2002年 香港の労働事情

2002年12月4日 講演録

香港労働組合連盟(HKCTU)
クー ユエンティン

香港労働組合連盟 組織局書記

 

国内の状況

 HKCTUには62の単組労働組合が加盟し、5つの訓練センターがあります。
 香港の情勢は現在、非常に厳しい状況にあります。失業率は高く、7.4%に達しています。労働力人口は約350万7,000人ぐらいで、そのうち失業者は約26万人です。失業率が高い理由は、日本と同じ状況と思いますが、経済情勢が非常に厳しく、企業の倒産が多くなっているからです。企業がコスト削減対策としては人員削減を行なっているのが現状です。大財閥であっても、コスト削減を名目に人員削減を行なっています。解雇されるのは中高年労働者ばかりでなく、若い労働者の失業が増えています。
 15歳から24歳の年齢層の中で、約20%が現在、失業あるいは学校に行けない状態にあります。
 次に、雇用の形態について、三化があります。1番目は散工化で、パートタイム、非正規雇用が増えています。企業は、今までの正規雇用の従業員をだんだん非正規雇用の形態に変えていきます。非常に典型的な現象はサービス業、特に小売業にこういう状態が目立っています。2番目の自化は、雇用形態の1つで、歩合制が進行しています。名目上はある企業に雇用されますが、基本給を保証されていません。こういう現象は、主に輸送業と建築業によく見られます。3番目は外ハン化で、民営化という意味です。民営化は名目ですが、労働者の賃金と福利厚生は全部低下しています。政府系、あるいは公営の企業がこういうパターンをとっています。
 もう一つ問題として、賃金の低下が非常に目立っています。多くの企業が賃金削減を行なっています。2002年第3四半期つまり7月から9月までの香港政府の統計によると、低収入の世帯が大幅に増加しています。そのうち、月給4,000香港ドルを下回っている世帯は2割増加しています。就職難、賃金削減という厳しい状態の中で、多くの香港市民が貧困状態に瀕し、貧富の格差が一段と拡大しています。2001年の国政調査によると、香港のジニ係数は、1981年の0.451から、一番高い記録の0.525に達した時期があります。収入面では、非常に不均衡な状態です。
 オーバータイム、労働時間延長の問題もあります。企業は一方的に賃金を削減し、その一方で労働時間を増やしていくといった厳しい状態です。こういう時間外労働は無給です。例えば不動産業、輸送業、飲食業、ホームヘルパーの労働時間は、既に1日12時間になっています。
 現在、香港市民が政治面で非常に関心を持っているのは、香港基本法23条改正の問題です。特別行政区が基本法23条改正を実施する理由は、治安面での問題を防ぐためといっています。しかし、香港市民から見ると、香港基本法23条改正の文書の中には、人権侵害の内容がたくさんあると判断しています。香港基本法23条改正がどのように労働者の権利に影響するのかは、後ほどまた、より詳しく説明します。
 政府には財政難の問題があって、政府の機関でも人員削減の提案があります。政府としても、まず1つは行政改革、公務員の人数の削減を目指して、改革していますが、方法としては、早期退職希望者の募集と公務員の給料の削減という2つの方法をとっているようです。

HKCTUの活動方針

 政治・経済の厳しい状態の中で、HKCTUは労働者の権利と利益を擁護するために積極的な活動を展開しています。労働法は基本的に、労働者に団体交渉権と争議権を認めていますので、労働組合としては積極的に、経営側に労働者、組合員の団体交渉を要求するよう努力しなければなりません。また、最低賃金の保障、労働時間の上限の制度を導入について努力しています。労働法が基本的に、組合員あるいは労働者の基本的な権利を保護していませんので、労働者は過酷な条件の中で労働しているのが現状です。
 労働組合は香港基本法第23条の改正に断固として反対しています。その改正案には、国家の安全を妨害する行為を防止するための条項が入っているのは確かですが、また、1つの条項として、国家の分裂を防止する条項も入っています。非合法な手段により、中国全土あるいは一部をを分裂させようとする行為は、国家分裂罪になるということです。これが基本法23条改正案の内容の1つです。非合法な手段というのは、企業、あるいは労働組合の運動、例えばストライキや集会の活動などもその範疇に入っていると解釈されるおそれがあります。また、外国の組織あるいは団体が香港で活動することも、この条例の解釈の範疇に入るおそれがあります。
 こういう活動がある限り、香港の一部の団体あるいは個人が、こういう活動に対して支援するということが必ず出てくると思いますので、その意味では、基本法23条改正がもし成立するのであれば、正常な香港市民の活動にも影響が出るおそれがあります。また、募金活動も違法になる可能性もあります。もっと強調したいことは、国家反乱罪を取り上げて説明したいと思います。例えば親中国政府派ではない一部の刊行物が違法になる可能性、もあります。この基本法23条改正については労働組合の立場から見ると、労働組合の活動を深刻に侵害する内容がたくさん含んでいると考えています。
 労働法では、最低賃金と生活条件が保障されていません。労働組合としては、低収入家庭への助成金支給を要求したいと思います。ヨーロッパの方式を導入し、減税によってそのような制度を導入して、低収入家庭に補助金を支給する。当然こういう低収入の家庭にとって、税金を納めるのは大変なことです。ですから、納めるべき税金と納められる金額の差を政府が補てんするという方法を通して、低収入の家庭を再建し、より豊かな生活ができるように努力しなければならないと考えています。

