2002年 韓国の労働事情

2002年12月4日 講演録

韓国労働組合総連盟(FKTU)
チェ インベック

韓国労働組合総連盟 組織局長

 

国内の状況

 韓国の雇用労働者数は現在1,300万人です。その中の115万人をFKTUが組織しています。一方、韓国民主労働総連盟(KCTU)は65万人です。韓国の労働組合組織率は12%です。
 FKTUには28の産別組織が加盟しています。16の地方本部52の地域支部があります。本部の役員は委員長、副委員長が5名、執行委員12名で構成されています。研究、教育に携わっているスタッフが118名います。この内訳は産別その他の組織から30%、プロパーが70%で構成されています。
 韓国の労働組合は、3つの労働悪法案に直面しています。1番目が労働時間短縮に関する法案、2番目が公務員の労働基本権の許容の問題、3番目は経済特区法の阻止の問題で、これらの問題に対して労働界は全力を挙げて政府と闘っています。
 現在、週44時間の労働時間を40時間に短縮しようとしています。労働組合はこの労働時間短縮を、賃金、労働条件の低下なしに行うよう要求しています。
 公務員の労働基本権の問題について、日本には公務員の労働組合がありますが、韓国は今年から、公務員の労働組合の問題を政府と話し合っています。話し合いの中で衝突している一番の難問は、承認の時期の問題と名称の問題です。政府は「公務員組合」という名称を提示していますが、労働組合は「公務員労働組合」という名称を主張しています。設立時期について、労働組合は2003年1月から承認されるよう要求しているのに大して、政府は段階的に2006年1月から開始しようとしています。また、労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を認めるとともに、専従者の賃金の問題でも対立しています。政府は専従者の賃金を無給と主張し、組合は有給でという話をしています。2006年度まで、労使が合意して専従者の賃金は有給になっています。
 3番目に経済特区法があります。経済不況の下で失業率が急増して、それに対して外資の導入によって経済を活性化しようとして政府は経済特区法を立案しています。国際空港、国際港湾があるところに外国の資本を無差別に導入して、経済を活性化していこうとする法案です。国際空港が全国に18カ所、国際港湾が22カ所あります。この数字だけ見ても、韓国全土を経済特区化しようとする法案で、この法案に対して労働組合は反対しています。このような経済特区に投資する企業に対してはあらゆる便宜を図ろうとするもので、週5日制、休暇制度などいろいろな面で労働条件の規制緩和を図ろうとしています。このような経済特区内の労働条件の悪化は、韓国労働者全体の労働条件の悪化を招きかねません。労働組合だけでなく、110の市民団体、環境団体、教育団体、女性団体等の市民団体、がこの法案に対する反対運動をしています。
 しかし、この法案は2002年11月14日に272名の国会議員が参加して、125名の賛成で通過しました。これに対して、FKTUとKCTUは団結して、この法律に大統領が拒否権を行使するよう要求しています。要求が受け入れられない場合にはゼネスト決行を話し合っています。私がJILAFのプログラムに参加する前日、両労組の委員長、数万に上る組合員が集まって、大統領官邸の前で、大統領に拒否権の行使を求める集会を行ないました。

FKTUの活動方針

 韓国では、金融産業の労働者が1997年IMFの経済危機に際して、構造調整という名目で6万人以上が解雇されました。このような人員整理は31行あった銀行が、20行に統合されたことによって行われたものです。韓国政府は、FKTUの委員長の出身労組の韓国最大手の朝興銀行も、強制的に合併を進めようとしています。このような合併を阻止するために、FKTUのイ・ナムスン委員長は、この闘争の決意を頭の毛を全部剃るそることで、表明しています。その他、電力労組、パワー・コム労組、韓国電力産業開発労組の闘争もあります。
 FKTUが新しい政党である民主社会党を創設したことについてお話しします。FKTUは2007年の大統領選挙に独自候補を出すことを目標に、8月5日、FKTUの執行評議会の会議を通して新しい政党として民主社会党を設立の決定を行ないました。11月3日には、全国的に40の地区と党員3万5,000人を集めて、創党大会を開催しました。政党をつくった目標は、自由、平等、連帯、平和、統一の4つの理念に基づいて、すべての人が平等で自由な社会の中で、自分の能力を最大限発揮する、社会民主主義的な理想を実現する社会をつくるということです。今後の目標は、民主労働党と単一政党を結成していくこと、また農民との連合政党として、2012年には、権力を引き継ぐことが可能な政党としていくという目標を掲げています。政党の代表者はFKTU現委員長のイ・ナムスンを2003年度の大会までの臨時代表としています。
 最後に、FKTUは、韓国の1,300万人の労働者を代表して、韓国のヨイドというところに、15階建ての勤労者福祉センター(FKTUビル)を建設しているところです。財政の自立、また、韓国労働者の福祉をよりよく向上する目的で活動しています。

