1999年 中国の労働事情

1999年12月13日 講演録

夏暁梅
中華全国総工会国際連絡部部長

 

 尊敬する国際労働財団の清水先生、尊敬する友人の皆様、本日、我々はここで中国の経済情勢と労働組合の活動について紹介する場を提供していただき、ほんとうにありがとうございます。
 本日は、中国の経済情勢と中国労働組合の活動について、私から紹介させていただきたいと思います。

最近の中国の情勢

 中国人民に対して、今年、1999年は決して平凡な年ではありません。今年の10月、我々は中国建国50周年を迎えました。新中国は、成立50年来、特に改革開放政策をとってからの20年は経済的に世界の注目を浴びる輝かしい成果を取り上げてまいりました。ご承知のように、1949年、中国人民が貧困でおくれている反封建、反植民地の国を土台として、新しい中国をつくり上げました。当時、中国のGDPは358億元で1人当たりのGDPは66元しかありませんでした。1978年には、全国のGDPは3,624億元、1人当たりのGDPは、379元に達しました。改革開放後20年が経ちましたが、その間のGDPの成長率は年平均9.7%、1998年の末でのGDPは7万9,396億元、1人当たりのGDPは6,392元です。
 現在、我が国の総合的な国力と社会生産力は大幅に高まってきています。中国の経済総量は世界の7番目に位置づけ、外貨準備高は1,500億ドル余りで、全国労働者、職員の年間所得額は7,479元に達しました。1998年には、我が国の貧困人口は4,000万しかありません。我々は、2000年の末までに貧困人口を一掃する目標を打ち出しています。
 1997年、アジア金融危機が我が国に悪い影響を及ぼし、昨年また大洪水に見舞われたにもかかわらず、政府が積極的な施策をとったことによって、幾多の困難を克服し、国の経済が依然として持続、安定的な発展しつつ、人民元を切り下げないことを保ってきました。1998年、中国の経済成長率は7.8%であり、1999年上半期GDPの成長率は7.6%、工業総生産は9.4%増、輸出入総額は1,580億ドル、4.4%増えました。農業の面においてもよい収穫をおさめ、人民の生活レベルが持続的に上昇しつつあります。全国都市部の市民の可処分収入額は2,900元、農民の現金収入額は998元、4.7%増えました。
 以上のデータを見て、今年の7%という目標成長率は実現できると確信しております。中国経済の持続的、安定的な発展は、小平鄧の「中国の特色をもった社会主義」理論によるものほかありません。中国の経済体制改革と対外開放は、終始この理論、指導のもとに進められてきました。この理論こそが、我々に中国の国情に適応する新しい発展ルートを切り開き、改革、発展、安定の矛盾を解決する方法へと導き、政策的に社会主義初期段階における中国の基本的な経済制度を策定させました。
 1997年に開かれた中国共産党第15回全国代表大会で、明確にこの理論を打ち出しました。つまり、社会主義公有制を主体として、多種の私有制、経済が共同的に発展するという基本的な経済制度を堅持し、整備するということであります。
 今年の3月に開かれた第9期全国人民代表大会(全人代)により、この基本的な経済制度は、憲法に記載されました。同時に、憲法の中に、個人経済と私営経済は社会主義経済の補完であるという表現は、法律の範囲内の個人経済、私営経済などの非公有制経済は社会主義市場経済の重要な構成部分であると改正されました。これは、この基本経済制度が国の意思として長期的に尊重されることを反映したものと思います。
 中国の社会主義性質は、中国の公有制を主体とすることを決めました。つまり、中国は、決して私有化の道を歩むことはありません。経済のグローバル化及びアジア金融危機にもたらされた影響に直面し、我々はさらに国有企業の改革と発展を重要視します。
 国有企業は、国民経済の柱であります。現在にしても、将来にしても、国有経済の中には、引き続き主導的な役割を果たすに違いありません。
 今年10月、中国共産党第15期中央委員会第4回大会が、国有企業の改革と発展の若干の重要な問題に関して、中国共産党中央委員会の方針を打ち出しました。決定の要点は、公有制の多種多様の実現形式を探究し、戦略的に国有経済のレイアウトの調整を求め、国営企業においてイノベーションのテンポを早めさせ、人員を減らし、効率を高め、再就職、社会保障などの方面に力を入れ、できるだけ早く企業の中で市場経済のニズに適応する新たな管理メカニズムを樹立させるということです。国有経済の全体は、増えつつ、質を高め、コントロールの力を強め、国民経済全体に占める割合は減小するものの、国の社会主義性質を動揺することはありません。基本経済制度の実行に従い、外国投資企業、私営企業及び個人企業など、非公有制経済がもっと速いテンポで発展する見通しであります。
 今年の11月15日、中米両国の間で、中国のWTO加盟についてコンセンサスが得られたことにより、中国とWTOとの距離がさらに近くなりました。WTO加盟が実現すれば、中国の改革開放は、全体の投資関係がさらに改善されるため、よりよく発展のチャンスをもらい、全体の投資環境もさらに改善し、金融、保険、対外貿易、商業小売及び仲介などのサービス業は対外開放をより一層拡大し、資金導入施策を調整し、外商投資企業についての法律システムを健全化し、中国内での外資系企業がもっと大きく発展するに違いありません。1978年、改革開放が始まりました。我が国の工業総生産は4,237億元であります。すべての公有制企業によってつくり出されたものでした。80年代に入ってから、我が国の私営経済と自営業経済が徐々に発展し、特に90年代に入ってから、発展が一段と早まりました。1998年の末まで、私営経済の従業員数は600万人、自営業経済のそれは160万人に達し、それらは商業売上総額の40%を占めました。既に国有企業とグループ企業を超え、重要な位置を占めています。
 非公有制企業の発展は、雇用の拡大、総合国力の増強、人民の多様な生活、需要を満足するうえで重要な役割を果たし、既に、我が国の社会主義市場経済の重要な構成部分となりました。
 中国の経済が発展しながら新しい問題にぶつかっていることも、我々は冷静に見て受け止めています。これは、アジア経済危機の影響がまだ完全に解消されず、経済と産業の構造調整の任務も差し迫り、消費不振の現象があらわれ、対外輸出が大きなプレッシャーに直面し、国有企業の余剰人員を善処させる任務がとても重く、沿岸部と内陸部の経済発展の格差が大きいことなどです。
 したがって、我が国の改革と開放は決して容易なものではありません。我が国は、さらに改革を掘り下げ、開放を広げ、改革、発展、安定という3者の関係をうまく取り扱い、次の世紀の半ばまで1人当たりのGDPが、世界のレベルに達するという第3段階の戦略目標実現に努めています。中国人民は、これに対して自信に満ちています。

