1997年 香港の労働事情

1997年12月11日 講演録

黄徳遇(ウォン・タク・ユ)
スワイヤー・コカコーラ香港スタッフユニオン(HKCTU加盟)議長

 

 香港は1997年の7月1日、植民地支配から中国に返還されました。しかし、返還されてからも、植民地支配のようなやり方で、労働組合運動に対して様々な制限を強いております。そして、民主とか自由の度合いの面では、むしろ返還される前より厳しくなっているというのが現状です。その中でも代表的な例の1つとしては、返還直前に、香港の立法局によって団体交渉権を認めるという法律が通過されたんですけれども、返還されてから、それが今の臨時立法会によって廃止されだということです。これによって、労働運動に従事している組合員は大きな打撃を与えられました。労働運動に参加することによって、経営者側による不当な解雇を恐れています。
 そして、経済の面では、返還されてから、株式市場の下落、不動産市場、消費の停滞などによって、いろいろな面で影響を受けています。幾つかの大きな企業も倒産して、失業率も高くなってきました。このような状況はしばらく続いていくでしょう。
 香港の労働組合は、大きく左派、中間派、右派に分けられると思います。そして、その中で中間的な立場に立って労働者の利益を代表するのは、おそらく香港職工会連盟ではないかと思います。私たちのような独立系の労働組合は、政治的な原因で、返還されてから様々な圧力を受けております。そうしますと、私たちの労働組合の発言力も弱くなってきています。1つの例として、最近、香港ヤオハンが倒産しました。その際、失業した従業員がたくさんいますが、最初、私たちの組織のほうに応援を求めたのですが、結局、途中で左派の労働組合、総工会のほうに引っ張られて、向こうのほうの力を借りるようになったということがありました。こういう現状ですので、これからの運動の展開にはいろいろ困難な局面が出てくるのではないかと思います。

徐穎(ツォイ・ウィン)
被服産業・事務・小売業労働者一般組合(HKCTU加盟)執行委員
HKCTU再就職訓練センター勤務

 

 私は香港職工会連盟の組合員であり、香港職業訓練センターの職員でもあります。私の勤務する職業訓練センターは、1994年に設立されました。この職業訓練センターは、主に転職する人、あるいは失業者などに対して職業訓練を行っております。新しい仕事に適応できるように訓練をしております。最近、大陸から新しい移民がたくさん香港に来ております。このような大陸からの新しい移民は経済的に弱い立場に立たされておりますので、私たちの職業訓練センターは、彼らが1日も早く香港の社会制度などに適応できるよう、手助けをしております。また彼らに、職業を探すこととか、職業の技能などの面でも手助けをしております。また就職してからも、いつも彼らの相談役にもなっております。
 そして、この訓練センターの対象は主に学歴の低い人です。彼らはわりと適応力が弱いのです。彼らに新しい技能を教え、新しい職業を紹介してあげます。これらの人たちは、訓練センターの訓練を終えて就職してからも、いろいろなことがあったらまた相談に戻ってきております。そうすることによって自分の職業を長く続けられるようにしております。
 訓練センターは、市の中心地の便利なところにあります。今だんだん組織を拡大して、不便なところにもセンターを設置するように努力しております。私の所属している香港CTUは独立系の労働組合であります。返還されてから政治が変わりました。訓練センターは政府から資金の援助を得ています。しかし、返還されてから、私たちの労働組合の政治的な立場が原因で、政府からの援助が減らされています。今、市の中心部のセンターを拡大しようと考えていますが、これからおそらく資金面では様々な困難が出てくるのではないかと心配しております。そして、現在、部分的には、運営資金の面で、下部組織の労働組合からの援助も得ております。訓練センターを拡大して、もっと多くの訓練を必要としている人に手を貸したいと考えております。もっと社会に貢献したいと考えております。

鍾松輝(ツォン・ツォン・ファイ)
香港九龍労働組合評議会(HKTUC)教育部門次長
香港中華バス労働組合(HKTUC加盟)議長

 

 1997年7月、香港が中国に返還されました。返還されてからも、本会の方針などは変わっていません。労働者の利益を代表すると同時に、自由と民主の発展をかち取ろうと努力しております。そして、中国側の、香港の自由と民主の制限に対して反対しております。私たちは、さらに他の民主的な労働組合と協力関係を広げようと考えております。
 次に、過去1年間の我々の労働組合の行った主な仕事を報告したいと思います。私たちの活動方針のうちの大きな1つは、外国人労働者の導入に反対するということです。外国人労働者を導入することによって、現地労働者の就職の機会が減らされてしまいます。これによって、現地の労働者の失業率が高くなっているのです。香港では、失業者に対する保険などは完備されていません。大きな仕事としては、街頭の署名運動を行いました。これは、主に政府が団体交渉権を廃止するということに対して行ったものです。また、香港政府に退職保険制度の完備を促すということです。
 返還されてから、公安条例の修正案がありましたが、それに関する私たちの見方を新しい特別行政区政府に対して表明しました。その公安条例の修正案では、集会とデモの自由に制限をかけています。
 1998年、香港では選挙が行われる予定ですが、それに対する私たちの労働組合の見解というものも新しい政府に提出しました。これについてちょっと説明しますと、95年に直接選挙の枠を広げましたが、1998年の選挙方式では、労働者の直接の投票が制限されています。これは、労働者が直接政治に参加する権利を制限しているものです。
 生活の面では、税制面の改善を要求しています。市民の所得税の軽減などを要求しております。これらのことについて、政府に意見書を出しました。
 労働組合自身の活動については、幾つかの討論会を開きました。また、昨年は1つのセミナーを催しました。労働法令の勉強会などについてのセミナーをやりました。およそ45名の若い労働組合の幹部がこのセミナーに参加しました。また、英会話学校なども催しました。そして、これらのセミナーに参加した人を中心に、労働者たちの組合に対する意識を高めようと考えております。また、組合では電話相談なども行っております。そして、一般的な市民の労働組合に対する認識を高めるために、幾つかの展覧会もやりました。これからもっと組織率を高めていくというのが私たちの目標です。
 以上のようなことを達成するためには、人的な面でも、財政的な面でも、多大な課題が残っております。私たちの労働組合の専従職員は4名しかいないのですが、他の多くの役員は、仕事を持ちながら、休み時間とか夜の時間を利用してやっております。今、毎月の活動資金はぎりぎりという状況です。香港は経済的に発達している地域ですが、労働運動の面では発展途上という感じです。