具体的な活動

 毎年恒例となっている国際労働組合権擁護週間を利用して、積極的に活動を展開しています。団体交渉権を要求すると同時に、いろいろな場でセミナーを開催し、労働組合および組合員に対して教育あるいはトレーニングを行っています。資料が配布されていると思います。これはHKCTUが使っている今年の活動内容の広報誌です。こういったセミナーを行うほかに、社会的な活動も展開しています。
 またHKCTU書記長リ・カクジンは香港立法議会の議員をしていますが、彼を通じて議会で活動を展開しています。香港基本法第23条改正反対運動を展開するために、幅広く、労働組合、労働者に運動の幅を広げるために様々な広報活動を行なっています。まず1つは、この基本法23条改正に関する会議を開催します。また、保安局の局長を通して、基本法23条改正反対の要望書を提出します。この反対運動に対しては、労働組合のみならず、ほかの民間団体、例えば香港の弁護士協会も反対運動に参加しています。また、街頭で反対のパンフレットを配布します。

香港・九龍労働組合評議会(HKTUC)
ホ ピンワー

香秘書職務・行政職員関連労働組合 委員長

 

労働組合の状況

 HKTUCは1949年に設立された組織です。長い歴史がありますが、現在は老朽化しています。HKTUCには52の労働組合が加盟しています。組織率は低下しています。
 労働組合の状況に関して簡単に説明します。政治面で、現在の香港の立法会(日本の国会に相当する)は、香港市民の直接選挙によるものではありません。香港特別行政府の長官もまた、香港の800人からなる選挙委員会により選出されています。そういう意味では、香港基本法23条改正は、香港にもとからある自由と人権に影響を与えるものだと考えます。香港では貧富の差が一段と拡大しています。労働者の平均賃金は、1997年と比べると30%低下しています。
 HKTUCは、香港基本法第23条改正に反対しています。また減税によって経済成長を促すように要求しています。行政改革では、行政長官の、香港市民による直接選挙を要求しています。労働組合として、時代遅れの労働法を再検討するよう要求し、以上述べた要求と合わせて以下の活動を展開しています。
 1つはフォーラムを開催し、香港基本法第23条改正を議論し、労働者、労働組合の意見を反映すること、また政府の政治改革を加速するように働きかけます。
 香港の現在の完全失業率は、2002年の第2四半期時点で完全失業率7.7%に達しています。また15歳から19歳までの青少年労働者の失業率は、23.4%に達しています。統計データによると、香港の就業構造は、第3次産業、の就業人口が一番多くおよそ100万人です。第2次産業は20%に過ぎません。
 HKTUCの財政面は、HKCTUが、労働者に対する訓練事業を行なうことによって収入を得ているのと違って、そういう類の事業を行なっていません。財政資源はすべて組合費です。また、HKTUCには、専属役員が1人しかいません。ほかの役員はすべて非、専従者でボランティア的に活動しています。

2002年2月20日 講演録

香港・九龍労働組合評議会(HKTUC)
ロー イー ワー

香港東華三病院従業員組合財政部長

 

