2012年 ウクライナの労働事情

2012年12月14日 講演録

ウクライナ自由労働連合総連盟KVPU
Mr.ペテロ・ペトロヴィッチ・トゥレイ

 

1.労働情勢(全般)

 ウクライナの労働情勢について労働組合は、以下のような不満を持っている。
 一つ目は、若者と50歳以上の世代の高い失業率で、ウクライナ4600万人の総人口の内170万人が失業者として登録されている。
 二つ目は、申告がされていない無届けの就労である。このような場合には賃金は封筒に入れて支払われる。つまり経営者が課税を免れるために非公式に人を雇い、封筒に入れて賃金を渡している。このため国が損失を被るだけではなく、労働者も損失を受けている。きちんと所得を申告し、税金を払っていないために年金がきちんともらえないからである。税金逃れのための悪習である「封筒に入れた賃金」を利用している労働者は470万人いると言われている。
 三つ目は、大規模な労働力の国外流失である。すでに700万人が西ヨーロッパへ求職(出稼ぎ)のため流出している。出稼ぎ労働者が多い理由は、ウクラナイ国内では低い賃金しかもらえないからである。特に問題なのは、高等教育を受けた人たちの出稼ぎ、頭脳流出である。
 四つ目は、労働現場での労働者の高い負傷・死亡率である。

2.労働組合が現在直面している課題

 労働組合が直面している第一の問題は公務員への未払い賃金であり、毎年約10億グリベニに達する。
 第二の問題は、経営者による労働環境と安全衛生の分野での規則違反である。
 第三の問題は、労働組合の活動を理由に、労組の活動家が解雇されていることである。
 第四の問題は、経営者の権利を拡大し、労働者の権利を削減しているウクライナ労働法案が、国会審議の第一段階を通過したことである。

3.課題解決に向けた取り組み

 賃金の未払い、経営者による規則違反、労働組合活動家の解雇、新労働法案に対し労働組合は、次のような取り組みを行なっている。
 第一は、単組レベルや地域レベルで労働組合として経営者との交渉を行なっている。
 第二に、裁判システムを介して問題解決を図っている。
 第三として、国会(ウクライナ議会)を経由しての法律改正を図っている。
 第四として、ILOに対し労働違反を管理するために支援を要請している。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 ウクライナ自由労働連合総連盟(KVPU)と政府との関係だが、今までKVPUは社会経済評議会の三者委員会に含まれていなかった。しかし、2012年からKVPUはこの社会経済三者委員会のメンバーとなった。
 この三者委員会で経営者組織と政府と労働組合、各ナショナルセンターとで基本合意書を結ぶ。その基本合意書の署名の参加者としてKVPUには2人が割り当てられている。そしてKVPUの地方組織や産別組織の指導者が、該当する産業の協議会に入っている。

5.多国籍企業の進出状況と労使紛争

 多国籍企業と労働組合との間には、多くの問題がある。まず多国籍企業の経営側は労働組合そのものを認めようとしない。一部の多国籍企業では、労働組合が作られることを好ましく思っていない。
 また、労働組合がある多国籍企業でも、多くが労働協約を調印しようとしない。そのような多国籍企業は、労働組合の委員長以下の幹部を、労働組合活動を理由に解雇している。