2014年 中国の労働事情

2014年12月5日 講演録

中華全国総工会(ACFTU)
秦 少相(Mr.Qin Shaoxiang)

中国労組ネットワークセンター主任

 

 中華全国総工会(ACFTU)は、中華人民共和国の中で唯一公式な労働組合で、中国の憲法を基本的な法律として労働組合とその規約、法律に基づいて義務を履行している。中国の労働組合の基本的な義務は、労働者の合法的権利を擁護することにある。

1、企業における工会(労働組合)組織化と賃金交渉の展開

 中華全国総工会は、2011年の初めに、企業が労働組合の組織化推進と賃金の団体交渉推進、つまり組織化と団体交渉の「2つの普及」を3ヵ年計画で制定し、公布した。この3ヵ年計画では、長年、労働組合の設立を拒否しているアメリカのウォルマートで、労働組合をつくることに成功した。2013年までに、企業ごとに組織された単組の数(労働組合の末端組織=基層工会)が276万組合に達し、組合員数も2億9000万人に達した。団体協約の締結は245万件、企業数は612万社、賃金に関する団体協約の締結は133万件で、1億6000万人の労働者をカバーしている。
 また郷鎮(街道:日本でいうと町にあたるもので町工場など)工会、村(居:村工場など)工会、企業工会という組織ネットワークの基本形成も全国で進み、末端の企業ごとに組織された工会連合会も12万1800団体が組織され、小企業の320万社をカバーしている。さらに市場工会(市場で働いている労働者の労組)、プロジェクト工会(短時間のプロジェクトで雇用されている労働者の労組)、ビル工会(ビル全体の労働者の労組)、農業産業連工会など、多様な組織形態で組織されている。これら末端組織の第一線で活躍する3万2000人の専従者が運営制度と活動方法の転換を強力に促進している。

2、労働組合の権利の保障とその発展に着眼し、労働者の権利を擁護するという労働組合の考え方

 労働組合を組織することは、より労働者の権利を守ることである。近年、すでに膨大な組織のネットワークと幹部のチームを擁する中国の労働組合は、権利の擁護をもっと規範化、制度化、法制化して軌道に乗せることに力を入れてきた。ここ数年、ACFTUと各レベルの労働組合は、『労働組合法』、『労働契約法』、『婦女権益保障法』など法律の執行、監督活動に参加し、労働者の法律援助センターなど、権利を擁護するためのサービスも完備してきた。ここ5年来、各レベルの労働組合は、労働争議の案件の受理が約194万5000件で、調整に成功した案件は94万9000件に上る。

3、困難労働者の救済資源を獲得し、就労サービス活動を幅広く展開

 1992年から毎年、各レベルの労働組合は元旦や春節の期間に広く貧しい労働者の家庭を訪問し、救済の活動を行ってきた。今日までで、すでに23年になる。この23年間、全国各レベルの労働組合は、「ぬくもりを届ける」活動の資金として累計で481億5000万元を集め、延べ212万社の課題を抱えている企業を訪問、恩恵を受けた貧しい労働者は、延べ1億1000万世帯となった。さらに小口融資として28億元の資金を提供し、40万人以上の労働者の起業を支援してきた。
 中国の労働組合は、2011年から全国で就職支援月間活動を展開している。2013年の第3回全国労働組合就職支援月間キャンペーンでは、技能訓練や就職あっせんなどの活動を通じて、無料で就職サービスを受けた労働者は928万3900人となった。職業技能訓練では、延べ129万人以上がこの訓練を受け、100万人以上の労働者に1年以上の期間、労働契約の締結をサポートし安定した就業が実現した。

4、労働技能コンテストを深化させ、労働者の技術・技能訓練を強化する

 この3年間の統計で各レベルの労働組合は、労働者の技能強化を通して、技術・技能コンテストを20万回以上開催し、延べ6460万人が参加した。また、さまざまな技術研修やセミナーも25万回以上開催して延べ2200万人が訓練・研修を受けた。これにより589万人の技術レベルが向上した。
 さらにこの3年間で労働者から合理化改善提案を募集し、合わせて3300万件以上の提案が集まり、労働者による発明などは41万件以上にのぼった。労働者との技術契約は7万件以上あり、これらの発明や改善、技術の実用化により、62億9600万元の経済効果を実現している。

5、根本から参加を強化し、積極的な広範な労働者の意見を反映する

 国のレベルにおいて、中華全国総工会は全国人民代表大会の常務委員会、国務院の関連中央省庁との間で定例の連絡会議を持っている。このような中で、積極的に労働者の要求・要望を集約し、労働関連法制の立法や修正・改定などを進めてきた。近年では、『労働契約法』、『労働紛争仲裁法』、『社会保険法』、『安全生産法』、『職業疾病防止法』、『労災保険条例』、『女性労働者労働保護特別規定』など、数十件以上の労働者の利益・権利をめぐる法整備や改定、さらに条例の解釈などにかかわってきた。特に労働契約法の改定案に関しては、55万件以上の意見が集まった。そのほとんどが労働組合と組合員からの意見であった。さらに労働組合は、刑法改定案の修正にも積極的にかかわり、不当な賃金不払いは正式に犯罪行為だということが決められた。長年の努力の結果、2011年に賃金不払いのような悪質なケースは、犯罪行為として認定されたのである。
 現在中国の人民は、中華民族の偉大な復興をめざしてチャイナドリームのために努力している。昨年10月に中華全国総工会第16回全国大会が開かれ、労働者を幅広く組織し、この「中国の夢」の実現に向けて努力することを中国の労働運動のテーマとして決定した。
 最近、今後5年間の労働組合の活動などについて計画をまとめた。目標のひとつは、2018年年末をめどに、全国各レベルの企業で労働組合の数を820万増やし、労働組合員を3億3000万人にすることにしている。さらに団体交渉の活動についても今後5年間をかけて、労働者の収入増加、所得格差の是正、労働関係の矛盾解消のため、積極的かつ徹底的に団体交渉の役割を果たしていくことにした。これによって労働者がより高品質な就職(良質な雇用)ができ、さらに合理的な所得が得られることをめざしている。また十分な社会保障の確保、法律で与えられた民主的権利の保有、文化的かつ環境に優しい生活の実現、ディーセント・ワークの実現などを労働組合の目標にしており、これらは世界各国の労働組合の共通な目標であり夢でもあると考えている。
 中国の労働組合は、国内のさまざまな改革に積極的に参加し、経済の持続的な発展、調和のとれた社会、社会の安定を実現する上でも重要な役割を果たしていく。その過程で、労働組合自身の改革・改善も図り、世界の労働組合とともに、国際経済や金融、政治秩序の不合理を改革していくこと、さらに公正かつ合理的で民主的な調和のとれた国際労働運動の新しい秩序を推進したいと考えている。
 中国の労働組合は今までどおり平和、成長、協力、労働者権利の保護を旗印に、国際、各地域、各国の労働組合との交流・協力を強化し、ともに人類の平和と発展のために努力していきたいと考えている。