2010年 香港の労働事情

2010年6月4日 講演録

香港労働組合連盟(HKCTU)
プイ マン レウン(Ms. Pui Man Leung)

HKCTU組織担当書記

 

1.労働事情(全般)

 現在、香港の失業率は年間4.4%に減少しているが、ワーキングプアは依然として香港の緊急の課題の一つである。2009年の政府統計によると、2万8,000人以上の労働者が時給20ドル未満で働いていた。1月当たりに換算すると3,840ドル未満(1月当たり平均労働時間を192時間で計算)になるが、この所得水準は生活保護制度の受給額よりも少ない。なお、香港の全労働者の平均時給は58.5ドルである。
 また、貧富の格差が非常に拡大している。ジニ係数は先進都市の中で最高の0.525だった。
 長い労働時間も課題の一つである。香港の週労働時間は世界で最も長い部類に入っており、公式統計によると、3万8,300人の労働者が週72時間以上働いている。平均は44.3時間である。

2.労働組合が現在直面している課題

 最低賃金の問題については、約10年にわたり闘ってきたが、ようやく政府が最低賃金を設定しようと動いている。
通常、継続的契約で雇用された者は、有給による病気休暇、あるいは年次有給休暇等の給付を受ける資格を有しているが、そうした雇用契約でない労働者は有給休暇がとれない状態となっている。香港では、継続雇用契約による被雇用者とは、最低4週間連続して週18時間働く者と定義されている。使用者は、労働者を3週間働かせた後、休暇を取得させ、その後職場に戻すようにして、「4週連続週18時間」ルールの適用を逃れ、余分な給付金を被雇用者に払わなくてもすむようにしている実情がある。
 また、使用者側は労働者に対する様々な給付をできるだけ削減したいという動機から、いわゆる「偽装自営」という事例が、主に美容関係やトラックの運転手等に見られ、問題となっている。

3. 課題解決に向けた取り組み

 そうした状況に対し、HKCTUは、かなり激しい集中的な形での街頭行動の実施や法的措置をとっている。また、HKCTUは香港における労働時間について様々な調査等を行い、その結果をメディア等に発表している。さらに、「4週18時間」のルールの廃止を求める様々なキャンペーンも行っている。
 また最近では、多くの雇用が非正規化しており、組織化が難しくなっている中で、各地域単位で組織化を行うような方法を採り入れている。その他、HKCTU研修センターでは失業者や少数民族の人たちに対してさまざまな研修コース等を提供しているが、それが労働教育と組織化の重要な取り組みになっている。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 HKCTUは圧力団体としての役割を果たし、自らを体制の外側で活動する労働運動の勢力と位置づけている。労働者の権利と利益を求めた闘いの中で、HKCTUは香港の民主化運動に積極的に参加している。HKCTUはこの運動の一環として、政府の政策に異義を申し立て、労働者と労働組合の権利に対するより効果的な法的保護を強く要求するための手段として、立法議会に代表を送るために闘ってきた。

5.多国籍企業の進出状況と労使紛争の状況

  1. 2010年、キャセイパシフィック航空客室乗務員組合はデモを行い、不当な政策変更(「スワップ・ガイドライン」)への不満を訴えた。この抗議と一連の交渉の後、航空会社と組合は意見の一致を見て合意書に署名した。
  2. 2008年7月以降、ネスレ労働組合は「手数料」の値上げを求める闘いで成果を上げたが、引き続き被雇用者の権利と給付を求める闘いを展開している。2009年2月には組合委員長への迫害に抗議してストライキを行った。その結果、ネスレは委員長の無条件復帰を発表し、労働組合との会合を設定することを約束した。
  3. 2009年には、テレビ製作・放送産業労働組合が4~5%の賃上げを勝ち取り、社内に掲示板を設置して、職員代表苦情申立て制度を確立した。