2014年 モンゴルの労働事情

2014年9月5日 講演録

モンゴル労働組合連盟(CMTU)
エルデネバット スフバートル

副会長
ジャルガルサイハーン サーライ
ウランバートル市労働組合連合会長
ツェレンプレヴ バトデルゲル
自動車道路労働者組合会長
ナランツヤ ダムディン
モンゴル鉄道労働者組合会長
バヤール プレヴドルジ
科学アカデミー労働組合職場委員
オドゲレル ダヴァードルジ
航空管制システム労働組合職場委員兼交通・通信・石油労働組合連合執行委員

 

鉱山、建設中心に経済発展するも労働者の生活面で課題も多い

 モンゴルの国土は日本の4倍と広く、人口は290万人で総人口の3分の1が首都のウランバートルに集中しており、インフラ整備が重要課題になっている。労働者数は103万8000人で、登録されている失業者は8万7200人である。失業率は2013年現在で7.8%、近年、労働者の数が増加しているが、新しい職場がつくられていないため厳しくなってきている。
 労働契約を締結してモンゴルで働いている外国人の内訳は、中国人が32.1%、北朝鮮人は24%、ロシア人は7.6%、ベトナム人および韓国人が6.2%、アメリカ人は4%、その他19.9%になっている。現在、最も成長している産業は、建設業や鉱山の分野であり、そこでは外国人が多く就労している。外国人が鉱山や建築会社で多く働いているということは、モンゴルの労働者の中で、専門家、技術者が不足しているという事である。
 モンゴル企業の従業員数を見ると、従業員10人以下の零細企業が中小企業の90%を占めている。賃金は、従業員100人以上の企業では、平均月給が85万5700トゥグルク(約4万9631円)、従業員100人未満の企業では、66万600トゥグルク(約3万8315円)となっている。鉱山では、賃金がほかの産業よりも比較的高く、ドル換算では平均1,000ドル(約10万8750円)、あるいはそれ以上となっている。
 モンゴルは昔から牧畜業や農業が盛んな国であるが、この分野で働いている従業員の給料は非常に低い。その一方で、近年、教育、輸送などの分野では平均賃金が上がってきている。そのほかにもホテルや外食産業などでは賃金が上昇している。2013年現在、1世帯当たりの平均収入は89万3500トゥグルク(約5万1823円)となり、前年より14.4%増えた。世帯収入の増加の要因は、賃金収入が21.1%増加、その他の収入が51.0%増加したことによるものである。一般家庭の支出は、収入を若干上回る90万2500トゥグルク(約5万2345円)で、前年比22.0%増加したため、生活水準は厳しい状況となっている。
 モンゴルの最低賃金は、110ドル(約1万1900円)となっている。最低賃金は、最低生活水準によって決まっているが、地方ごとには異なって決められている。最低生活水準は。ウランバートルで14万9900トゥグルク(約8694円)(2013年4月~)、全国平均で13万9989トゥグルク(約8119円)(同)となっている。
 鉱山分野が飛躍的に発展するにつれて、政府に資金が入っているが、選挙のための公約として、一般の国民にばらまきをするような政治姿勢であったため、集まった資金が有効的、効率的に使われていない。また、最近では、原材料の価格が国際市場で下落していることもモンゴルの経済に悪影響を与えている。モンゴルの輸出先の大部分は中国で86.8%を占めているが、この一国に依存した輸出が問題である。また、輸出品目の内訳を見ると、40%は石炭で、ここ3年間、石炭の価格が2分の1に低下したことも問題である。一方で、輸入国でも中国がトップで28.7%、その次にロシアが24.6%で、日本は7%である。その他大きな国としては、アメリカが8.1%となっている。
 ここ5年間のモンゴルの経済成長率は平均15%という高成長を保ってきた。経済成長に伴い、人々の収入や消費も増えているもののインフレ率が著しく高くなり、現在のインフレ率は平均10%となっている。しかし、この2年間は、世界的な経済危機の影響もあり、経済成長のスピードが落ちてきている。また、成長鈍化の大きな要因としては、外国企業による投資の減少が挙げられる。
 これらの状況をふまえて、労働組合としては、モンゴルの経済政策の課題として以下のことを考えている。モンゴルの経済は発展しているが、鉱山と農業の分野に限られており、原材料をそのまま、加工せずに外国に輸出していることが一番大きな問題である。国際市場の原材料価格の下落に伴って、モンゴルの経済成長も鈍くなってきている。またロシアと中国の2つの大国に挟まれていることで、両国に輸入と輸出を依存していることが大きな弱点となっている。経済状況が悪化する中で、選挙公約で様々な経済政策を約束してきた与党などの政策が有効に機能しないために、社会全体が不安定になってきている。このように、国内の政治が不安定なために、海外からの投資がこの2年間に50%も減少している。海外からの投資の減少に伴って労働市場にも大きな影響が出てきている。非正規雇用が増えるとともに、大幅な人員削減を行う企業が出てきている。収入が増えているように見えるがインフレ率も高いので、実質収入は大きく減少している。
 今、モンゴルでは総人口の29%は貧困層と言われている。この29%という数字は、ここ5年間、10年間の平均であるがあまり変わっていない。社会格差、貧富の差が著しくなってきている。国の財政悪化に伴って、社会保険の政策も厳しい状況に陥っている。こうした状況から、若者の20%が外国で、出稼ぎ労働者として仕事をしている。
 最後に、モンゴル労働組合連盟(CMTU)について簡単に紹介すると、組合員数は21 万1000人で、14の産業別組織と22 の地方組織で構成されている。現在の我々の課題を三つ挙げると、一つは三者協議に基づいた効率的な連携を構築する事であり、二つ目には賃金の引き上げである、そして三つ目に労働安全に向けた取り組みである。

*1トゥグルク=0.058円(2014年10月29日現在)
*1ドル=108.14円(2014年10月29日現在)