2013年 香港の労働事情

2013年6月7日 講演録

香港労働組合連盟(HKCTU)
スリンガティン
Ms. Sringatin

HKCUT特別執行委員(香港インドネシアン人移民労働者労働組合副会長)

 

1.全般的な情勢

 1997年に香港は中国に返還され、中国の特別行政区となった。人口は717万4000人で、1人当たりGDPは香港ドルで28万5403ドル、米ドルでは約3万7000ドルである。
 香港には、香港政府労働省の統計によると、2011年時点で労働組合は総数で766組合が存在し、労働組合員数は79万2887人であった。
 香港には4つの労働組合連合体が存在する。最大の組織は親北京系の香港工会連合会(FTU)で組合員総数は38万人、次は香港労働組合連盟(HKCTU)で組合員数は12万6000人、その他、親台湾系の香港・九龍労働組合評議会(HKTUC)2万4000人、FLUが4万2000人となっている。親北京系のFTUは勢力を拡大しているが、その理由の一つは、政府の支援を受けていることである。また貧困層に対してさまざまなサービスを提供していることも挙げられる。香港の総労働力は380万人、男性が56%、女性が44%の比率となっている。
 香港に海外から移住している外国人労働者は、まず専門職で5万8974人、その中には欧米出身者も含まれている。外国人の家庭内労働者は30万7151人で、出身国で最も多いのはフィリピン、次にインドネシア、タイ、ネパール、スリランカ、バングラデシュである。建設労働者もやはり外国人労働者が多く、主にインド、パキスタン、スリランカの出身者である。
 1997年に中国に返還される前には、香港では法律により労働者の基本的な権利である団結権、団体交渉権、争議権が保障されていたが、返還後、それらの権利は剥奪された。
 社会的保護の面では、社会保険制度がない。70歳以上の高齢者に対しては、日常的に必要な食料品を購入するために1ヵ月1135香港ドルの高齢者手当が給付されている。
 また、労災をカバーする手当、10週間までの有給の産休手当、さらに香港居住者(香港政府が発行するIDカードを持っている者)には医療費補助が支給されている。
 ほとんどの労働者は採用時には、契約労働者として雇用される。特に規定された労働時間はない。また、パートタイム労働者には雇用に関する条例が適用されなく、団体交渉もなく、団体協約も適用されない。
 家庭内労働者は外国から移住した労働者が大半を占め、社会的に排除されているという印象が強い。家庭内労働者は他の職業に移行することを許されていない。まず労働ビザを香港政府に登録する必要があり、期限が切れると最終的に香港には居住することも許されない。
 2013年5月の最低賃金は、時間当たり30HKドル(約338円)である。しかし外国人家庭内労働者、学生、障害者は最低賃金の適用から除外されている。

2.労働組合が直面する問題

 団体交渉に基づいた労働協約や労働時間に関して法的な規定がまったくない。従って使用者側は団体交渉に臨む必要はなく、またそれに責任を負う必要もない。
 最低賃金条例が適用されない外国人移住家庭内労働者は差別を受けている。香港は香港以外の政治勢力からの抑圧を受けている。また香港政府は経済界と親しく、非民主的な政治制度が法律策定や政策策定過程においても支配的である。労働者にとって、香港は厳しい状況にある。

3.課題に対する労働組合の対応

 まず組合員に対しての教育・訓練で能力に重点を置いている。労働組合のリーダーに研修を受講させ、組織化ができるような指導者に育てていくことである。
 次に、企業レベルおよび産業レベルにおいて、加盟組織が行なう労働協約締結闘争に支援を行なうことである。支援活動の中には団体交渉を渋る企業の前での大規模なデモ活動なども含まれる。
 第3に、労働協約、さらには標準労働時間に関して法制化に向けた政策変更を求めていく取り組みがある。
以上の3つの戦略を、加盟組織と一丸になって展開する3か年計画を今後策定していく。
また、労働組合への抑圧に対抗するために労働組合間や労働者間の連帯やネットワークを強めていく。
労働時間法制化を求める闘い
 具体的に、HKCTUとして現在行なっている行動が3つある。ひとつが、労働時間に関する法律制定を求める闘いである。第2が団体交渉と労働協約の権利の推進である。第3が、最低賃金の水準を見直すこと、最低賃金の適用範囲を拡大することである。最低賃金の見直しは、現在、香港政府は2年ごとに行なっている。労働組合は、見直しを1年ごとに行なうよう要求している。
外国人家庭内労働者の特別な問題
 香港において外国人家庭内労働者が直面している課題、特に香港に固有の課題について、さらにどのような国際的な労働組合間の連帯、支援が必要かを指摘しておく。
 まず、家庭内労働者に対する差別である。家庭内労働者は社会的に疎外され、ビザに関しての制限があり、さらには使用者と一緒に居住しなければならない。
 外国人家庭内労働者は、あまりにも行き過ぎた仲介料金の支払いを要求されている。仲介業者にはきちんとした契約プロセスを実施させる必要がある。家庭内労働者は賃金が安く、年金制度もない。
 改善のための具体的な戦略として、地元の香港の労働者と海外からの移住労働者との連帯を強めていくことが大事である。現在、アジア人労働者連盟という組織を設立し、インドネシア、フィリピン、タイ、ネパール、香港の労働者を組織化しているところである。