2000年 ウズベキスタンの労働事情

2000年2月8日 講演録

イリヤル・カミリエヴィチ・ヤクボフ
ウズベキスタン労働組合連合(TUFU)副会長

 

国内の状況

 ウズベキスタンが現在どのような道を歩んでいるかに関しては、日本の50 年代、60 年代のことを思い出してもらえればいいと思います。改革中において重要な役割を果たしているのは、とりあえず国家、政府です。おそらくこの思想はかつてのアメリカ大統領ルーズベルトの思想、または日本の思想に近いのではないかと思います。つまり、ウズベキスタンが目指しているのは、民主主義的な国家を構築することですが、その際にいい意味での集団主義、団結をしていくという精神を決して失ってはいけないと考えています。ですから、ウズベキスタンにとって、西側的な個人主義にのっとった民主主義は合わないといえます。大統領が市場経済移行にあたって国民に訴えたことは、新しい家を構築するまでは決して古い家を壊してはならないということです。つまり、すべてを否定してから新しいものをつくるというのではなく、段階的に少しずつ改革をしていくということです。
 「強い資本主義者、弱い社会主義者」というスローガンがありましたが、強い者は弱い者を守るべきで、現在弱い立場にいる者は、年金生活者、子供、また低所得者です。労働組合が新しい経済体制の中で行動するようになったときには、非常に幼稚な民主主義に対するあこがれがあり、その雰囲気の中で、各単位組織がそれぞれに独立していく夢を掲げてしまい、ばらばらな方向に向かう傾向にありましたがそれは抑えることができました。この新しい市場経済に移行するにあたって、新しい体制に移行するには、やはり2つの避けがたい現象があらわれることをあらかじめ承知していました。それは、一方では建設であり、他方では破壊です。ただ、私たちが目指したのは破壊のテンポよりも建設のテンポが、積極的にどんどん伸びるようにということでした。

労働組合の現状

 現在、ウズベキスタンの労働組合は団結していると思います。産別組織に関しては整備がなされ、25 から15になりました。昨年統一されたのは、機械製造部門の産別組織と、軽工業、家具製造関係、地質関係、エネルギー関係、石炭、石油化学工業です。
 産別組織の整備とあわせて地方組織の整備も進められ、中間層の地方組織が廃止されていきました。特に地区組織、地区委員会が廃止され、機能に応じた、適した組織をつくるための整備がすすめられました。特に地方にもいろんなレベルがあるが、中間的な地方組織に関して廃止されていったのは、それに対応する交渉相手がそのレベルにはいないので、意味がないからです。そして、具体的に単位組織から始まって、トップのナショナルセンターまですべての段階においての組織の具体的な機能、役割が明確にされました。
 最高の会議である大会は、5年に1回開催されています。そして大会に次ぐ評議会が大会と大会の間に開催されます。この評議会には2つ原則があり、第1は、代表者による機関であるということ、第2はこの代表者は大会で選ばれるということです。各産別組織からはこの評議会に2名代表を出しています。
 ですから、ここで決定されたことは、すべての組織に効力を持ち、義務が発生します。労働組合は社会的パートナーシップという主義を守っていますが、その主義によると、単位組織の役割というものは以前より減ってきています。
 労働協議は、各企業レベルで、要するに株式会社になったところが行います。

労働法について

 労働組合および労働活動に関する基本的な法律も、最低賃金法を除き整備されてきており、労働組合法や雇用法が他国のように採択されています。
 最低賃金法に関しては現在、労働組合としても採択すべく努力していますが、政府は今必要なものではないと考えています。現状を言うと、ウズベキスタンの統計上の最低賃金は、おそらく半分ぐらいの国民が飢え死にするというようなレベルです。ところがその一方でダイエットという問題も生じています。どうしてこのような矛盾が生じているのかよくわかりませんが、統計的には最低賃金が非常に恐ろしいレベルであるにもかかわらず、町中では盛大に結婚式や宴会が開催されていて、町中を歩いている人を見れば、非常に満足そうに歩いていて、どこからお金を取ってきているのかわからない、おそらくきちんと申告がなされていないのではないかという気もします。それで政府は、所得の申告制度をきちんと整備し、それと並行して最低賃金の制度、法律に関しても整備しなければいけないという意見を持っています。

