2013年 中国の労働事情

2013年7月26日 講演録

中華全国総工会(ACFTU)
倪 燕芳(Ni Yanfang)

宣伝教育部副部長

 

 中国の労働組合(中国では「工会」と言う)工会は、中国共産党の指導の元で、労働者が自発的に結集した労働者階級の組織であり、中国共産党が労働者に向けて発信する際の橋渡しである。また、国家政権の重要な社会的な柱であり、組合員と労働者の利益を代表するものである、と中国の労働組合の規定・総則の中で記している。中国工会の基本的な責務は、積極的に労働者の合法的な権益を守り、労働組合の発展を促進することである。
 10年来中国工会は、ウォルマートの牙城を崩し、その中で労働組合をつくり、中国に進出した世界売上げ上位500企業において賃金団体交渉制度を構築した。組合員は2億8000万人に達しており、全国で266万の企業別労働組合がある。私たちは、中国の特色である社会主義の工会の発展の道筋を見つけ出し、世界的な労働運動の中でも注目され、中国の工会の力強い働きぶりを証明したといえる。
 中国労働組合の4つの側面から、労働組合の現状、直面している問題、それに対する対策、特徴などについて述べる。

第1 中国の労働関係の現状と特徴

 現在わが国の労働関係は、全体的に持続・安定のもとにある。市場経済の構造にふさわしい調和のとれた労働関係の仕組みが次第に形成されている。総体的に良い方向で、制度も徐々に整備され、発展的な体制を見せている。(中国の国有企業では経営者も組合員となることが出来るため、日本のような労使関係と異なる部分が多い)
 その中の一つは、労働関係構築の仕組みの中で徐々に法治の規則が組み入れていることである。2012年の末現在、全国の労働協約の締結率は80%以上となっている。
 二つ目は、労働関係の運営メカニズムが徐々に整備されていることである。労働組合が労働者の代表としている全国労働協約の締結件数は224万5000部で、404万組合となる。労働者1億1000万人をカバーして、各レベルの労働組合が三者構成の協議に参加した労働組合が2万4000組合ある。
 三つ目が、労働争議処理の仕組みが整備されていることである。全国で労働争議を処理する審議委員会が85万8000つくられ、この組織で労働者2億1000人をカバーしている。各業界、また企業の組織を調整する機関を2万5000つくり、労働争議を受理したのが2012年で13万件以上あり、解決したのが11万3000件。この数字は全体の82.7%を示している。
 以上のような成果が出たにもかかわらず、私たちは「第12次5ヵ年計画」【2011~2015年】の間に、国際金融危機の影響を受け、労働関係に影響を及ぼす要因が依然として存在している。特に、輸出企業、中小企業などへの就職が非常に悪くなっている。産業構造の転換、合併、分割などの変化が、労働者にとって社会保障や労働条件の維持などに非常に大きな問題をもたらしている。経済の成長率が緩やかになり、労働者の賃上げ幅も低くなっており、労働争議など集団的な事件が頻発し長期化する傾向にある。

第2 わが国の労働者の新しい変化と特徴

 数年来、わが国の労働者の構成とその分布には深刻な変化が生じ、「3つの主体」という特徴を見せている。その1点目は、労働者(特に企業雇用の労働者)が全体の労働者の中で主体的になったことである。全国の雇用労働者数は、2003年の2億2000万人から現在の3億5000万人に増加し、その中で企業労働者が全体の72.2%を占めている。
 2点目は、非国有企業(民間企業)の労働者が企業労働者全体の中で主体的に占めており、圧倒的に多いことである。その割合は58.6%で、国有企業の労働者を大幅に超えている。
 3点目は、出稼ぎ労働者が産業労働者の中で主体を占めていることである。現在、中国の出稼ぎ労働者、いわゆる農民工のグループは2億6000万人となった。中国語で農民工とは「居住地域の企業や都市部に出て就労する出稼ぎ農民」を意味するが、居住地域に留まる者を「本地農民工(地元出稼ぎ農民)」、居住地域を離れる者を「外出農民工(外地出稼ぎ農民)」とに区別しており、そのうち、居住地域を離れる外出農民工は1億6000万人となっている。特徴としては、新しい世代の若い人たち、また農民工が全体の労働者の4割以上を占めていること。
 また、若い世代は、教育水準も高く活発な考え方を持っており、自分の権利を守ろうとする意識も強い。さらに、労働組合に対する期待も高くなっている。つまり、これら若い世代の労働者の組織や指導、さらに彼らに対してサービスを提供し、彼らの権利を維持することは、今後長い間にわたり労働組合の重要な取り組みになると考えられる。