ハン キイル
パシフィックホテル労働組合 委員長

 

観光労連の状況

 観光労連の2002年度の主要な活動方針は3つあります。1.観光産業に携わっている労働者の劣悪な労働条件の改善、2.雇用安定の保障、3.非正規職の縮小及び差別撤廃等、雇用不安要素の解消です。
 2002年度は、韓国と日本の共同主催でワールドカップが成功をおさめました。この大会を前にして韓国政府は、ホテル及び観光産業に従事している労働者の力が絶対に必要なのにもかかわらず、世界的な新自由主義の潮流に便乗して、労働者の生活の質をどんどん疲弊させていきました。その中で多くの労働者は、長年従事してきた職場から解雇されたり、賃金が削減されたり、非正規職に身分が変わるなどの、不安定な生活を送っている状況です。
 今年5月15日に、全国観光労連の大会を開催しました。観光産業といえば、大変華麗なイメージが浮かぶのですが、実態は365日、1日も休むことなく行われる営業と24時間勤務体制という、大変劣悪な労働条件の中で労働しているのが現状です。また、観光労働者の職場は、いつ頃からか分りませんが、正規職の労働者より非正規職の労働者の数が多くなっています。このような環境の中で、日々、雇用の不安が生まれています。韓国政府がワールドカップを前にして、一方的に労働者に犠牲を押しつけてきたので、観光産業に従事する労働者は、労働条件の改善と人間らしい生活をするために、政府に対して強力な闘争を展開しました。観光労働者は集会を開催し、観光労働者の要求が聞き入れられない場合は、ゼネストも辞さないという決議を行いました。
 全国の観光労働者がこのような要求案を掲げて、雇用安定のための集会を開催するなど、総力を挙げて闘争した結果、政府の文化広報部では、積極的に私たちの要求を解決する方針を連盟に通報してきました。観光産業の要求にこたえて、政府では、定期的に政・労・使の協議窓口が用意されています。私たちは、国家の、また世界的な大イベントであるワールドカップの開催を成功させることに協力しました。今までは、政・労・使で交渉できる窓口さえなかったのですが、私たちの闘争の結果、これからは定期的に交渉する窓口ができたので、これは私たちの成果だと思います。

韓国の労働組合と政治活動

編集部:12月4日(水)に開催した「労働事情を聴く会」が終了したあと、日本側出席者より、韓国の労働組合と政治との係わり合いについてもっと詳細に話を聞きたいと言う要望が強く出された。当時、韓国の大統領選挙の直前でもあり、また韓国労総(FKTU)が新しい政党を設立した直後でもあり、日本の関係者の関心が高かったものと思われる。またチェ・インパックFKTU組織局長は、立場上FKTUの組織問題および政治との関わりについて直接責任ある立場にある関係もあったためと思われる。
 チェ局長には公式日程の合間をぬって時間を割いていただいた。日本側からはJILAFの得本理事長を始め、他にJILAF国際労働問題研究会のメンバーの方々に急遽集まってもらった。
 既に大統領選挙が終わっているので内容的に少々過去のものになっているところもあるが、基本的なところは現状を覗えるのではないかと思う。
 以下はチェ組織局長の報告と若干の質疑応答を録音テープからおこしたものであり、所々不鮮明な個所があった。少々修正を加えておいたことをお断りしたい。

講演内容: 韓国の労働組合の現状と政治活動について
日 時: 2002年12月10日(火)15:00-17:30
場 所: 連合総研会議室

チェ・インパック FKTU組織局長

 

 12月4日に開催された「労働事情を聴く会」でお聞きになった方もいらっしゃると思いますが、韓国労総(FKTU)について、また最近の韓国の労働組合の動向について、更にFKTUが、最近になって設立しました民主社会党について説明したいと思います。