国内の状況

 香港の主権は1997年に中国に返還されました。現在は1国2制度を実施しています。市長は行政長官です。昔の香港総督に代わって、行政長官が行政の首長となっています。しかし行政長官はわずか800人の投票によって選ばれており、1人1票の選挙で選ばれてはおりません。したがって人気はそれほど高くないのが実情です。
 香港の法律および司法制度は、すべてイギリスの制度をそのまま受け継いでいます。基本的に香港は司法の独立を守っていますが、法律の最終的な解釈権は中国大陸の全国人民代表大会が持っています。したがって、これは香港の司法の独立に重い影を落としています。香港の立法府の選挙は4年に1度行われます。2000年の立法府の選挙において、民主派は全60議席中のわずか20議席しか勝ち取ることができませんでした。そのため政府を牽制する力を持っていません。残りの30余りの議席は、すべて新政府に偏っている人、あるいは司法協会から選ばれていますので状況は厳しいものがあります。
 今年の3月に行政長官の選挙が行われる予定です。現在、立候補しているのは現職のトウ・ケンカ長官です。中国の指導部から公の場で何度も氏の再選を支持するという発言がありました。トウ・ケンカ長官は以前、司法協会で仕事をしていました。したがって彼が再選されると、今後5年間香港の労働法及び労働者の権益に大きな改善を期待できないというのが現状です。
 次に経済状況について申し上げたいと思います。
 経済状況は、2001年の9~11月の3カ月間の平均失業率は5.8%でした。2001年の7~9月の失業率より0.5%上昇しました。当時の上昇率は5.3%でした。これは2000年の同時期、つまり2000年の第3四半期より1%の上昇です。2000年の第4四半期の失業率は4.8%でした。失業率の悪化は現在も続いていて、政府から何の施策も出されていません。失業を苦に自殺した人は昨年は450人に達し、これは史上最高でした。
 また政府の財政赤字は年間600億香港ドルに達しています。政府財政の赤字の主な理由は、土地売買の収入の減少、税収の減少などによるものです。GDPに占める政府の財政支出は23%にも達していて、これは多くの先進国よりも高くなっています。
 また、香港の貧富の格差は、世界においても最も深刻な地域の一つに数えられています。
香港では5年に1度人口の国勢調査を行っています。それによると中間層の月平均の世帯収入は1万8,700香港ドルに達しています。しかし貧しい人はますます増えていて、貧富の差を示す指数は、これは高くなればなるほど貧富の差が広がっているということを示している指数ですが、この指数が上昇の一途をたどっています。この指数は多くの先進国よりもずっと高く、南米のブラジルやアルゼンチンよりは低い程度です。
 金融危機は香港の多くの貧困者に対して、多くのしわ寄せを与えました。1月のイギリスの経済誌「エコノミスト」の調査によると、香港の物価指数は世界3位になっています。世界3位というのは東京と大阪に次いで世界3位ということです。香港の貧しい人たちの生活はますます苦しくなっています。
 香港の日本商工会議所は昨年の10・11月に、香港に進出している400の日本企業を対象にアンケート調査を行ないました。8割の回答者が、香港の投資環境を非常に望ましいと回答しています。理由は、経済に対する政府の規制が比較的少ない、税率が低い、社会が安定していることを挙げています。
 しかし香港に進出するデメリットは、地価が高い、人件費が高いという回答もありました。HKTUCの見解は、人件費が高いのは、ごくわずかの管理者層の人件費が高いということで、一般労働者の賃金は1997年と比べて2割ほど低下しています。

港労働組合連盟(HKCTU)
タム ワイトウ

運輸・配達労働者組合委員長

 

