2015年 香港の労働事情

2015年11月13日 講演録

香港労働組合連盟(HKCTU)
コク・チュン・チュイ

香港郵便局労働組合 副事務局長

 

1.労働事情全般

  2013年 2014年 2015年(見通し)
実質GDP(%) 3% 2.5% 2~3%
物価上昇率(%) 4.3% 4.4% 3.7%
最低賃金 3.9ドル 3.9ドル 4.2ドル
労使紛争件数      
法定労働時間 /日 /週 時間外/割増率 休日/割増率

 直近の労働人口関連統計によると、2015年7~9月の失業率は現在3.3%である。失業率は、それぞれのセクターや産業において異なっている。福祉関連、輸出、輸入、貿易部門においては失業率が上がり、逆に宿泊関連サービス部門、飲食産業、飲食や食品・飲料関係のサービス部門、情報通信関連の部門では失業率が下がっている。
 香港のGDPの伸び率は日本のGDPを上回っているが、香港の労働法制は限定的なので、これが労働者に大きなダメージを引き起こしている。
 私が所属している香港郵便局労働組合(UPOE)は、1970年に結成され、現在、1700人の組合員を擁している。郵便局で働いている労働者数は、7500人で、そのうち常勤労働者が5000人、契約労働者が2200人である。組合員はあらゆる等級、地位の郵政職員から構成されており、組合員1700人中、女性は約200人である。
 UPOEは、政治組織や政党との関係は一切なく、完全に独立した労働組合であると同時に、連帯の重要性を理解しており、香港内外においても幾つかの連盟に加盟している。国内では、香港労働組合連盟(HKCTU)に加盟している。以前は国際産業別労働組合組織のユニオン・ネットワーク・インターナショナル(UNI)にも加盟していたが、2014年に脱退した。われわれは、労働者組合員の権利のために活動していると同時に、香港における社会的・政治的な関心を持って活動している。

2.労働組合が直面する課題

 政府の調査によると、労働者の4人に1人は長時間労働を強いられている、もしくは長時間勤務にある。58万人以上の労働者が週に60時間働いている。この58万人には、海外から出稼ぎにきている家政婦として働いている家内労働者も含まれている。香港は、世界で最も労働時間の長い地域の一つとして知られている。 HKCTUは、この長時間労働問題をなくすために、長時間労働の規制を政府に強く促してきている。今年2015年4月に、この長時間労働問題について協議するために、政府が標準労働時間委員会(Standard Working Hours Committee=SWH)を立ち上げたが、問題が解消されるまでの道のりは長い。
 HKCTUは標準労働時間(SWH)に関する提案を行っている。私たちは、週44時間、通常賃金の150%の時間外手当、および最大労働時間(標準労働時間と時間外労働時間を含む)を週60時間とすることを要求している。この提案は、他国の規則に比べてかなり緩和基準である。
 また、幾つかの調査によると、長時間労働によって労働者に悪影響が出ていることが明らかになった。その調査によると、約4割のドライバーが十分な休息時間をとれていないことが判明した。このような状況は、事故を引き起こしやすく、乗客だけではなく、ほかに運転をしている人たちや乗客、そしてドライバー自身も負傷する可能性がある。また、他の調査によると、労働時間が長ければ長いほど、夫婦やカップルの関係に対する満足度が下がることも明らかになっている。
 香港は1841年の英国植民地政権による占領から1997年の中国本土への返還までの間、亡命者と移民の社会であった。香港では、長年にわたり労働者間で労働組合加入という意識が脆弱なことが問題になっている。さらに、中国に返還され、中国共産党から1つの脅威がある。中国共産党は、労働者が労働組合に結集し、その連帯を強めることへの懸念があり、あらゆる手段を使って労働者たちを分断しようとしている。つまり、政府寄りの御用組合(yellow union=イエローユニオン)を使う、あるいは労働政策を通じて、もしくは団体交渉権に関する法律の導入を遅らせ、さらには法定労働時間に関する法律も遅らせる――などの手段が使われている。

3.課題解決に向けた取り組み

 政府は労働時間に関する法制の成立を拒否している。そのため、長時間労働を規制するタイムテーブルやロードマップが存在していない。現在、香港に労働時間立法が必要か否かについて、2年間の調査期間を設けてパブリックコメントの準備を進めているが、法律制定を先延ばしさせるためにあらゆる手段を使っている。一方、役人は不十分な職場の安全条件や家族関係など、労働者やその家族が被っている長時間労働の悪影響についてはことごとく無視している。
 香港においては、全市民が投票できる1人1票の普通選挙制度の導入が見込まれた。香港に真の普通選挙が存在しない限り、政府からの監視を排除することは不可能である。昨年、中国政府の決定に対して、傘を持った学生たちが通りに出てデモ(Umbrella Movement/アンブレラ・ムーブメント=雨傘革命)を行い、抗議の意思を示した。しかし残念ながら、民主化団体による抗議行動があったにもかかわらず、そこから成果・影響力は、今現在ほとんど見られていない。
 過去に実施した最低賃金キャンペーン同様、政府の対応を待っていられないことは承知している。市民による圧力や社会意識の変革は政府に行動を促すための原動力である。人々の関心を引き起こすため、私たちは長時間労働の問題を浮き彫りにしていく。労働組合は、香港の社会にはなじまないとして労働時間規制の導入を否定する経営側に対抗するため、他国の導入例をもっと参考にしなければならない。一般の人々への啓発に加え、法律制定に向けた運動に労働者を結集させていく必要がある。私たちの健康や家族を守るため、より人道的な労働時間をめざしていく。
 私たちは闘いを通じて、労働組合の政治的団結であれ、将来への改革について考えを同じくする人たちと連帯していく。
 香港の議会である立法会でも、労働者の代表と平等な形で議席が割り当てられていないことからも、労働者が搾取されている1つの事例である。労働組合は、香港立法会議選挙、抗議活動、嘆願活動に関し限定的な支援しか得られない中、苦闘している。しかしながら、組合教育の一環として組合員のためのセミナーを継続実施し、その知識や権利の強化を図っている。