2009年 香港の労働事情

2009年6月16日 講演録

香港労働組合連盟(HKCTU)
ラム・ウィン・イ・キティ(Ms. Lam Wing Yi Kitty)

香港ディズニーランド従業員労働組合 執行委員

 

一般的な労働事情

  • 2009年の失業率は約4.5%。
  • 金融危機の影響で経済成長は打撃を受け、今後も失業率の上昇が予想されている。
  • 中国の輸出は主として欧米向けであるため、欧米の経済縮小に伴って中国の輸出は大きく減少すると予想されている。香港の関連産業、たとえば金融業も影響を受けることになる。一時解雇や不完全就業が既に発生し、今後も増えると予想されている。
  • インフレ率も6.4%のレベルに高止まりしているが、賃金は3.9%の引き上げに留まった。インフレ率を差し引いた実質賃金の上昇率は1.1%である。今後も経済減速と金融危機が続けば賃金引き上げは物価上昇に追いつけないであろう。
  • 世界的な豚インフルエンザの影響で香港をはじめ世界の観光業が打撃を受けた。一時解雇、強制的な賃金未払い休暇、賃金削減が航空産業や観光産業で常態化している。

労働組合が直面する課題

  • 低賃金:香港の平均賃金は月額で約10,000香港ドル(約1,300米ドル)だが、清掃業、警備関係、宅急便、飲料販売などの草の根の業種では賃金が低い。
  • 長時間労働:香港の労働者の労働時間は長く最低1日8-9時間である。小売、食品、警備関係の労働者は1日12時間働かなければならない。家庭生活や社会生活に大きな影響を与えている。
  • 超過勤務:超過勤務は香港の労働者が直面する最も深刻な問題の一つである。特にブルーカラー労働者に顕著で、補償もなく毎日超過勤務を強いられている。
  • 安定のない雇用:ほとんどの雇用は通常1年から2年の契約に基づいている。
    労働者は契約の更新を得られないかもしれない。雇用は安定していない。そのため労働者は労働組合に加盟するのを躊躇している。
  • ほとんど見られない団体交渉:香港には団体交渉を規定した法律が存在しない。特別自治区立法府の議員でHKCTU書記長のリィー・チェク・ヤンが1,997年に団体交渉法案を当時の議会に提出し、その一部が通過したが、香港返還後その法律は廃止された。労働者との団体交渉を義務付ける団体交渉法が存在しないために、職場では使用者が絶対的な権力を握っている。

課題を解決するためにどのような活動を行っているか

  • 低賃金と闘うための最低賃金法の制定:1998年以来HKCTUは最低賃金法の制定を目指して闘ってきた。昨年の10月、香港政府は最低賃金法を制定すると約束した。しかしその水準は今年末まで決定されないとしている。HKCTUは香港での適切な生活水準を可能にする賃金、すなわち1時間33香港ドル(4.23米ドル)、1か月6000香港ドル(770米ドル)の最低賃金を要求している。
  • 長時間労働と闘う労働時間の制限:HKCTUは週44時間労働と1.5倍の超過勤務手当を要求している。
  • 雇用の不安定性と団体交渉力の脆弱性と闘うために団体交渉法の制定:中国の法律では団体交渉権が規定されていないので、香港政府は返還前に与えられていた権利を廃止し、その後、団体交渉法を制定していない。HKCTUは制定に向けて今後も闘っていく。香港の労働組合にとり、団体交渉権がないのが一番大きな問題である。一方ではヴィタソイ社やワトソン社、ネッスル社などの労働者のストや争議を通して、香港の市民は団体交渉の重要性を認識するようになってきた。争議を通じて上記の労働者は労働組合を設立し、労働条件の改善を目指して企業側と定期的な会談を持つようになった。

香港政府との関係

 HKCTUは香港政府に圧力団体として活動し、香港の労働政策と闘い、かつ監視している。HKCTUとその加盟組織は最低賃金委員会や資格要件枠組み委員会など様々な産業の諮問委員会に参加している。