2010年 中国の労働事情

2010年6月18日 講演録

中華全国総工会(ACFTU)
グオ・ジュン(Mr. Guo Jun)

民主管理部部長

 

 この2年間、国際的な金融危機による影響が拡散蔓延して、世界経済は衰退し国際貿易が大幅に縮小している。中国もまた大変な衝撃を受け、輸出は大幅に縮小して失業者が大量に増加し、経済成長に大きな影響を与えている。
 この厳しい状況に対し中国政府は、一連の重大政策を制定・実施し、国民生活の維持が経済成長の持続と同等に重要であると位置づけた。経済発展の促進と就業の増加・促進を密接に結合させて取り組み、多くの就業機会を創出した。同時に就業に関する一連の公共サービスを展開し就業を安定させている。
 2009年末までに中国は、国内総生産の8.7%成長を実現し、非農業人口が前年比で910万人増加した。非農業地域における失業率を4.3%以下に抑え、世界でいち早く経済回復を実現し、改革開放と社会主義の現代化において大きな成果を獲得した。
 今年中国は、経済発展の方式転換の加速、国民生活の改善と保障に力を入れている。経済の安定的かつ急速な発展を維持し、「ゆとりのある社会(小康社会)」の建設を全面的に加速し、国内総生産8%前後の成長目標の実現に向けて努力している。
 中華全国総工会は、世界で最も組合員の多い全国的な労働組合である。中国政府は国家経済と政治生活における総工会の地位と役割を一貫して重視し、労働者の法的権益を保護する職責を十分に遂行できるよう支持している。
 この2年間、総工会は「労働者第一主義」を堅持し、政府の金融危機対応策を積極的に支持している。労働者の法的権益を適切に保護し、労働関係の調和に力を入れ、経済と就業の安定にとって欠かせない役割を果たしている。
 今日の中国の労使関係は次のような特徴がある。その1つとして、アメリカ企業のウォルマートで組合を組織したことが挙げられる。ウォルマートはアメリカでも韓国でも組合が組織されていない。中国では2001年に労働組合法の改正が行われ、労働者が組合を結成する場合、企業はそれを拒否できないよう規定した法律ができた。多国籍企業で大企業のウォルマートで組合を組織したことは非常に大きな出来事であった。
2つ目は、組合の努力によって労働契約法ができたことである。組合はこの法律の立案に参与し、95%の意見が反映された。労働契約法が厳しく執行されると労働者の労働条件が大きく向上すると予想される。労働契約法は、その他の法律と一緒に効果を発揮することによって、労使関係の対立やそれに関わる問題を解決し、公正、公平で調和の取れた労使関係の構築を目指している。
 最近中国ではホンダの自動車工場や、重慶のビール工場などでストライキが発生しており、総工会が現在抱えている課題の1つとなっている。中国では、ストライキは法律違反であるともいえるし、同時に法律に違反していないともいえる。なぜなら、労働組合法はストライキについて触れていないからである。争議はなるべく和解を通して平和的な方法で解決したいと考えている。中国の法律では、万が一ストライキが起きたときには、総工会が介入して問題を調整・解決し、企業が早く生産を回復できるようサポートすることとなっている。総工会はまた労働組合員の権益も守らなければならない。現在の中国社会は、非常に複雑な労使関係に直面しており、ホンダのストライキもその1つと考えている。労働者の権利を擁護し、調和の取れた労使関係を推し進めていくことがますます重要となっている。

総工会が展開する主な活動について

1)労働者の資質を高め、持続可能な発展を強力に促進

 この2年、中華全国総工会は「労働の尊重、知識の尊重、人材の尊重、創造の尊重」を堅く守り、中国のプロレタリアートの偉大な品格を高め、労働者の能動性、積極性、創造性を存分に保護、動員、発揮し、経済発展の方式転換の加速のために貢献してきた。また国際金融危機への対応として、政府の「同じ立場の者同士が助け合い、ともに時局の困難に打ち勝つ(同舟共済、共克時)」の呼びかけに積極的に応じ、「助け合って成長を堅持し、功を立てて業績を残す」という労働コンペティションの活動を展開した。この活動には全国から8割近くの企業と労働者が参加し、労働者と企業は運命を共にする主人公であるという意識を沸き立たせた。
  今年総工会は、労働者を団結させて動員し、業績を競う様々なスタイルの活動を積極的に展開している。「総工会は指導的役割を果たし、第11次5カ年計画を成功させ、小康への調和を取る」というテーマでコンペティションを推進している。産業労組と企業労組の優位性の発揮を重視し、労働コンペティションによって経済・社会発展に対するより大きな促進作用を果たそうとしている。
 また労働者の技術イノベーション活動と「私は省エネと二酸化炭素削減で貢献する」活動を展開し、重点分野と重点プロジェクトの省エネ・二酸化炭素削減を最優先して実行する。企業、とくに中小企業の発展については、技術革新、技術交流、発明と創造、技術サポートなどの活動を積極的に展開する。
 中華全国総工会は、労働者全体の資質向上に力を入れる。総工会は「大学」と同じ機能をさらに強化し、健全な総工会教育研修制度を確立する。さまざまな教育訓練リソースを積極的に活用し、労働者の技術教育に関する世界の先進的な経験と方法を参考にして訓練の実効性を高めていく。経済発展に適した知識型、技術型、革新型労働者の養成に尽力する。