韓国の労働組合の組織現勢

 韓国で正規雇用労働者数は、1,300万人です。その中で労働組合に加入している労働者は韓国労総(FKTU)に115万人、民主労総(KCTU)に65万人で、組織率は12%です。FKTU。には28の産業別組織が加盟していますちなみにKCTUには16の産業別組織が加盟しています。
 FKTUの地方組織は16の地方本部と、その下に52の地域支部を持っています。FKTUの幹部はイ・ナムスン委員長以下、55人の執行委員で構成されています。日本の連合の会長に当たるのが、韓国では委員長です。12名の本部長と118名の事務局員がいます。専門職が70%、一般職が30%です。

韓国の労働組合が当面する闘い

 韓国労総と民主労総が力を合わせて現在取り組んでいる大きな問題は、先ず第一に週休2日制の問題、第2番目が労働時間短縮の問題、3番目が公務員の労働基本権確立の問題、そして4番目が経済特区法阻止の問題が挙げられます。
 まず、労働時間短縮の問題ですが、労働組合は賃金を引き下げることなく週労働時間を44時間から40時間に短縮することを要求しています。これに対して政府は、有給生理休暇を廃止すべきだと言っていますが、労働組合は有給生理休暇の制度を変更するのは良いとしても、制度の変更と賃金を引き下げは別問題であると主張しています。
 また中小企業とか零細事業所に従事している非正規労働者は、労働時間が44時間から40時間に短縮されると、何か差別があるのではないかと危惧しています。労働組合は、差別が起こらないよう、政府のレベルで何か支援すべきだと主張しています。
 次に公務員の労働基本権確立の問題では、2002年8月19日、「公務員組合法」が政府の国務会議に提案され、2002年10月15日に国務会議で承認されました。これが10月17日に国会に、提出され10月31日、提出議案の論議なしに、常任委、行政自治委員会で活動を終結してしまいました。労働組合が強行に抵抗するので、ここでもストップ状態になりました。
 現在の闘いは、政府が名称を公務員組合にするよう主張しているの対して、労働組合は公務員労働組合を、そのまま、その名称で認めるよう主張しています。日本では、公務員労働組合、それにプラスして労働条件まで勝ち取っていますが、私共はそれに大変感動しています。
 また、施行の時期では、政府は、これを2006年1月から施行すると言っていますが、私共は2003年1月から、すぐにこれを施行するよう要求しています。労働時間短縮と公務員の労働基本権問題は、現在、大統領選挙前ですので国会で進展がなく、来年2月に開会される臨時国会に回そうということになりました。
 韓国労総と民主労総が力を合わせて闘っている経済特区法の問題では、進行経過を見ると、2002年8月19日、立法予告(政府立法)が出されました。2002年10月15日の国務会議議決を経て、2002年10月17日に国会に提出されました。そして、11月7日、国会常任委を通過して、11月14日に国会本会議で経済特区法が通過しました。272名の議員中193名が出席し、賛成125名、反対55名、棄権が13名でした。
 FKTUとKCTUを中心に労働組合がなぜ反対しているのかと言うと、労働組合の立場から見て、経済特区法が過大に外国人投資企業を保護しているからです。何らの制限無しに外国企業にすべてを全部オープンするということに労働組合は反対しています。
 当初、政府は3つの地域だけをオープンすると言っていました。永宗島の新しい国際空港、それに釜山港と光陽港
の3カ所だけをオープンにすると言っていました。しかし、国会議員が、自分の出身地域も対象にすると言い出してきました。韓国には国際空港が18、港湾が22あります。国会議員が先頭になって、これをすべてオープンにすべきだと言い出してきました。経済特区法には過大な外国投資企業の保護措置が規定されており、例えば派遣労働者の無制限許容、休暇制度の適用排除等が規定されており、全般的労働環境の悪化に繋がりますので労働組合は全力で反対しているわけです。11月27日、大統領官邸である青瓦台の前に集結して、金大中大統領に対して拒否権を発動するよう要請しました。
 この法案が国会を通過したのは11月14日です。しかし、実施は2003年7月1日からとなっています。従って金大中大統領政権は2月で終わりますが、終わる前に、あるいは新政権が成立しても、大統領が拒否権を発動して、法を阻止するよう要請したわけです。拒否権が発動されない場合には、2003年の春闘のときに、労働界は大統領にすべて門を閉じるという宣言を行なう記者会見を開きました。
 日本ではストライキはほとんど起こっていないようですが、韓国では1997年の金融危機でIMF体制下で構造調整が行なわれ、その中でストライキが頻繁しました。企業毎のストライキは、例えば、ヒュンダイ自動車、テウ自動車でストライキが頻発しました。しかし、KCTU、FKTUが共同ですべての事業所を対象にストライキを決行しようとしたのはその時が初めてでした。
 韓国の労働組合が直面する課題について、今回の大統領の選挙ともすごくかかわりがありますが、現在の状況では韓国の労働組合は政治的に力を発揮できませんので、最後の手段として、デモとかストライキなどの共同行動を宣告・予告しました。