中華全国総工会の主な活動

 次は、当面、中華全国総工会(以下「総工会)の主な活動について、皆さんに簡単に」ご紹介させていただきます。
 改革開放以来、社会主義市場経済を確立する過程で、我が国の経済関係、労働関係に深刻な変化が起こりました。雇用、分配、保障を中心とする労働問題が日増しに急増し、法律に依拠し、従業員の合法的な権益を擁護する労働組合の任務が、さらに複雑、かつ重要となりました。
 昨年、総工会が第13回代表大会を開き、尉健行氏を主席とする新しい指導グループが選出されました。この大会で、今後5年間にわたる総工会の世紀を渡る戦略的目標と活動任務を定めました。
 今年の10月、総工会の主席団会議で、労組の擁護機能を履行し、さらに優先させるという活動、指導思想を再び強めました。すなわち、労組が全国人民の総体的利益を擁護するとともに、社会主義市場経済のもとでの労働関係における新しい変化に応じて、よりよく従業員の具体的な利益を代表し、擁護するということです。従業員の経済利益を擁護すると同時に、彼らの民主的権利を保障し、2つの擁護の統一を堅持します。働く人すべての積極性、創造性を保護し、改革、発展、安定を保って、さらなる役割を果たします。

活動方針

 このような活動指導思想を踏まえて、総工会は以下の重要な活動方針を提出しました。
 1番目は、政府と協力し、国有企業の下崗労働者の再就職活動に努めることです。国有企業の改革は、我が国の経済改革のキーポイントであります。下崗再就職の問題は、国有企業改革の難しい問題で、従業員たちが関心を寄せるホットポイントでもあります。したがって、総工会は、この問題を活動のポイントに位置づけ、現在、主に3つの活動に取り組んでいます。
 1つ目は、企業を監督し、労働者、職員の下崗の手続を規範化し、企業の再就職サービスセンターの運営に協力し、政府と企業を監督し、あらゆる手を尽くして、下崗労働者の基本的生活を保障すること。
 2つ目は、下崗労働者の再就職を推進し、主導の就業メカニズムを形成するために、政府と協力し、社会保障システムを整備する「3つの保障ライン」の実施を推進します。つまり、再就職サービスセンターに入る下崗労働者に基本生活費を全額支給する、失業保険金を全額支給する、都市住民の最低生活保障制度を確立・整備することです。
 3つ目は、総工会自身のパワーと施設を十分に利用し、従業員の保障システムの確立を急ぐことです。総工会の訓練機構を設立し、従業員の共済、補充、保険、住宅合作社、従業員消費合作社、労働者就職サービス生産基地と貧困解決公益市場など、一般に運営しています。現在、総工会の訓練機構は既に1,300余り、訓練人数が延べ218万人に達し、そのうち100万人が再就職を実現しました。
 1998年に、我が国の下崗労働者の再就職活動が大きな成果を上げられました。登記によりますと1998年全国の下崗労働者数は892万人、昨年よりは358万人減らし、22.5%を下回りました。そのうち、603万人が企業の再就職サービスセンターに入り、うち80%の人が基本生活保障と再就職の協議を結び、50%の人が再就職を実現しました。
 しかしながら中国は人口の多い国であり、労働力の需給矛盾が短期間に緩和できなく、下崗労働者の再就職と構造的失業は、我々にとって依然として厳しい課題であります。
 2番目の問題についてですが、全面的に平等協議と団体交渉制度を推進し、労働関係をうまく調整することです。我が国の国有経済のレイアウトと国有企業の戦略的な調整と再編につれて、企業管理制度の改善と非公有制経済が迅速的に発展し、とりわけ、中国はWTOに加盟した後、調整と発展のパワーがさらに強まり、労働関係の変化がもっと際立って、労働関係を調整し、安定的かつ協調的な労働関係を確立するという総工会の任務が一層重くなります。
 中国には「牛を引っ張るとき必ず牛の鼻を引っ張る」ということわざがありますが、総工会が平等協議と団体交渉制度が労働関係を調整するときの牛の鼻である、必ずそのポイントをつかまなければならないと考えております。総工会は、すべての企業でこの制度を普及することを決めました。