 HKCTUは1990年7月に発足しました。現在57の単組、15万人の組合員から構成されています。HKCTUは完全に独立した組合組織です。政党や政府、あるいは経営者から独立しています。1997年イギリス政府が香港から撤退して、香港は中国に正式に返還されました。1国2制度、香港人による香港の統治、これは非常によい理念ですが、しかし現在の行政長官の指導のもとでの行政府は、極めて能力の低い人ばかりで構成されています。行政長官から一般の役人に至るまで、すべて中国大陸の顔色を伺っています。したがって、香港人による香港の統治は名ばかりのものになりました。例えばトウ・ケンカ長官は一時期住宅政策の改革を唱え、その政策のために地価の暴落を招きました。多くの家庭は負債を抱えるようになり、人々は非常に不安な状態に陥りました。
 また政府は社会責任を果たそうとしません。公的サービスを民間部門に委託するとか、あるいは非正規職化、契約化にし、そのため社会は一層不安定になっています。政府は公的サービスを民間企業に委託しますが、しかし人々の労働内容は変わっていません。労働時間はますます延び、賃金は大幅に切り下げられ、生活に必要な基本的な賃金も得ることができません。また、非正規職化によって人々はますます不安定になっていて、生活、仕事も保障されていません。
 また契約化により、教授、学校の先生、専門職の人たちも不安定な状況の中にいます。このような政策は社会の根幹を揺るがす政策と言えます。人々が安定した暮らしができるのは成功した社会と言えます。今の香港政府は極めて無能であり、人々の自信を根幹から揺るがしています。様々な労働者がこのような困難に直面する中で、政府は経済の困難を口実に、ますます労働者を搾取するようになりました。人々を搾取して自分の利益にするような行為が現在増えています。
 香港の貧富の格差は非常に深刻化していて、先進国の中でも最も深刻な地域と言えます。貧富の格差をあらわす指数は0.525になっています。貧困者の家庭はますます増えています。財閥などは自らの経済の力に頼って、政府の政策を支持しています。政府の政策は資本家に偏っています。政府は人々に忍耐を求めていますが、政府は投資環境をもっとよくするために、香港の競争力を高める必要があるなどと言っています。ダウンサイジング、労働時間の延長、そして労働賃金の削減なども唱えています。企業は、そのような経営コストを労働者に転嫁しようとしています。大財閥はますます莫大な利益を得ることができます。
 比較的豊かに暮らしていた香港の人々は、現在不安定な状態に置かれています。もしかしたら明日失業するかもしれないという状況の中、人々は買い控えしていて、香港内の経済がますます萎縮、縮小しています。このような悪循環の情況にあります。多くの企業、また多くの商店もそのような状況にあります。政府は対策として企業を北のほうに移転すると言っています。したがって、香港の資金の流失、また多くの失業者をさらに生み出しました。2002年初めに公表された失業率は6.1%に達しています。実働時間が規定の就業時間よりも短いところは3%に達しています。
 このようなデータはあくまでも政府によって公表された数字ですが、HKCTUはもっと高い数字になるはずだというふうに推測しています。旧正月、新節の前に多くの企業が倒産し、人員削減、賃金を削減するようなことがありました。旧正月が明けた今、失業率はさらに高くなったはずです。香港の社会はかつてないほど不安な状況です。行政長官の再選に関して、人々は何ら望みを持っていません。将来に対しても明るい見通しを持っていません。
 現在、世界は激動の時代に入っていて、グローバル化も労働者に大きなインパクトを与えています。したがって、世界の労働組合はさらに連帯を強める必要があると思います。グローバル化がもたらすインパクトを少しでも少なくするために、労働者・労働組合は連帯を強める必要があります。21世紀に入って科学技術はさらに進歩し、コンピュータなどの先端技術の使用によって労働の効率も高まりました。それにより人員、資源が大量に余るというような現象をもたらしました。我々は科学技術がもたらす成果をともに享受し、そして労働時間を減らすべきだと思っています。と同時に家庭生活や消費生活の時間を増やし、これによって経済の活性化も実現できると思います。人員の過剰、これは雇い主にさらに労働者を搾取する口実を与えることになります。私たち香港の労働者は内外のそのような衝撃を前に、さらに勇敢に立ち上がる必要があると思います。

リキムマン
ケータリング、ホテル産業従業員一般組合中央執行委員

 