韓国労総(FKTU)の当面の課題

 続きまして、FKTU独自の課題について、下半期の闘争の現況について簡単に触れておきます。
 現在、FKTUは金融産業労組の朝興銀行強制合併阻止闘争、電力労組の配電分割民営化阻止闘争などに力を注いでいます。1997年の金融危機以降、政府は主導的に金融産業の構造調整を行なってきました。そのため12万人に上った金融産業労働組合員が4万人も削減され、現在8万に減少しました。金大中政府は、最後の金融構造調整策として12月の末にFKTU委員長イ・ナムスンの出身組織である朝興銀行の構造調整を仕上げようとしています。この朝興銀行構造調整問題は、単に個別銀行自体の問題だけでなく韓国の金融界全体の構造調整問題であります。従って、これを阻止できないとなると、現在20行ある銀行が、多分10行位に整理され、そうしますと現在8万人いる労働組合員が5万人位に減ることになります。言葉を変えれば、非正規職が8万位に増えるということです。

民主社会党の設立

 続きましてFKTUが、今年設立しました民主社会党について説明します。
 これまで韓国の労働者を代表する政党として、5年前にKCTUが設立した民主労働党があり、現在も活動しています。民主労働党の代表は、以前、KCTUの委員長であった権永吉です。権永吉代表は、97年の大統領選に出馬しました。民主労働党からは2000年の総選挙にも候補を出しました。権永吉代表は今回の大統領選挙にも立候補しています。97年の大統領選挙時に権永吉代表が獲得した得票率は2%でした。2000年の総選挙で民主労働党は全国の21カ所で候補者を立てましたが、全体の得票率は3%以下でした。
 しかし、2002年6月13日に行なわれた地方議会選挙で、民主労働党は8.6%の得票率を記録しました。この間、FKTUは政党を持ってはいませんでしたが、FKTU出身の国会議員、地方議会議員にたくさん出しています。
 日本の選挙制度については良く分りませんが、韓国では、国会議員は地方区、全国区に分かれています。FKTUの組織内議員としてハンナラ団の比例代表で国会議員が2人、民主党の比例代表区で国会議員が1人、あと地方区で3名の国会議員を持っています。
 本年6月13日に行なわれた地方議会選挙では、FKTUは比例代表を含めて議員を43名を当選させました。比例代表ですが、恥ずかしいけれども、ハンナラ党が6名、民主党が5名で11名です。
 FKTUは本年11月3日に政党として民主社会党を結党しました。党綱領も策定しました。FKTUの中には、新党をつくるのではなく民主労働党に加盟したらどうか、民主労働党に加盟して政治活動をすればいいのではないかという批判を受けることもなくはありません。
 日本も、連合が結成される前は労働組合により支持政党が異なっていたと聞いています。韓国も、KCTUとFKTUとの間では政策上で一致するところがありますが、基本的な理念とか、政治的な立場で一緒になれない部分があります。KCTUは10年前にFKTUから分かれて行った組織で、、政治とか基本的な理念で違っています。ですから、FKTUが独自で政党をつくって、その後に民主労働党と一緒に政党の論議をする関係を作っていったほうが良いということで11月3日に民主社会党をつくりました。
 民主社会党の組織状況は、全国的に40の地区党、党員が35,000人余りでスタートしました。2002年の年末までには、70の地区党に10万人の党員を確保することを目標としています。
 民主社会党が志向する理念は自由、平等、連帯、平和統一の4大理念です。すべての人が平等で自由な社会で自分の能力を最大限発揮できる社会民主主義的な社会の実現を目標にしています。
 今後の展望としては民主労働党と労働界単一の政党の結成していくことです。その後、農民との連合政党、改革を目指す勢力との改革勢力総連帯を模索する政党を作っていきたいと考えています。2004年に予定されている総選挙では20議席を確保することを目標にしています。多くの人が、それは夢だと言っています。しかし私共労働組合の人は、それは夢ではない、必ず実現するという意気込みで、2012年には政権担当可能な政党を作るんだということを目標に、今後活動を展開していきます。
 今回、日本に来まして、連合は、方針として政治活動には参加しないと聞きました。政治活動をすると連合は分裂してしまうと聞いたんですけれども、韓国では、事情が異なっています。韓国の場合は、労働組合を統一するためには、その契機になるのが政治活動です。今回の大統領選挙で、だれを推薦するのか、民主労働党の権永吉候補なのか、ハンナラ党の李会昌候補なのか、民主党の盧武鉉候補なのか、必ずそういう質問を受けますが、FKTUとしては、確固たる方針を出していません。では、なぜ今回新政党をつくったのかと言いますと、日本と社会事情が大変違いますので、労働界が1つになるための1つの契機として民主社会党を結成したと申し上げておきたい。民主労働党と1つになって、先ほど、夢じゃないかと言いましたが、2012年までには政権担当可能な政党を作りたいと考えています。