第3 中国労働組合が直面している新しい任務とその要求

 共産党の第18回大会が2012年に開かれた。その報告の中で、社会の調和は中国の特色ある社会主義の本質で、公平と正義は社会主義の自らの要件だと強調した。そして、民生の保障と改善は最も最重要課題に位置づけ、最大限にこの社会の調和を図る必要があるとした。目標としては、国民の生活の安定と向上、さらに社会秩序の安定、国の長期にわたる平和と発展である。
 共産党の習近平総書記は2013年4月28日、中華全国総工会(ACFTU)を訪問し、全国の模範労働者代表と懇談会を開いた。国(共産党)の最高指導者が自らACFTUを訪れ、全国の模範労働者の代表と対話の場を持ったことは初めてである。その席上、「労働者階級は中国の指導的階級である。よって皆さんはその役割を十分に発揮するように」と強調し、労働を尊重する姿勢が大事だと述べた。また、労働者の力を通じてチャイナドリームを実現しようと呼びかけた。
 労働組合の幹部に対しては、「時代の要求や社会の変化に応じて効果的な労働組合運動の展開方法を考えて欲しい。また労働組合は、労働者にとって家であり、労働組合の役員は最も信頼できる身内・家族のような存在になって欲しい」と強調した。
 現在、中国は改革の最も重要な時期に差しかかっており、さらなる発展をめざしている。同時に、さまざまな社会的な矛盾や衝突も起きている時期でもある。この中で、労働組合は労働者を代表し、彼らの意見、主張を伝え、合法的な権利を確保するよう、またその利益を守るよう訴える必要がある。
 まず、労働者を労働組合に組織化することである。労働者の力を高め、労働者と企業側が対等な立場で対話できる場をつくり、労働者の利益を主張できるような道筋を確保することが大事である。
 次に、労働者の権益を維持する必要がある。この中には、雇用の平等、労働に対する対価、報酬がきちんと支払われること、教育・訓練、休暇取得、安全確保、社会保障など、さまざまな分野の法的な権利が含まれる。
 3点目は、最大限に規範化され秩序のある公正かつ合理的で調和のとれた安定した社会主義、新しい種類の労働関係を構築、推進することである。
 企業側と労働者側が共に利益を共通とする共同体、発展をめざす共同体、運命を共にする共同体になるよう推進する必要がある。

第4、中国労働組合の今までの主な成果

1点目、積極的な政策立案への参加。

 中国の労働組合は、2006年から労働者権益と関連する20以上の法律法規の制定と改正に参画してきた。地方レベルでは、労働関係の法律法規の制定参画は1429件に上り、条例などの法規文書では4251件。さまざまなレベルで、労働者の権利を保障できる法律体系が形成されてきた。

2点目、労働組合の組織と賃金に関する団体交渉での新たな進展

 各レベルの労働組合は、2010年から総工会の推進する労働組合の組織と賃金の団体交渉を進める3年計画をつくり、各地の労働組合はこれに基づいて活動を展開した。昨年末までに266万の企業別労働組合、組合員数2億8000万人に達している。一方、賃金の団体交渉を実施した企業は、全国において308万1000社、カバーした労働組合員数は1億5000万人に上る。

3点目、労働関係調整の仕組みの構築

 現在までに、この労働関係を調整するための三者調整の仕組みが全国で2万5000ある。そして、県レベル以上の地方自治体では、政府と労働組合間で連絡会議制度、共同会議制度を立ち上げた。企業別労働組合の中で、労働争議調停委員会は85万8000あり、また労働関係の法律実施を監督する機関として、全国で75万7000ヵ所設置した。このような労働関係を確保するためのさまざまな組織がネットワークとして形成されつつある。

4点目、多くの国と友好協力関係を構築

 ACFTUは、「独立自主、相互尊重、小異を残し大同を求め、協力を深め、友好を深める」との方針に基づき、すでに150ヵ国以上、400以上の海外労働組合と友好的な協力関係を築いてきた。
 中国の労働組合は、毎年「経済のグローバル化と労働組合」という国際フォーラムを開催し、開発途上国の労働組合のための土台を構築してきた。ACFTUは国際労働運動に積極的に参画し、国際労働組合およびその活動を支持し、グローバル経済の管理に参画し、国際労働運動の健全な発展に貢献している。
 中国の労働組合は、「第12次5ヵ年計画」期間中に、ますます国際労働運動に積極的に参加し、ILOおよび理事会の活動を支持し、全世界の経済の会議に参加する予定である。世界各国との友好関係、互いに理解を深め、労働者権益擁護において、お互いに経験を交流し、長所を学び合い、お互いに促進する。
 国際労働運動が、またその関係が、ますます相互尊重、友好協力、民主的調和のとれた方向に発展するよう推し進め、労働者の利益の擁護の実現と発展のために、私たちは努力していきたいと思う。