2)労働者の法的権益を確実に保護し、調和型労使関係の発展に貢献

 この2年、中華全国総工会は中国の各種企業における職場、賃金の保護を主な内容とする「共同約定行動」の展開を積極的に提起し、企業の発展のために力を尽くしてきた。同時に企業に対し社会的責任の履行を促し、人員削減、賃金削減をできる限り行わせず、最小限にとどめさせるよう努力した。これは全国63万の企業、8,400万の労働者に関わる活動で、多方面でポジティブな効果を獲得している。
 さらに、就業サービスと技能育成を重点として、1,390万の農民工の育成訓練、就業支援、企業指導、権利保護、生活援助を展開した。そのうち、新たに農民工276万人の就業支援を実現し、360万人に育成訓練を実施した。
 今年、全国の非農地地区で新たに就業を希望とする人は2,400万人を超えており、中国政府は433億元を就業促進に投入する。総工会も政府、企業と協力して、就業関連政策の実施を積極的に推し進め、教育訓練に対する支出の増額や教育訓練の実施を通じて技術・技能水準を高め、企業を助け労働者の就業力を不断に強化する。
 また中華全国総工会は、集団交渉・申し入れ行動を広範に展開し、中小企業を業界賃金の集団協議の重点としている。賃金に関する業界、地域の集団協議を推進し、当局と連携して未払い賃金問題の予防と解決にあたっている。2009年9月末までに集団契約の調印は124.7万件、企業数211.2万社、労働者数16,196.4万人に及んでいる。
 私たちは今年労使関係の調和の取れた企業の創設に力を入れ、「共同約定行動」をさらに進める。企業管理における労働者代表大会と業務公開の効果を十分に発揮させ、労働者の情報を知る権利、参与権、発言権、監督権を確実に履行する。2009年9月末までに、全国の総工会で業務公開制度を実行している企業は175.2万社、所属労働者数は12,751.2万人、労働者代表大会制度を実行している企業は183.9万社、所属労働者数は13,338.7万人に及んでいる。
 中華全国総工会は、「社会保険法」、「工会法」、「企業工資条例」、「工傷保険条例」、「女職工労働保険規定」等、法規の制定改正に積極的に参加し、労働者の法的権益保護のために法律と政策の保障を提供している。また「労働合同法」、「就業促進法」、「労働争議調解仲裁法」等の法律施行に対する監督検査を強化し、企業の経営を監督し、就業場所の安定、労使関係調和の促進、労働者の法的権益の保護において重要な役割を果たしている。

3)社会保障と国民生活改善政策の実行推進

 中華全国総工会は社会保障に関する各種法律・政策の制定に積極的に参加し、人々が享有する社会保障の実現のために努力している。労働者保護の基本任務を重視、強化して、「安康杯」コンペティション、「安全生産月間」等の活動を手始めに、安全生産と女性労働者の保護に対する監督を強化する。また困窮労働者に対する支援にも力を入れる。具体的には、「思いやり(送温暖)」活動等の展開を通じて、困窮労働者の生活の実際問題の解決に当たる。各級の総工会から33.2億元の資金を集め、困窮労働者600万世帯を慰問した。同時に失業者および生活困窮者の基本生活に対する政府保障に協力した。

4)総工会建設のための組織力の強化

 中華全国総工会は、総工会の結成と各レベルの総工会の活動を推進し、単組連合会と職業化工会結成と単組指導における機能を十分に発揮させる。2009年9月末現在、新たに加入した組合員数は1,417.3万人、うち農民工組合員は798.3万人、総工会組合員総数は2.26億人に達した。同時に、「成長の持続・発展の継続」労働コンペティションを広範に展開し、政府および産業主管当局、産業協会、産業工会による労働三方協議体制を構築し、産業労働者の権益保護と労働者団体の安定等に貢献した。
 総工会幹部の組織化にも力を入れ、全国省級工会および地方級工会の新任主席、県級工会主席、大型企業工会主席に対する研修や訓練を順次行い、各級の新任主席に対する育成力を強化した。さらに総工会経費の収支管理と資産価値増大を促進し、総工会活動の物質的土台を固めた
 課題として、若干の問題や不足点がある。たとえば、単組の活動力の増強が必要であり、労働者全体の法的権力の保護にもさらなる強化が求められる。また総工会幹部の資質についても一層のレベルアップが必要となっている。
 国際経済貿易の活発化、貿易摩擦の増加、貿易保護主義の台頭という新たな状況にいかに積極介入し、わが国労働者の声を反映させるかという問題についてさらに真摯な研究が必要である。また海外に派遣されている労働者の総工会結成、法的権益の保護等の問題についても研究の強化が必要である。
 中華全国総工会は、「自主独立、相互尊重、小異大同、協力強化、友好促進」の方針を念頭に、各国労働組合との友好関係を発展させ、総工会青年幹部の交流を一層深め、各国の労働者の権益保護と国際労働運動の協調的発展のため、より一層尽力する所存である。