2002年2月20日 講演録

韓国労働組合総連盟(FKTU)
ハ チョンスー

韓国労働組合総連盟組織局部長

 

発表の主要点は6点です。

  1. 制度改善争点課題。
  2. 構造調整とその阻止闘争。
  3. ストライキ政局と労働組合弾圧問題。
  4. 2002年度の韓国の労働問題の展望。
  5. FKTUの組織活動。
  6. 労使対策問題。

時間の制限があるので、重要な部分だけ報告します。あとの問題については資料がありますので参考にしてください。

1.制度改善争点課題

 (1)労働時間短縮の問題であります。この労働時間短縮の問題は、韓国では労使の見解に大きな差異があり、合意は難しい問題です。その背景には、長期勤続者の年月次休暇縮小による賃金の補てん問題、週休・生理休暇廃止有無の問題、変形勤労時間の拡大等による案が用意されていないので、その問題について合意がなされていません。製造業では賃金の引き下げなしの労働時間短縮を要求していますが、FKTUとしてそれに全面的に賛同しています。
 労使は公益委員が作成した案を受け入れていません。これ以上の合意案も出る可能性がない状況で、とりあえず政府のほうが単独で法律案をつくり、2002年度初め、臨時国会に提出すると思います。このように政府が単独で法案を国会に上程したとしても、地方自治体の選挙と大統領選挙を目前に控えていますので、週5日労働制の立法化は実現困難であると思います。FKTUは2002年度の賃金闘争で賃金や労働条件の引き下げなしで、週5日制を獲得するために共同闘争を行う予定です。

 (2)非正規職差別撤廃問題についてです。この問題は、労働者にとって一番組織的、制度的に重要な問題ですが、最近は労働時間短縮問題に押されて、この改善の論議が中断している状態です。ゴルフ場のキャディの場合は勤労基準法、労働組合法の中で、労働者として扱うことができないという判決がでました。このような労働者の場合は組合の組織化が難しい状況です。
 もう1つの例としては、ナマコン業者の事業主が、持ち込み車両運転手4名に出した労働組合員活動禁止が仮処分申請され、控訴審で「ナマコン持ち込み車主は労働者として扱うことができない」という判決がありました。事例のように、このような判決が幾つかあって、ナマコン業者や保険外交員等の特殊雇用職労働者たちの労働組合設立、団体交渉等のような労働組合活動は困難な状況にあります。
 2001年度韓国では労使政委員会の中で非正規職特別委員会が設置されました。その中では非正規労働者の把握のための統計基準を新たに準備し、期間労働者保護法案、勤労監督強化法案等についての論議が本格的に行なわれています。この労使政委員会の中での非正規職特別委員会がつくられた背景には、FKTUの李委員長が断食闘争をして、金大統領と直接交渉した結果であり、金大統領の特別指示でつくられた委員会です。

