くらいずつの規模で研修を実施することになりました。ちょうど本日から韓国労総の中央教育センターの施設を借りて始まったとところです。
 このような教育以外にも、外国人労働者を対象にした教材の作成、労働問題の相談、情報提供、各種イベントなど、今後活発に展開していきたいと考えています。