 当面、外資系企業、私営企業など非公有制企業、経営メカニズムの転換を進めている企業と中企業に重点をおきます。3年間から4年間にかけて、平等協議、団体交渉制度を樹立します。また、小企業が集まるところで、大いに、地域あるいは業種ごとの労働協約の締結を推進していきます。
 1999年6月現在、中国の31.9万社の企業が、平等協議、団体交渉制度を打ち立て、7,000万人の従業員がその中に入りました。その中には、外資系企業が2.9万社、386万の従業員に及び、私営企業が4.6万社、157万人に及びました。
 平等協議、団体交渉制度の推進は、総工会にとっては新しい課題であります。経験も乏しいので、絶えずに経験をまとめ、レベルを高めます。ほかには、日本を含む外国の労組から、中国の国情に適応する経験とやり方を、もし教えていただければありがたいと思います。
 3つ目の主な仕事といいますと、新しくつくった経済組織と経営メカニズムを転換する企業の労働組合の結成活動を速め、従業員を最大限に引きつけるということです。
 1999年6月まで、5.9万社の外資系企業で労働組合を結成し、開業した企業の75%を占め、加盟労働組合員が550万人になりました。6.4万社の私営企業で労働組合を結成し、労働組合員が174万人になりました。80.3万社の郷鎭企業で、労働組合員が517万人であります。
 今年、総工会は、3年、4年かけて、大多数の新しい経済組織の労働組合を組織化する目標を打ち出しました。同時に、小企業が比較的に集中するところで、外資系企業、私営企業及び小企業労働組合連合会の結成を推進しています。
 そして、改革開放の新たな要請に応じ、開発区、工業区で労働組合組織の建設を強め、勝手に労働組合を撤廃する現象を断固として抑制します。
 国有企業の改革に対して、中国労組は、従業員代表が国有持ち株会社と国有独資会社の取締会と監事会に参加する制度を推し進めています。
 このほかには、総工会は、従業員代表大会を堅持し、整備し、社内事務公開を実行し、自身の改革を強める活動を推し進めています。詳細につきましては、時間の関係で、ここで省略させていただきます。

国際活動について

 ご存知のとおり、近年、世界の多極化と経済のグローバリゼーションの推進が快速に発展し続けています。総体的に見ると、国際情勢が緩和に向かっています。平和と発展は、依然として時代の主題であります。しかしながら、覇権主義と強権政治が依然として存在し、しかも、発展しているのも事実であります。グローバル化のプロセスを早め、科学技術の発展も日進月歩であります。経済のグローバル化は、世界の経済発展の必然的な結果であります。
 これは、2つの面があります。一方は世界各国の経済発展を確かに促進する役割を果たしました。もう一方は各国の経済と社会の側面に厳しいインパクトをもたらしました。
 このような調整のもとで、総工会は、引き続き、独立自主、幅広く連携する活動方針を主張し、独立、平等、相互尊重、お互いに内部事務を干渉しない原則を踏まえて、イデオロギーの相違と国際労働組織の枠を乗り越えて、外国の労組と関係を樹立し、発展させます。
 平和、発展、労働者の権益は、相変わらず当面、全世界の労働者と労組が抱えている主な課題であります。国際労働運動が徹底的に冷戦の意識を捨てて、お互いに接触対話し、交流と協力を強化すべきであります。総工会は、国際的に、労働運動の新しい秩序の樹立を推進し、よりよく労働者の合法的な権益を擁護することを主張しています。
 中日両国は一衣帯水の隣国であり、両国は、21世紀に向かう友好協力のパートナーシップの構築に取り組んでいます。中日両国の労働組合の友好関係もスムーズに進んでいます。両者は、アジアと国際労働運動の中に重要な影響力を持っている労働組合組織であります。グローバリゼーションのもとで、中日両国が交流と協力を強めることは重要な意義を持っています。これは、中日両国人民と労働者の根本的利益に合致しています。アジアと世界の安定と発展にプラスとなります。相互尊重、平等互恵を踏まえて、中日両国の労働者と労働組合組織の間の友好協力関係を推進し、引き続き、友好のために自分なりの努力を尽くしましょう。