 (3)公務員や大学教授の、労働基本権の保障問題です。
公務員労組問題については金大中大統領の選挙公約でした。したがって、労働者は金大統領の任期がことしの12月までですので、それまでに立法化されなければ当面は難しいので、現在取り組んでいるところです。社会全体もそうですが、現政権の中でも公務員労組の合法化が、必要だとしています。労使政委員会の中でも行政資源部だけを除いて、公務員労組は合法化しなければいけないという方向で合意がなされています。
 これに対して、時期の問題、労働組合の許容の範囲、組織単位、交渉の対象と手続、方法等に関する意見の合意はまだなされていません。この問題は現政権の決断だけの問題であり、それを受けてFKTUは2002年度公務員職場協議会連合団体が既に労働組合発足を予定しており、それによってまた新たな闘争と民主労総との組織競争も予想されています。組織現状は、FKTU傘下の公労準は120組織、約5万名、一方の民主労総系の全公連の場合は130組織、約6万名です。
 2000年10月31日に教授労組推進企画団が発足しました。その発足の趣旨としては教育改革、私学財団の不正問題の解決、高等教育の問題点の改善等にあります。
 その主要な事項としては、契約制・年俸制の導入の中止、私立学校法による改正、国立大学・専門大学の発展過程での教授の積極的な参加の保障であります。しかし、教育部は教授の労働組合活動は国家公務員法と私立学校法に違反しているとして、法的に措置するという立場を見せています。
 しかし教授労組の団結権は多分保障することで合意すると思います。近いうちに、公務員労組とともに教授労組も合法化されると思います。

(4)不可欠公益事業の縮小問題もありますが、これは言及しません。

 (5)勤労基準法、男女雇用平等法、雇用保険法等の母性保護関連法の制定・施行がありました。これによって母性保護強化、母性保護費用の社会分担化を主要な内容とする勤労基準法、男女雇用平等法、雇用保険法等の勤労女性・母性保護関連法が全面的に施行されました。ことしから母性保護条項は、女性の産前産後休暇期間を今までの60日から90日に拡大、育児休職手当て20万ウォンを支給することを骨子としています。

2.構造調整阻止闘争

 2001年度の重要な事件は、泰光産業という繊維会社での労働争議です。労働組合が会社のリストラに対抗して全面的ストライキに入りました。それに対して経営者側は、電力の切断、断水、懲戒、整理解雇の通告等をしたために、労使間の闘争が増幅されました。
 もう1つの大きな事件は、国民銀行・住宅銀行の合併に関連した問題であります。その中で、両銀行の労組は大会を開催し、強制的な合併への反対闘争を再開しようとしましたが、両銀行間の合併は雇用調整を最大限自制する方向で落ち着き、争議はとりあえず完了しました。

 (1)民営化と構造調整を目前にした地方公企業、公営企業、鉄道等の公共部門の労働組合は協力して、政府の地方公企業の経営革新法案に反発し、地方公企業の労働者の共同闘争のための動きが加速化しています。ソウル地下鉄労組、ソウル都市鉄道公社労組等の27の地方公企業労組は、全国地方公企業労組協議会を結成しています。また、鉄道労組は民営化阻止闘争のための共同闘争本と汎国民対策委員会を構成し、一方では人員整理の副作用等、構造調整の問題点を新たな提起し、また労災事故による対策の準備を行っています。