労働組合の現状

 現在、労働市場では、徐々に失業者が増えてきています。労働組合としては、その失業を減らすためにも雇用を積極的に増やし、解雇されないようにする行動をとっています。
 ウズベキスタンの国民性からいっても、たとえ給料が少なかったり、もらえなかったりしても、働く場があるということが非常に重要です。
 また一方で非常に問題になっているのが外資の入った企業にどう労働組合をつくっていくかということです。労働組合側では、日本の経験に学んで、単に労使間で交渉を行うシステムだけではなく、労働協議制も導入しようと考えていますが、一例としてアメリカのたばこ関係の大企業から、このことに関し賛成が得られました。
 労働組合員は、合弁企業であれ何であれ、そこで雇用されている人がなるわけで、外資系の合弁企業では、純粋に雇用労働者が労働組合員になりますが、そのほかの、もともとあった国営企業や、民営化によって株式会社にはなった地元の組織企業では、雇用者側がもともとソ連邦の時代に労働組合員であったので、そのまま組合員として残っているというケースが多くあります。使用者側は、移行期のためまだ労働組合に残っていても、最終的には出なければいけないことは当然理解しています。
 現在、このような地元のもともとの企業において、使用者側が労働者と一緒に組合に入っているのは、ある意味、現代の国の状況に合ったものだと言えます。というのは、まずパイがあって、それを分配するために労使が対立をするわけですが、そのもともとのパイをつくり、また増やさなければいけないというのが今の国の現状なので、とりあえずパイをつくるためにまず労使が協力をしなければならない状況だからです。
 現在労働組合は、市場経済の中にあって様々な問題を抱えていますが、その1つに労働者および家族、子供等の健康維持つまり保健の分野があります。これに関しては以前のソ連邦時代のよいシステムがあったので、労働組合としてもそれを残していこうと考えています。
 それから、民営化が積極的に行われていますが、その際に私たちが主張しているのは、株を公開する際に、26%の株を内部の従業員に割り振る、そして25%を外資等に回す、それからあと30%は国が買い、そしてその残りは公開をしていく方法です。つまりばらばらに売ってしまうのではなく、株はやはりきちんと集団で維持すべきだと考えています。そして民営化の際に、もともとソ連の体制中、各企業に健康維持のため必ずあった保養所等を売らないよう主張しています。
 ところが、今現在、いろいろな意味で民主主義化と発展にブレーキをかけるような動きがあり、大統領が今後の新しい改革の方針として6つの戦略を発表しました。
 この6つの新しい改革の方向性を簡単に述べます。
(1)政治的な分野または経済的な分野における自由化つまり社会活動の中での新しい国、社会を構築するための自由な施策。
(2)精神の復活。つまり国民1人1人が社会の中において価値のある存在であると自信が持てるようにするということ。
(3)人材育成。これがおそらく一番大事なことであり、さまざまなレベルにおいて、なされまた金銭も主にここに使われる
(4)経済構造の改革。
(5)国民の安全を守ること。
(6)結果として、国民の福祉を向上すること。
 以上の観点から、労働組合としても組織内の財政の使い方を新たにする新しい財政政策を提案しています。労働組合員から集める組合費の15%がナショナルセンターに入りますが、その予算の大部分を私たちが労働組合アカデミーと呼んでいる人材育成機関に回していく方針です。
 それとあわせて研究活動にも予算を回し、労働組合の活動をアピールするためにテレビ、ラジオの番組を所有しています。現在、単位組合に残る組合費は54%ですが今後は、減らしていく方向性です。特に教育の部門に関しては単位組織には組合費を一切残さず、産別組織またその上に回し、現在、7つ批准しているILO条約を、紙の上で終わらせるのではなく、現実生活の中に反映されるよう努力しています。