 政府は公的サービスの民間委託、また非正規職化を積極的に推し進めていますので、香港の労働者は現在非常に不安定な状況に置かれております。香港では、団体交渉権は認められていません。労働者の権利は主として労働条例によって守られています。多くの使用者は法律の盲点を使って、わざと労働者が法令に保障されないようにしています。香港の労働条例では、労働者は毎週18時間以上連続4週間の労働を続けてからのみ、法令の保護を受けることができると定められています。多くの使用者がこの法令の盲点を利用しています。よく使われている手口は毎週の労働時間は18時間未満にすること、あるいは最初の3週間を長い労働時間にして、4週目の労働時間を18時間未満にするとか、あるいは4週目を1週間休ませるという手口を使っています。
 特にホテル業と飲食業の労働者が、その被害を受けています。まず、ホテル業について申し上げますと、大手ホテルの宴会部はパートタイムの労働者を雇います。パートタイムの労働者は有給休暇がありません。昨年労働組合の努力により、600人余りのパートタイマーが有給休暇を勝ち取ることができました。しかし、ホテル側はこれに対抗するために、最初の3週間は勤務時間を長くして、4週目は18時間以内にすると手口を使いました。こういう手口が続きますと、ホテルで働いている非正規職の労働者は、永遠に労働条例の保護を受けることができなくなります。基本的にパートタイマーは日雇い労働者ですので法令の保護どころか、収入にも響きます。
 宴会部のほかに、多くのホテルはランドリー部はじめ多くのサービスを、外部に委託するようになりました。多くのホテルは子会社を設立して、このような仕事をそれらの子会社に委託するようになりました。そして、ホテルから解雇された元の従業員を非正規職として雇い入れるという方法をとっています。もちろん非正規職ですので、労働条件、福利条件、賃金も大幅に引き下げられました。しかし勤務時間は延長されました。ホテル内の業務に関しても、パートタイマーに対して賃金の削減、有給休暇の取り消しが行われました。中小企業、中規模あるいは比較的小さい規模のホテルに関しては、ボーナスの削減、あるいはホテルの運営次第によって従業員の賃金の引き下げを行なうこともあります。
 レストラン業、飲食業はもっとひどい状態です。香港の雇用条例は、1週間働いて必ず1日の休みをとらなければならないと規定しています。しかし、多くのレストラン業の従業員は1カ月に3日間しか休暇がありません。多くの労働者が離職後あるいは解雇された後、消化しなかった休日について何らかの保障を求めて現在、戦っています。この保障に関して香港の最高裁判所で現在争われている案件があります。似たような訴訟が他にもあり、現在最高裁判所の判決を待っている状態です。十分な休暇を従業員に与えないというのはレストラン業界の問題ですが、そのほかに経営不振で従業員の賃金支払いを遅らせているところもあります。遅らせて、突然店を閉めてしまうこともあります。
 このような状況を改善するために、香港政府は2000年に積立金制度を公布しました。この制度のもとでは労働者と使用者は、毎月各5%負担しなければならないと決めてありますが、多くの使用者はこの5%を払っていません。閉店した後、初めてこのような積立が全く行われていないことに気づく労働者もいます。また解雇を恐れて使用者に何も言えなく、泣き寝入りするような労働者もいます。

労働組合の活動

 このような状況の中で労働者の権利を勝ち取るために、労働組合は昨年5月18日にデモを行いました。ホテル業界の連合会に抗議の親書を手渡しましたし、またほかの団体と連携をとりながら、政府に関係法令の改正を求めています。先ほど説明しました4週間18時間を規定した法令を撤廃するよう求めています。
 次に、老人ホームで働いている従業員の現状について申し上げます。こういう社会福祉関係の老人ホームは基本的に政府が出資している団体で、すべての支出は政府が実費負担することになっています。従業員の報酬も、労働条件も公務員に準じていました。1999年に香港政庁は一括払い制、毎年一定の予算をこのような団体に任せる一括払いにして、あとはそれぞれの団体の運営に任せるというやり方をとりました。こういった団体の運営の自由度も大幅に改善され、余った資金の25%を貯蓄に回すことができるようになりました。
 社会福祉団体の新しい制度が実施された後、この25%の資金の運営に関して、もとの25%の資金を運営できるようにいろいろな方法をとりました。元の従業員が政府の公務員の給料に準じる条件を持って、高い給料を支給されていました。そこで彼らの存在はこのような団体にとって大きな負担となりました。彼らが病気になっても休暇がとれないような状態です。またこのような福祉団体はもっといろいろな資金を節約するために、従業員にいろいろな技能が身につくように要求していて、一般職の従業員にも看護とか介護の仕事をするように求めています。
 また政府は新しく入札制度を導入しました。入札した団体が必ずしも高いサービス内容を提供できなくても、政府は資金を削減するためにこれからも引き続き入札方式をとり続けるでしょう。入札も一定の期間が決められていて、雇われた労働者もすべて契約制に切りかえました。今後老人ホーム、社会福祉団体だけではなくて、今まで政府が行ってきたほかの福祉サービスも民間企業に委託するような動きになっています。
 労働組合は、今後こういった組織で働いている組合員を代表して、引き続き彼らの権利のために闘い続けていくつもりです。制度の改正により、正規従業員の人数がますます減少し、労働組合も状況の流れを見て、昨年規約を改正し、正規職、契約労働者、非正規職の労働者がすべて組合に加入することができるようにしました。今後もいろいろな業界の労働者がさらにいろいろな問題に直面するでしょう。労働組合は教育活動、組織活動を強化しながら、さらに組織の拡大に力を入れていくつもりです。連帯を強め、政府に労働条例の改善を求めていき、パートタイマー、日雇い労働者も労働条例の保護を受けられるようにしていくつもりです。また老人ホームで働く人に関しては、これから入札書に労働時間、労働条件、報酬に関して必ず明記するように、政府に求めていくつもりです。