3.ストライキ政局と労働組合弾圧

 民主労総は賃団協と連携して6大要求を掲げ、6月と7月、2回にわたって連帯ストライキに突入しました。第1次連帯ストのときには、構造調整の中止及び整理解雇の撤廃、非正規職の正規職化、賃金の12.7%引き上げ等を要求しました。2回目のストライキでは、大宇グループと泰光産業のストライキの過程で出た労働組合弾圧の中止を要求しました。
 労使間及び労政間関係が悪化する背景を幾つか申し上げたいと思います。経営者団体は2つありますが、経済界が強硬な対応と方針を打ち出しています。これに対して、政府は労使間の問題で中立的な立場で誠実な協議を誘導するというよりは、経営者側の強硬な対応方針に一貫して肩入れしています。いまだに経営者はストライキ現場に暴力団を雇い入れたり、また警察力を投入したりして、労使間の関係はますます不信感の溝が深くなっています。6月の臨時国会と下半期の国会で処理される労働関係法改正問題において、総労働側と総資本側の対立関係が形成されました。これに関して、労働側は構造調整と労働関係法改正闘争のために、産業別の連帯闘争を最大限組織し、闘争の時期を集中させる予定です。
 民主労総の政権打倒に向けた闘争について申し上げたいと思います。民主労総のいう連帯ストライキは、社会的、国民的に支持を得ませんでした。ストライキによる実益がなかったためです。特に当時は経済不安、史上最大の干ばつに見舞われていた状況の中で、闘争の時期と方法に問題があり、また柔軟性と弾力性が欠けていたために、国民的な共感と十分な支持を得ることができませんでした。逆に90年ぶりの干ばつが重なって非難されることになり、政府に弾圧の口実を与えてしまいました。このような民主労総の課題と教訓はFKTUにも多くの教訓を残してくれました。特に民主労総の内部の上層部中心の一方的な意思決定システム、金大中政権打倒についての闘争の問題点が提起されました。つまり、労働組合の闘争の目標は、全労働者の権益を保護する方向で共通化、現実化していかなければいけないということです。

4.2002年の労使関係の展望

 韓国の2002年度の経済状況は、一般的に景気が好転すると予想されています。アメリカ経済の好転、原材料の価格の安定、消費者心理の活性化、半導体産業の回復の兆し、ワールドカップ特需などの有利な条件が、経済に肯定的な影響を及ぼすであろうと考えられます。これまでいろいろな国際機関が韓国政府に緊縮政策を要求してきました。最近になって積極的な金融財政拡大政策を要求していて、政府もこれに対応して景気浮揚政策を本格化すると予想されます。
 しかし、景気浮揚政策は経済の好転と活性化に寄与することができますが、6月に地方自治体の選挙、12月に大統領選挙、ワールドカップの開催等で景気が間違えれば過熱することも予想され、インフレあるいはバブル経済を誘発する可能性も大きいと見られます。景気の好転、選挙など国際的な注目が集中する時期を迎えて、労働時間短縮、非正規職の保護対策、公務員労組の認可問題などの労働問題を全面に浮き彫りさせる契機を用意するということもある反面、労働界としてはこのような政治日程に押されて、労働問題が隅に追いやられるのではないかと危惧しています。
 政府のほうは、ワールドカップなどの国際的行事を口実に、ストライキ自制、労使平和等のイデオロギー的なものを強調し、労働界の労働基本権の拡大要求を抑制し、賃金など団体交渉を受け入れない状況も予想されます。このような状況のもとでは、政府と資本家の雇用に対する柔軟化政策、非正規職の日常化等で労働者間の賃金、労働条件の格差が更に深刻化すると予想され、労働者の共同利益を争点とした共同闘争の活性化が困難になることも予想されます。

FKTUの活動方針

 2001年2月に全国代議員大会を開催しました。大会は一方的な構造調整の阻止、労働時間短縮の実現、非正規職の保護、公務員労働権の獲得、国民健康保険料の引き上げ阻止、政労関係の改善等のために総力をあげることを決議しました。これらを実現するためにFKTUは全組織の力を結集し、闘争を展開したにもかかわらず、政府は続けて一方的な構造調整を行なってきました。政府は、国民銀行・住宅銀行の合併撤回を要求してストライキで対応した金融労組と、住宅銀行・国民銀行の組合の幹部29名を逮捕・拘禁するなど弾圧を加えてきました。
 去年の初めに発生した大宇自動車組合員暴力鎮圧事件等を通して、公権力の暴力が制度化され、露骨化してきました。過去に見られた軍事独裁時代の野蛮性がまた新たにあらわれました。これに対してFKTUの李南淳委員長は自分の命をかけて断食闘争を展開しました。また5月1日のメーデー行事も、屋内で開催する予定を変更し、大規模集会をソウル駅前で開催して、公権力の行動に対する労働者の力をもう一度示しました。
 また、労働条件引き下げなしの労働時間短縮を求める協議で、制度改善の闘争があまり進展しない状況の中で、FKTUは11月18日、3万名規模の全国労働者大会を開催しました。景気停滞などを理由として反労働者的な姿勢を露骨化している経営者に、アメリカの9.11テロ事件以降急激に保守化している資本家と、調整能力を失った無気力な政府に対し強く警告しました。
 組織化の問題では、これまで韓国でも組織率が何の対策もなしに減少の一途をたどっていた状況が続いていました。最近になり組織拡大のための努力が実って昨年は実りのある1年になりました。しかし、非正規職の組織化、地域別の産別組織の拡大強化等の面では、その結果はまだまだ微々たるものです。
 次に、新規組織及び非正規職の組織化活動について、報告したいと思います。
 FKTUは、その2001年度新規組織活動を、政権と資本の新自由主義的な反労働者政策に対抗し、現場労働者たちの生存権を守るための闘争に一貫して貫きました。昨年のFKTUの組織活動の成果は、第1は公務員労組準備のための具体的な活動の展開です。FKTUは公務員労組準備企画団を結成し、本格的な活動を展開しています。
 2番目は非正規職労働者の組織化のための活動です。組織特別委員会を構成して、参加組織にその指針を出しました。組織化された事例を発掘し、積極的に広報活動を行い、非正規職労働者の組織化のための組織的な共通認識を拡大しました。
 非正規職の組織化と関連し大きな成果があるとすれば、最近一、二年の間に参加組織で非正規職労働者のための権益保護活動を実践しており、1万6,000名の非正規職労働者がFKTUに加入しました。
 3番目にFKTUは10月を組織拡大強化の月として設定し、集中的な組織化活動を展開しています。この期間中に、産別及び地域の幹部と共に、全国の主要都市で出勤時間を利用し、新規組織化のキャンペーンを展開しました。この活動の成果としては昨年1年間で306の新規組織の加入、2万8,690名がFKTUに加入しました。
 4番目は、新規組織事例の報告会を開催し、模範の組織化の事例を発掘し、表彰をしました。これは小さい規模のイベントですが、参加組織の組織化活動に関して動機付けを行なったことでは、肯定的な評価を得ています。
 労使対策問題については、2001年度の賃金闘争の特徴としては交渉締結率が増加したことがあげられます。年度別に出ていますが、去年は67%でした。
 次に、争議行為が増加しました。対前年比で調停申請は240%、争議行為は28.3%、ストライキが83.6%増加しました。このように爆発的にストライキが増加した背景としては、構造調整の結果、雇用の質が悪化したこと、つまり非正規職が増加したこと、労働条件の大幅な後退等による労働組合の事業所の中での主導権が弱くなり、それを利用した経営者側の不当労働行為の急増が考えられます。
 FKTUの労使指導部では不当労働行為を行なった事業所を選定して、集中的に指導しました。このようなFKTUの活動によって、韓国の労働部でも不当労働行為事業所の集中的な指導が行われました。労働部の不当労働行為集中指導は、6月22日から7月31日に行われ、その結果は全部で156件を摘発。その中で85件が司法処理、28件が特別点検実施となりました。
 次に、2002年度の労使関係の展望について申し上げます。昨年と同じく公共部門の構造調整、労働時間短縮問題、非正規職の保護・差別撤廃問題、公務員の労組などの懸案事項によって、年初から非常に不安定な要素を含んでいます。例えば、鉄道労組、ガス労組が2月25日に全面的なストライキを構えています。最近の調査によれば、大手企業の人事・労務担当の役員71.2%が、今年の労使関係は不安定だという認識を持っています。
 鉄道労組の懸案闘争展開について、少し申し上げます。鉄道労組では2001年の1年間、労災によって死亡した労働者が31人もいました。この問題に抗議してソウルにある政府庁舎の前で、またカッチョンにある庁舎の前で、組合員1人が毎日デモを展開しています。1月2日から今まで休まずにデモをしています。
 これについて、FKTUの産業安全局が、鉄道労働者の労災根絶特別委員会を構成して活動を展開しています。鉄道庁が非常に不誠実な姿勢で応じているために、特別団体協議の締結にも難航が予想されます。難航すれば2月25日に全面的なストライキに突入します。
 もう1点、勤労福祉公団労組の天下り人事阻止闘争展開について。これの信任監査は大統領が住んでいる青瓦台の行政秘書官であった人ですが、この人の出勤を労働者たちが阻止するという闘争を無期限に展開しました。この問題では、公団は労働組合の要求を全面的に受け入れて落着しました。